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四章
閑話 父親の悩み
しおりを挟む王家の血を受け継ぐ父、シトラウル・フォルスの息子の一人ギルバート。現在は領地経営の代行をしているものの、それが代行でなくなる日は近いと父に言われている。
光栄な事に、この国の王でありながら叔父にあたるセルネスド様が領地を訪れることになった。番様との旅行が目的であるものの、父から私の面倒も頼まれているために気にかけてくれた。
今日は領地散策をしてみた感想や意見をいただいている。
長年、領地経営は父の隣で学んできたことがあり問題はないと感じている。それよりも一番悩みとなっている事があった。
「……これくらいだな。本当にほとんど言うことがないぞ。シトは心配していたが、今すぐにでも家督を譲れるんじゃないか」
「ありがとうございます」
「……それでだ」
「やはり何かありましたか」
「何かあるのはギルバートの方ではないのか。辛気くさそうな顔をして、一体何があった。俺でよければ聞くぞ」
「伯父上……お見通しですか」
「そういうわけではないが……お前はわかりやすいからな」
「うっ……」
それは自覚しているものだが中々なおらない。弟のテオルートが何を考えているのかわからないのとは真逆なのだ。
「じ、実は……娘の事で悩んでおりまして」
「ナターシャ嬢か。今年でいくつになる?」
「今年で10歳になりました」
「もうそんなにたつか」
「はい。……それで、ですね。ナターシャなのですが、壁を感じると言いますか」
「壁?」
「どこか無理をさせている気がしまして。隠し事とはまた違うのですが、本音を言えずに振る舞っているような気がして」
「それならば聞いてみてもいいのではないか」
「それが……以前聞いてみた時、濁された上にもっと頑張りますと逆効果を与えてしまったみたいで」
「ふむ……」
娘のナターシャは決して優秀とは言えないが、努力は惜しまないとても良い子として育ってきた。
「今まであまり我が儘を聞いたことがないのも心配なのです」
「確かに、幼子であれば一つや二つ言うのが普通だな」
「はい……」
「……あまりお前にこんなことを言いたくは無いのだが」
「なんでしょう。何でも言ってください」
「ナターシャは見た目こそギルバートに似ているが、中身はシトラウルにどこか似ている気がするぞ。テオルートとはまた違う、自分の本性や本音を進んで見せないタイプだろうな」
「な、何か解決方法はありますか」
「本心を見せないとは言えお前たちは家族だ。待つしかないかもしれないが、重圧を感じさせないように振る舞うことは大切だと思うぞ」
「重圧……」
思えばナターシャに、公爵令嬢として無意識に背負わせてきたものはいくつかあったかもしれない。よかれと思ってやったことが、逆効果になっているかもしれない。
伯父上の言葉に納得した私は、しばらく娘を見守ろうと思ったのだ。
いつか娘の本当の姿を見れることを願って。
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