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三章

33 side セルネスド

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 無事に入学式を迎えるも、災難が続いた。

 テオルートという甥が護衛つき、学校生活では常に付きまわれた。

 想像を遥かに超えるレベルでフィナとの時間を作れず。結果、夏休みまでそれが続いた。
 
 離れることよりは辛くないもの、一緒にいられないのであればそう変わらないのではと考え始めてしまうことが多々あった。それでもフィナとの登下校という時間から幸せを貰い、これだけは死守しようと心に誓った。

 いっそのこと学校内では俺も自分のことに集中しようと考え、舞台設計の学びを意欲的に行った。全く手をつけたことのない分野であった為に新鮮だったが、やりがいを感じた。

 テオルートから「目的が変わりましたか」と少し心配そうなけど面白そうな声色で聞かれるも無視をしながら、俺は俺の学校生活を過ごしていた。

 それでもやはりフィナとの時間が少ないことは精神的に辛くて、シトに話にいった。するとこれが案外、良い薬になった。効果を感じた為に毎日のようにシトに話し相手を求めた。今思えば申し訳なかったと感じる。

 耐えに耐え抜いて、ようやく夏休みを迎えた。

 その迎えた日は、せっかくだからフィナに城下の案内をしようと思った。その相談をシトにすると「いわゆるデートだね、楽しんで」と素っ気なく言われたが、そこで初めてデートになることに気がついた。

 これは失敗できないなと思いながら、計画をしっかり練って挑んだ。と言っても、よく知った場所を案内するだけで特段何か変わったことをするわけでもない。フィナが楽しんでくれるといいなと感じながら、デートを迎えた。

 ようやく二人きりで過ごせて、それらしいことができたものだから、内心舞い上がっていた。

 嬉しさを噛み締めながら案内をする。

 楽しい時間というのはあっという間で、悲しいことにすぐに終わりがきた。

 明日から夏休みに入り二人の時間が増えると思っていたが、同時に不安も生まれた。舞踊専攻の教えとしてはこの休みは自主練の意味を持つのだ。真面目なフィナのことだ。きっと、練習に明け暮れたいだろう。そう考えてしまい、二人の時間に関して多くは望んではいけないなと感じた。

 それも束の間、フィナからの提案により俺の気持ちは一気に晴天へと変化した。

 願いを何でも聞く。

 その言葉が胸に残り続ける。叶えてもらいたいことが多すぎることに、自身の欲深さを実感した。だがそれよりも遥かに喜びの気持ちが勝っていて、笑みがこぼれていた。何を叶えてもらうか、そう簡単には決まらないだろう。熟考した後に答えをだそう。そう決めた。







 初めて感じる、楽しい夏休みの幕開けだ。
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