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接触
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最悪、最悪、最悪、サ・イ・ア・ク!!!
俺は頭の中でこの4文字を繰り返した。そうすればこの羞恥から逃れられるかのように。
もう吐ききってしまい嘔吐は止んでいたが色々と疲れ果てた俺はだまってうつむいたままでいた。
彼女は何も言わずにそんな俺の背中を優しく押しながら近くにある公園へ俺を誘導する。
公園内にはベンチが複数ありその一つに俺を座らせると彼女はベンチ横にある自販機でペットボトル入りの水を2本買いそのうちの1つを俺に手渡した。そしてもう1本のペットボトルに口をつけながら彼女が俺の隣に座る。
「吐き気はましになった?」
彼女のその問いに俺も水を口に含みながら頷いた。そして彼女にシンプルな質問を投げた。
「井上先生と不倫してるんですか?」
失恋しゲロを吐いているところを見られ自暴自棄になっていた俺にはデリカシーなんぞはすっかり欠如していた。さあ泣くか?怒るか?もしくは水をぶっかけられるかも。デリカシーがないなりに身構えていた俺に対し彼女はおかしそうにアハハ、と笑った。
「え、ウケる。苦しそうにゲーゲーしてて第一声がそれ!?」
予想外の彼女の反応にバツが悪くなった俺はつられて苦笑いした。深刻な雰囲気をぶち壊すようなあっけらかんとした「陽」の気。俺はこの期におよんでこの人やっぱいいなあと思ってしまった。彼女はなおもおかしおうに笑いながら続けた。
「職場の人にバレはじめたことは気付いてたけどまさか中学生の患者さんに見抜かれるのはまずいなあ…。キミ、誰にも言っちゃだめだよ?」
ああやっぱり・・・。本当には不倫なんてしてなくてただ井上医師の車に乗っていただけかも・・・と心のどこかでまだ淡い期待を残していた俺は彼女のその言葉にズーンと落ち込んだ。
「だれにも知られたくないなら最初からしなきゃいいんじゃないんですか、そんなこと」
吐き捨てるようにそう言うと彼女が目をスっと細めた。
「奏くんだっけ?キミさ私のこと好きでしょ」
「え!!??」
俺は持っていたペットボトルを落としそうになった。
「待合室でさ、ずっとジロジロ見てたでしょ」
俺はますます動揺してペットボトルをきつく握りすぎてしまいボトルがベコっとへこむ音が響いた。
彼女は俺からペットボトルをそっと取り上げる。さっきまであっけらかんとしていた彼女の表情は一変し、氷のように冷たい眼差しが俺をとらえていた。
「でも奏くんは鬱を治すために通院してるんだよね?気になる人をちょっとジロジロ見るくらいならいいけど駐車場で待ち伏せはさすがにマズくない?」
バレていた。今日の醜態が彼女の前でゲロを吐いたことだけだと思い込んでいたなんてとんだマヌケだった。
今までの俺の好意もとっくにバレてたし、あろうことか駐車場で3時間も待ち伏せしていたこともバレてる。
次は彼女の口からどんな言葉が出てくるのだろうか?これ以上は聞きたくない。なにより彼女の冷えきった表情がこわい。
俺は彼女から取り上げられていたペットボトルを乱暴に奪い返した。
「…じゃあなんであなたは今ここにいるんですか?あんなにラブラブそうに車に乗ってたのに。これからデートなんじゃなかったんですか!?」
彼女の氷のように冷めた目がますます冷たさを増した感覚がした。やばい。余計に怒らせた。俺は叱られる前の子供のように身構えた。しかし彼女は再び俺からペットボトルを優しく取り上げとんでもないことを提案した。
「奏くん、今からわたしとセックスする?」
俺は頭の中でこの4文字を繰り返した。そうすればこの羞恥から逃れられるかのように。
もう吐ききってしまい嘔吐は止んでいたが色々と疲れ果てた俺はだまってうつむいたままでいた。
彼女は何も言わずにそんな俺の背中を優しく押しながら近くにある公園へ俺を誘導する。
公園内にはベンチが複数ありその一つに俺を座らせると彼女はベンチ横にある自販機でペットボトル入りの水を2本買いそのうちの1つを俺に手渡した。そしてもう1本のペットボトルに口をつけながら彼女が俺の隣に座る。
「吐き気はましになった?」
彼女のその問いに俺も水を口に含みながら頷いた。そして彼女にシンプルな質問を投げた。
「井上先生と不倫してるんですか?」
失恋しゲロを吐いているところを見られ自暴自棄になっていた俺にはデリカシーなんぞはすっかり欠如していた。さあ泣くか?怒るか?もしくは水をぶっかけられるかも。デリカシーがないなりに身構えていた俺に対し彼女はおかしそうにアハハ、と笑った。
「え、ウケる。苦しそうにゲーゲーしてて第一声がそれ!?」
予想外の彼女の反応にバツが悪くなった俺はつられて苦笑いした。深刻な雰囲気をぶち壊すようなあっけらかんとした「陽」の気。俺はこの期におよんでこの人やっぱいいなあと思ってしまった。彼女はなおもおかしおうに笑いながら続けた。
「職場の人にバレはじめたことは気付いてたけどまさか中学生の患者さんに見抜かれるのはまずいなあ…。キミ、誰にも言っちゃだめだよ?」
ああやっぱり・・・。本当には不倫なんてしてなくてただ井上医師の車に乗っていただけかも・・・と心のどこかでまだ淡い期待を残していた俺は彼女のその言葉にズーンと落ち込んだ。
「だれにも知られたくないなら最初からしなきゃいいんじゃないんですか、そんなこと」
吐き捨てるようにそう言うと彼女が目をスっと細めた。
「奏くんだっけ?キミさ私のこと好きでしょ」
「え!!??」
俺は持っていたペットボトルを落としそうになった。
「待合室でさ、ずっとジロジロ見てたでしょ」
俺はますます動揺してペットボトルをきつく握りすぎてしまいボトルがベコっとへこむ音が響いた。
彼女は俺からペットボトルをそっと取り上げる。さっきまであっけらかんとしていた彼女の表情は一変し、氷のように冷たい眼差しが俺をとらえていた。
「でも奏くんは鬱を治すために通院してるんだよね?気になる人をちょっとジロジロ見るくらいならいいけど駐車場で待ち伏せはさすがにマズくない?」
バレていた。今日の醜態が彼女の前でゲロを吐いたことだけだと思い込んでいたなんてとんだマヌケだった。
今までの俺の好意もとっくにバレてたし、あろうことか駐車場で3時間も待ち伏せしていたこともバレてる。
次は彼女の口からどんな言葉が出てくるのだろうか?これ以上は聞きたくない。なにより彼女の冷えきった表情がこわい。
俺は彼女から取り上げられていたペットボトルを乱暴に奪い返した。
「…じゃあなんであなたは今ここにいるんですか?あんなにラブラブそうに車に乗ってたのに。これからデートなんじゃなかったんですか!?」
彼女の氷のように冷めた目がますます冷たさを増した感覚がした。やばい。余計に怒らせた。俺は叱られる前の子供のように身構えた。しかし彼女は再び俺からペットボトルを優しく取り上げとんでもないことを提案した。
「奏くん、今からわたしとセックスする?」
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