フラグを折ったら溺愛されました

咲宮

文字の大きさ
上 下
26 / 133
第二部 一章

6

しおりを挟む
 
 
 応接室に入って来くれば、すぐ様ローゼ叔母様に抱き着く。

「ローゼ!今日はもう仕事が終わったんだ!だから───」

「それは良かったですね。ですが私は今シーナとキナと話しているので」

「え………こ、これは失礼」

 そうかなと思ったけど、やはり私達は眼中に無かった様子。

「お邪魔しています。侯爵様」

「あぁ」

 形だけでも挨拶をする。

「お嬢様、この方が……?」

「えぇ。叔母様の旦那様であるソムファ侯爵よ」
 
 二人の世界に入っている中、私はキナに説明をした。

「そういう訳ですので、時間ができたのならたまには貴方も少し部屋で休まれては如何ですか?」

「わ、私にとっての休息はローゼといることで……」

「そう言っていただけるのは凄く嬉しいですが、シーナ優先です」

 話を遮られたこともあり、いつになく叔母様の雰囲気が冷たいように感じる。

「そんなっ…」

「お、叔母様。私ならもうそろそろお暇しますよ?……セドも待ってるだろうし」

「シーナ。貴女が遠慮する必要なんてないわ。……さ、出てってくださいな?」

 笑顔で対応する所が少しラドに似てるなぁ、なんて思ってしまった。

「い、嫌だ!今日は珍しく仕事が少なかったんだ。緊急のものがない限り、長時間ローゼといれる貴重な日だというのに」

 これは物凄くタイミングの悪い日に来てしまった。日を改めたいのも山々だが、今の叔母様がそれを許さないだろう。
 
「お、お嬢様。これがゼロ国の恋愛なのでしょうか」

 叔母様と侯爵がなにやら話している間に、キナが小声で問う。

「えぇそうよ。侯爵様と叔母様は私とセドと同じく番関係だから、愛が重いのよね」

「な…なるほど」

「……私も初めは驚いたわ」

「そうなんですね。でも、お嬢様と国王陛下のやり取りとはまた違いますね」

「…………今のところはね」

 今朝のセドの様子を思い浮かべて、このような状況にならないことを切に願った。
 ……叔母様と侯爵は未だに何か話しているが、どうやら決着する様子がない。

 そんな中、侯爵家に仕える爺やさんが紅茶を持って来てくれた。
 爺やさんにとっては見慣れた光景なのか、華麗に二人の事を無視していた。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

「どうぞ」

「え、あの。私は侍女ですので」

「いえいえ、お気になさらず。お客人に変わりはありませんから」

 穏やかな所作で紅茶をキナへ出す。
 キナは少し申し訳なさを感じながら、ありがたく飲んでいた。

「あの、私達はそろそろ帰ろうと思うのですが……」

「あぁ。それなら少しお待ち下さい。旦那様の仕事が早く終わると事前にわかっていましたので、ジェシンお坊ちゃまにフィリシーナ様が今日来られる事を予め伝えておきました。……ですので、もう少しで到着なさると思いますよ」

 爺やさん凄い!
 やはり長年侯爵家に仕えていれば様々な事の対処法を身に着ける事が可能だよな…。

「なら…シンが来たら、私はシンと話そうと思います」

 そのやり取りを見てか、キナが突然予想外の事を言い出した。

「お、お嬢様。でしたらその間侯爵家の執事様に紅茶の淹れ方を学んでも良いでしょうか?」

「え?」

「とても美味しかったのです。私は紅茶の淹れ方はまだまだなので……。是非とも教わりたいのです!駄目でしょうかお嬢様?」

 確かに……爺やさんの淹れる紅茶は熟練の手であるから味が普通と違う。キナはキナで美味しいけど、爺やさんには違った美味しさがでている。

「私としては良いけど……」

「ありがとうございます、お嬢様!執事様!お時間よろしいければご享受願いたいのですが」

「……様などいりませんよ。嬉しいですねぇ。この老いぼれが淹れた紅茶をそんなにも評価して頂けるだなんて…。もちろんいいですよ。フィリシーナ様とジェシンお坊ちゃまが話している間にできる限りの事を教えましょう」

「ありがとうございます!!」

 キナの目がいつも以上に輝いてるのを見て、頑張って欲しいなと思ったのであった。

「では、調理場にいきましょうかね。フィリシーナ様、ジェシンお坊ちゃまならもう直ぐ来ると思いますので」

「はい。ありがとうございます」

 こうしてキナは紅茶修行をしに調理場へ、私はシンを待ちながら叔母様と侯爵の攻防を見るという何とも不思議な光景が出来上がったのであった。







 

 多分、二人から存在忘れられてるだろうな。
しおりを挟む
感想 298

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。