31 / 133
第二部 一章
11
しおりを挟むいよいよ明日は入学式だ。
同じ学校に通うこととなった私とセドの設定について最終確認が行われた。
部屋には私とセド、シトさんとルーカスが集まっていた。
「先ずはフィナからだな」
「はい。では確認いたします」
ルーカスが詳細が書かれた冊子を読み上げる。
「入学者名フィリシーナ・テリジア。サン国の留学生として舞踊専門学校へ入学。専攻は舞踊。留学中の後見人は血縁関係のあるソムファ侯爵家である。これより、フィリシーナ様は書類上ソムファ侯爵家に滞在しそこから通学するとなっております。これに関しては、侯爵家にも了承済みにございます」
丁寧な説明に、理解した意思を伝えるために頷く。
「シーナは大丈夫そうだね。……問題は兄様かな?」
「だな」
それは私も気になっていた所だ。
さすがに、一国の王が若返って専門学校に入学しますなどと正直に言える筈もなく。
一体どのように対処したのだろうか。
「続いて陛下です。入学者名セドリック・ロダン。ロダン侯爵家の次男、専攻は舞台制作と書類上はなっています」
「セドリック・ロダン……?」
まるで他人である。セドの要素は何処にもない。それにしても、セドリック・ロダンなどという人物を勝手に作り上げて良いものだろうか。
「ロダン侯爵とは旧知の仲なんだ。俺が本当に学園生活をしていた頃の側近でもある。今は息子が外交を担当しているがな。奴に似て優秀だ」
ロダン侯爵は割と早くに結婚をしており、セドと違ってそこまで長命でもないので既に家督は息子が継いでいるのだそう。継いだ息子の子供が私と同い年のようだ。
「ロダン侯爵は自ら各国を見る方法で外交をしてくれてるんだけど、そこの次男坊は小さい頃から祖父の話す他国に興味を持ったことが原因で学園に通わずとにかく父について世界を旅しているみたい。貴族という世界にまるで興味がないから、彼のことを知る友人というのもこの国にはいないようだね。だから今回名前を貸してもらうことにしたんだ」
簡単にまとめると、セドがセドリックとして
専門学校で学ぶということだろう。
「今回、外交を担当するロダン侯爵家ということもありシーナの留学中のサポートをセドリックに任す形にしたんだ」
「はい。ロダン家の者であれば何も問題はありませんからね。今回はそういう名目で陛下はフィリシーナ様とある程度傍にいられる筈ですよ」
「あぁ。だからフィナ、安心してくれ」
近くにいてくれるのはもちろんありがたいが、シトさん曰く九割がセドが如何に自然に私の近くにいられるかを中心に考えた結果だとか。
「もちろん、学校に行く身だ。舞台制作の知識を完璧にしてみせよう」
「それを使う場所があるといいね」
これまで以上にない棒読みで軽くあしらうシトさん。
「お互いに頑張りましょう、セド」
「あぁ」
学べるだけでありがたいので、細かい事を気にしないことにした。それに、セド本人がやる気なので止めはしない。何というか、本当に完璧にこなす姿が想像できる。
確認が終わり、部屋へと戻ると明日の準備をして眠りへとつく。
緊張するのは当たり前、眠れなくても仕方ない……。
1
お気に入りに追加
8,637
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される
雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。
スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。
※誤字報告、感想などありがとうございます!
書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました!
電子書籍も出ました。
文庫版が2024年7月5日に発売されました!
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。