フラグを折ったら溺愛されました

咲宮

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二章

12

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 入学日当日。
 
 その日の目覚めは早かった。

「大丈夫ですかお嬢様。眠れましたか?」

「……隈できてる?」

「若干ですから、簡単に隠せますよ」 

 思った以上の緊張から眠りが浅くなってしまい、寝ては起きてを繰り返したのが原因だろう。

「いよいよですね」

「えぇ。ニナ先生に基礎は完璧だから大丈夫と何度も言っていただいたけど、不安なものは不安ね……」

「お嬢様なら大丈夫です。あまり考えすぎず、思い詰めないでください」

「そうね。せっかくの学びの場ですもの。どんどん積極的に行動して…………友達を作らないと」

「今日のメインイベントですね」

「……確かに」

「私は共に行くことはできませんが、心よりご健闘をお祈りしています」

「ありがとうキナ」

 専門学校は貴族の集まりを目的とした場所ではないため、お付きの侍女を連れるものはいない。
 キナに送り出されながら、馬車へと向かった。
 どうか、一人でもいいから友人と呼べる人ができますように。そう願いながら、学校に向かう馬車へ乗り込んだ。

「セド。お待たせしてしまい申し訳ありません」

 セドの向かい側に腰を下ろした。

「大丈夫だ。全く待っていない」

「それなら良かったのですが」

 セドの若返る姿を見るのはこれで二回目だ。同じくらいの身長というのが見ていてとても可愛らしい。

「髪色や背が変わると、やはり雰囲気も変わりますね」

「あまり自分ではわからないが、変だろうか?」

「いえ。とってもお似合いですよ」

「……フィナはセドリックの姿こっちの方が好みか?」

「…………どのセドも格好いいです」

「そうか」

 はにかみながら告げると、嬉しさのあまりかセドも照れてしまう。

「フィナは今日髪を上げているのか」

「はい」

 入学初日から舞踊をするか定かでは無いため、動きやすいように髪をまとめてきたのである。

「初めて見るが、よく似合っている」

「ありがとうございます」

「……だが何か物寂しいな」

「確かにそうですね」

 元々あまり髪につける装飾は持っていなかった。今度買いに行こうかと考える。

「フィナ、横を向いてくれないか」

 そういいながら、隣へと移動するセド。

「…?はい」

 セドの反対側に顔を向ける。
 すると、セドの手が優しく髪へと触れた。

「……セド?」

「うん。上手くできたな。……完璧だ」

「何をしたんですか?」

「俺からの入学祝いだ」

 そういって、鏡で自分の髪型を確認する。
 すると、そこにはとても上質な銀色のレースのリボンが髪へ巻かれていた。

「わぁ!可愛い……!!」

 セドの贈り物のセンスが良すぎる。

「良かった。好みに合わなければどうしようかと思っていたんだ」

 胸を撫で下ろしながら、微笑むセド。
 予想外のサプライズに胸をときめかせながら、馬車は学校へと走り出した。







 

 いつの間に用意していたのだろう、嬉しいな……。
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