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二章

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 学校は専門学校という名前にしては立派過ぎる建物で、学園と呼ばれてもおかしくないような規模であった。ここまで舞踊専門学校が広く大きいのは、舞台がいくつか完備されていることが理由だ。文化祭などの外部を招いた行事は本格的な舞踊の披露の場となり、卒業後の本格的な舞台と遜色ないため重要な経験になるのだという。入学式が行われる会場はその内の一つだった。

「何というか、本当に素晴らしい造りですね」

「あぁ。俺もここへは久しぶりに足を運ぶが、以前よりも雰囲気があるな」

 会場入り口で受け付けを済ませて会場内へと向かった。専攻ごとに席が分かれるため、ここでセドとは一旦お別れとなった。

「いいかフィナ。何かあったらすぐに俺を呼べ…………まぁ、学内で事件が起こることは無いに等しいと思うが」

「そうですね。警備も厳重でしたから」

「……それでも心配だ」

「大丈夫ですよセド。しっかりとペンダントはつけてますから。それにあの頃に比べれば、自身の身を守る術は身に付けれた筈です」

 入学前までに護身術をある程度身に付ける話となり、セド直々の講習を受けたのはまた別の話だ。

「確かにフィナは強くなった。けど、無理はしないでくれ」

「はい……それではまた後で」

「…………あぁ」

 数時間離れるだけでもセドにとっては辛いようで、寂しそうな表情を浮かべた。それでも手を離して、お互いに自身の席へと向かった───。







 結論から言うと、入学式は想像以上に簡潔なものであった。校長の話が長いなどの定番は一切なく、必要最低限の時間で行われた。というのも、校長は現役の舞踊家で女性であるため話がぐだぐだなことはなかった。
 今日はそのままクラスごとに細かな学校説明があるようで、学生はそれぞれ教室へと向かった。専攻ごとに建物が異なるため、セドとの距離は長くなった。
 教室に入ると、入学式同様席が既に指定されており、自分の名前が書かれた場所へ着席する。ぞろぞろと教室に学生が入るが、既に知り合いであるのか数人ずつまとまりが見えた。友達作りのハードルが上がるのを感じるなか、周りを見渡しながら緊張が高まっていた。そんな中、隣に座った学生が声をかけてくれた。

「はじめまして!私はアンナよ」

「はじめまして。フィリシーナ、と言います」
 
 緊張気味に声を出すが、目の前の少女はそれを全く気にしていなかった。見た目は、茶髪を結い上げた背の高さが目立っていた。

「あ、ごめんなさい。あまり育ちが良いものじゃないからこういう話し方が楽で」

 そう話すアンナは気まずそうに笑った。

「気にしないで。同い年なのだから、むしろ私も敬語は止めるわね?」

「えぇ、もちろんよ!」

 砕けた口調で話せるのは貴族が通う学園ではない、身分を重要視しない専門学校の特徴だろう。ここは貴族の繋がりを作るものではなく、純粋に舞踊に関することを極める場所なのだ。

「教室に入ったら既に話をしてる子が多くて、焦ったのよ。まぁ、恐らく顔見知り程度がほとんどでしょうけど」

「顔見知りって言うと…」

「基礎等を教わる人が同じだとか、家の関係とかかな。私は師事した人は有名って訳でもないから、そこまで知り合いがこの学校にいないんだけどね」

「なるほど」

「それに平民出身だから。貴族様の家同士の関係とかは全く関係ないのよね。……でもフィリシーナは違うでしょ?」

「違う?」

「えぇ。貴女は少なくとも貴族でしょう?品格の良さが座っている雰囲気だけでわかるわ。……そうとうの良いとこね?」

「そ、そうかな」

「……安心して。今さら態度なんて変えないから。まぁ、ここが貴族ルールが通用する学園なら私は速攻でフィリシーナに土下座するところだけど。ここはあくまでも専門学校。悪いけど、私自身は身分どうこうは気にしないの」

「……ふふっ」

「え、笑うところ?」

「ごめん。アンナの真っ直ぐな所が面白くて素敵で」

 平民だからといって一切自身を卑下することなく、むしろ誇りを持ち、突き付けるような明るい笑顔を見せる姿は好感しか持てない。

「それ誉めてるの?」

「誉めてるわ!……私もここでは重要視されるべきは身分でないと思う」

「同じ考えね」

「えぇ。私達気が合いそう」

「そうね」

 アンナは平民出身というがとても雰囲気はこの学校にあっている。芯の強さがそれに現れていた。

「私、実は留学生で」

「えぇっ!フィリシーナがあの噂の?」

「私噂になってるの?」

「なってるなってる!だって、わざわざ他国から舞踊を学ぶ留学生なんて前代未聞よ。普通、他国の留学生は国同士の交流を深めるとかが目的でしょ?それなのに全く無縁な舞踊を学ぶなんて変わり者としか言えないもの」

 アンナ曰く、留学生が舞踊を学ぶのは本当に数十年に一度の頻度らしい。最近は滅多に現れないため、私の存在はある意味希少なんだとか。

「……(変わり者の)自覚は少しあるわ」

「ははっ。それ真顔で言うこと?」

 笑いのツボに入ったアンナはしばらく笑い続けていた。

 その後、改めて自己紹介をして身分を名乗っても何も変わらないどころか、他国であるサン国がどういうものかについてで会話が弾んだ。
アンナは私が留学生であることを踏まえて、何でも頼って欲しいと再び笑った。


 

 
 タイミングよく教室の扉が開いた。
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