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第二部 一章
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しおりを挟む応接室に入って来くれば、すぐ様ローゼ叔母様に抱き着く。
「ローゼ!今日はもう仕事が終わったんだ!だから───」
「それは良かったですね。ですが私は今シーナとキナと話しているので」
「え………こ、これは失礼」
そうかなと思ったけど、やはり私達は眼中に無かった様子。
「お邪魔しています。侯爵様」
「あぁ」
形だけでも挨拶をする。
「お嬢様、この方が……?」
「えぇ。叔母様の旦那様であるソムファ侯爵よ」
二人の世界に入っている中、私はキナに説明をした。
「そういう訳ですので、時間ができたのならたまには貴方も少し部屋で休まれては如何ですか?」
「わ、私にとっての休息はローゼといることで……」
「そう言っていただけるのは凄く嬉しいですが、今はシーナ優先です」
話を遮られたこともあり、いつになく叔母様の雰囲気が冷たいように感じる。
「そんなっ…」
「お、叔母様。私ならもうそろそろお暇しますよ?……セドも待ってるだろうし」
「シーナ。貴女が遠慮する必要なんてないわ。……さ、出てってくださいな?」
笑顔で対応する所が少しラドに似てるなぁ、なんて思ってしまった。
「い、嫌だ!今日は珍しく仕事が少なかったんだ。緊急のものがない限り、長時間ローゼといれる貴重な日だというのに」
これは物凄くタイミングの悪い日に来てしまった。日を改めたいのも山々だが、今の叔母様がそれを許さないだろう。
「お、お嬢様。これがゼロ国の恋愛なのでしょうか」
叔母様と侯爵がなにやら話している間に、キナが小声で問う。
「えぇそうよ。侯爵様と叔母様は私とセドと同じく番関係だから、愛が重いのよね」
「な…なるほど」
「……私も初めは驚いたわ」
「そうなんですね。でも、お嬢様と国王陛下のやり取りとはまた違いますね」
「…………今のところはね」
今朝のセドの様子を思い浮かべて、このような状況にならないことを切に願った。
……叔母様と侯爵は未だに何か話しているが、どうやら決着する様子がない。
そんな中、侯爵家に仕える爺やさんが紅茶を持って来てくれた。
爺やさんにとっては見慣れた光景なのか、華麗に二人の事を無視していた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「どうぞ」
「え、あの。私は侍女ですので」
「いえいえ、お気になさらず。お客人に変わりはありませんから」
穏やかな所作で紅茶をキナへ出す。
キナは少し申し訳なさを感じながら、ありがたく飲んでいた。
「あの、私達はそろそろ帰ろうと思うのですが……」
「あぁ。それなら少しお待ち下さい。旦那様の仕事が早く終わると事前にわかっていましたので、ジェシンお坊ちゃまにフィリシーナ様が今日来られる事を予め伝えておきました。……ですので、もう少しで到着なさると思いますよ」
爺やさん凄い!
やはり長年侯爵家に仕えていれば様々な事の対処法を身に着ける事が可能だよな…。
「なら…シンが来たら、私はシンと話そうと思います」
そのやり取りを見てか、キナが突然予想外の事を言い出した。
「お、お嬢様。でしたらその間侯爵家の執事様に紅茶の淹れ方を学んでも良いでしょうか?」
「え?」
「とても美味しかったのです。私は紅茶の淹れ方はまだまだなので……。是非とも教わりたいのです!駄目でしょうかお嬢様?」
確かに……爺やさんの淹れる紅茶は熟練の手であるから味が普通と違う。キナはキナで美味しいけど、爺やさんには違った美味しさがでている。
「私としては良いけど……」
「ありがとうございます、お嬢様!執事様!お時間よろしいければご享受願いたいのですが」
「……様などいりませんよ。嬉しいですねぇ。この老いぼれが淹れた紅茶をそんなにも評価して頂けるだなんて…。もちろんいいですよ。フィリシーナ様とジェシンお坊ちゃまが話している間にできる限りの事を教えましょう」
「ありがとうございます!!」
キナの目がいつも以上に輝いてるのを見て、頑張って欲しいなと思ったのであった。
「では、調理場にいきましょうかね。フィリシーナ様、ジェシンお坊ちゃまならもう直ぐ来ると思いますので」
「はい。ありがとうございます」
こうしてキナは紅茶修行をしに調理場へ、私はシンを待ちながら叔母様と侯爵の攻防を見るという何とも不思議な光景が出来上がったのであった。
多分、二人から存在忘れられてるだろうな。
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