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四章

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 別れの朝がやって来た。

 セドはギルバートさんと何か会話をしている。その横で私はナターシャには再び感謝を述べられていた。

「本当に、本当にありがとうございました姫君」

「全てはナターシャさんの努力の結果ですよ。貴女には才能がある。だからこれからも頑張って」

「はい!」

「姫君、私からももう一度感謝を」

 見送りに来てくれた奥様も、昨日の感動が抜けなかったのだろう。たくさん泣いたことが目の腫れからわかる。

「奥様、私としても貴重な経験をさせていただきましたから」

「ナターシャを変えてくれたのは姫君です。おかげさまで、私たちも大切な娘の本音を見れたのですから」

「……いえ、お力になれたのならば良かったです」

 暖かな空気が漂う中、私はナターシャに秘密を打ち明けた。

「ナターシャさん、言ってなかったことがあるんです」

「何ですか?」

「私にも当然、学校に入る前に教わっていた先生がいますが」

「はい」

「その方の名前がニナと言います。恐らく、ナターシャさんが舞踊を学ぶきっかけとなった人です」

「え!!」

「もしよろしければ、いつか王城へいらしてください。その際にタイミングがあえば、きっと会えるかと」

「は、はい!お母様、いいですか?」

「もちろん。そろそろお義父様とお義母様にも会おうと考えていましたからね」

「やった!」

 そうはしゃぐ姿は滅多に見たことが無かったのか、ギルバートさんまでも驚きながら喜んでいた。涙ぐんでいたことは見ていないとしよう。

「では、また会いましょう」

「はい」

「ありがとうございました」

「お世話になりました」

 私たちが別れの挨拶を済ませる後ろで、キナもキナで侍女達との別れを惜しんでいた。

 馬車が見えなくなる最後まで、ギルバートさん一家は見送ってくれた。

「とても……貴重な日々でした」

「楽しめたのならば何よりだ」

「……また来ましょう」

「そうだな」

 少し刺激の強い日もあった気がするが、それを含めてこの数日は幸せだった。

 セドへの宣言を果たすためにも、もっと距離を近づけていきたいと感じる。刺激にも慣れていきたい……できれば。

「警備上難しいかもしれませんが、またどこか違う場所も行きたいです。……二人で」

「あぁ、もちろんだフィナ」

 約束を交わして、帰路へと着いた。

 残り少ない夏休みは自主練習へと費やされながら終わりを迎えた。 




 交わした約束により、毎年どこか2人で出掛けることは恒例行事となった。ナターシャと出会ってから二年後の夏、状況が落ち着いたとラドとお父様が訪ねて来たのである。
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