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三章
31 side シトラウル
しおりを挟む無事入学式を迎えて、それぞれの新しい生活が始まる。その中で早速兄様から抗議がきた。
「シト!シトはいるか!」
随分声を張り上げてこちらに向かう様子が想像できる。
「陛下、如何いたしましたか」
「ルーカス、シトはどこだ」
「殿下でしたら……」
言わないでくれないかなという一抹の望みはすぐに消え去り、部屋へと突撃された。
「シトラウル!」
「……兄様、入学式お疲れ様。どうだったかな」
「どうだった、だと。俺がここに来ている理由は一番わかるだろう」
「その様子を見ると楽しかったみたいだね。うん、何より何より。これからも僕に気にしないで楽しんで。こっちは頑張るからさ」
「あぁ。途中までは楽しかったぞ。途中まではな」
「……う、うん」
想像を超えた迫力でせまられて、思わず体が怯む。
「テオルートを寄越すとはどういう用件だ」
「いや、護衛は必須だからね」
「テオルートにはテオルートの仕事があるだろう」
「そうだけど、隠密部隊は今落ち着いてるからね。特段一人いないところで問題はないよ。事情を伝えられてかつ守れる人間はそういないからさ、動いてもらったんだよ」
「言い分はわかる。心配してくれるのも嬉しい。だがな、完全に邪魔されているように思うぞ」
「それは被害妄想じゃ……」
「そんなわけあるかっ」
すぐさま否定される。
恋愛面での話は置いておいて、護衛の必要性をわかってくれているのならば大丈夫そうだ。
「邪魔だと思っても護衛はさせてね。それが仕事だから」
「休暇じゃないのか」
「テオルートは休暇を与えたのに特にすることがないって笑顔で告げてきたからね。だから笑顔で任務を与えてあげたんだよ。名目上は休暇だけどね」
息子にも関わらず扱いづらい人間育ったなと感じる。
「隠密部隊ならこっそり護衛をすればいいだろう。年中傍にいるなど、最早側近だ。せっかくのフィナとの学校生活だというのに、邪魔者が一人いるんだ。わかるか?この気持ちが」
「いや、うん……言いたいことはね、わかるんだけど」
「なら取り消してくれ」
「それも無理な話だとわかってるよね?」
「…………」
「兄様、無言の圧力は僕には効かないよ」
「…………ちっ」
「舌打ち、えっ舌打ちしたよね。ちょっと」
「あのうっとうしいのをどうするか……」
「はぁ、無視かい。お願いだから仲良くしてくれよ」
「断る」
即答されてしまう。テオルートよ、お前さては何かしたな……。
「そこまでバッサリ断らなくてもいいではありませんか、伯父上」
「……どこから来たんだテオ」
「窓からですね。話はずっと聞いてましたよ」
「不躾なやつだな。よし、解雇だ」
「酷いなぁ伯父上」
「兄様少し落ち着いて……」
そろそろ殺気さえも感じる兄様に対して面白そうに宥めるテオルート。どう折り合いをつけるか頭を悩ませるのであった。
人選ミスしたかなぁ……。
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