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第二部 一章
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しおりを挟む専門学校といえど、入学式は存在する。あと数日でそれを迎えるわけだが、今日はセドに呼び出されて書斎を訪れていた。
「セド、フィリシーナです」
「フィナ。入ってくれ」
「失礼いたします」
「そんな堅苦しい挨拶は要らないのに」
「ここは書斎ですから。一応」
これでもかなり簡略な挨拶になっている。王城内では実家のように過ごしてほしいというセドの願いから、ある程度気楽にしている。
「今日はどうされましたか?」
「ペンダントの修理が終わったんだ。直接的渡したくてな」
そう、あの一件で実はペンダントは内部にかなりの損傷を受けたのだ。見た目こそ何も変わらないが、セドがペンダントに込めた何かしらの力はほとんど消え去ってしまったらしい。それが原因で韓紅色のペンダントは、黒く淀んだ赤い色へと変色してしまった。
ゼロ国へと戻った際、セドが自らの手で直したいからと預けていたのだ。
「このペンダントには、本当にお世話になりました」
「……いや、結局フィナに怖い思いをさせてしまった。そうさせないためのものでもあったのに」
「それでもセドは助けてくれました。それ以上を望むのは不可能に近いですよ」
「そうだな……。確かに万能なものではない。それでも効力は上げておいた」
「それはありがたいですが、ペンダントに頼りきりたくはありませんよ。いざという時、自分の身は自分でしか守れませんから」
「確かにそうだが…………。その術を学びたいというならば、俺が教えよう」
「……一国の王の時間を割くような事ではないと思いますが」
「駄目だ。他のものにフィナの美しい姿を見せるなど」
「護身術は美しいものではありませんが……」
「いや、フィナであれば何をしようと美しい」
「…………」
最近、私に対しての感情がおかしい気がする。どんどんセドの距離が近くなるというか、なんだか感覚が麻痺しているように思えてくるのは気のせいでないはずた。……なんというか、想いが止まらないように見える。
「……セドの、時間の都合が良いときに是非教えて下さい」
「あぁ。もちろんだ」
話題は再びペンダントに戻る。
「初めていただいた時以上に綺麗な色になっていますね。それに、なんだか小さくなりましたか?」
「わかるか!小さくしたんだ。フィナにとって邪魔にならないようにな。さすがに以前の大きさでは、舞踊をするときに外したくなるだろう?これならば大丈夫ではないかと思って、色々と改良してみた」
その改良には、セドの気遣いがこれでもかもいうくらい溢れていた。
小さくしただけでなく、首が絞まらないようにしっかりとフィットする素材にしたり制服を着たときに隠れるような長さに調節したり………と、かなり工夫を施してくれた。
「ありがとうございますセド。凄く嬉しいです。これだけ配慮いただいたものなら、確かに外す手間は省けますね」
「あぁ。できる限り身につけ続けてくれ」
「はい」
「……似合うな、やはり」
小さいから安っぽく見える等ということはなく、むしろ以前より華やかさは増した。
「フィナ、改めてこのペンダントとフィナ自身に誓う」
「…………何でしょうか」
「必ず、守り抜く」
「……はい。お願いいたします」
そう誓いを交わすと、セドは私の右手に優しく唇を落とした。
守られるだけではなく、いつか私も守れる力を。
△▼△▼△▼
咲宮です。
この度「フラグを折ったら溺愛されました」が発売されました!
更新が不定期ながらも呼んでくれる皆様、本当にありがとうございます。
現在は書籍化により変更した部分と合わせるために、二部の内容を修正中です。少しだけ内容が変わった話もあれば、全く変わらない話もあります。読んだことのない話に関しては純粋に付け足されたと思っていただければ幸いです。
この作業が終わり次第、前回まで更新した話以降の展開を書いていきたいと思います。
そして、今回書籍発売を記念しまして番外編をいくつか書きたいと思います。
もし、何かリクエストがございましたら感想欄よりお願いいたします。
番外編は修正作業と平行して行う予定です。
いつも読んでくださる皆様。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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