悪役令嬢に転生した俺は このままだと復讐に燃えるヒロインに殺されるので何とかしたいが、なかなか死亡フラクが消えてくれない。

花城カイ

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プロローグ

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 ある日、目が覚めたら知らない部屋だった。

 ありきたりなワンルームマンションの、これまたありきたりなシングルベッドで寝てたはずなのだが。
 こんなゴージャスな部屋、今の今まで見たことがない。

 っていうか、こういうのって何だっけ。
 バロック調とか、ロココ調とかそんな感じのヤツ?
 とにかくアレだ。
 要するに、俺が今、居るここは中世のお屋敷みたいなところだった。

 確かオレは、日本生まれの日本育ち、生粋の日本の男子高校生だったはずだが。

 腰まで伸びた艶やかな赤毛は緩やかにカールし、陶器のように白い肌。
 大きな瞳はエメラルドに輝いている。
 鏡に映ったその姿は、絶世の美少女だった。

 ・・・可愛い・・・
 好みか、好みじゃないかと聞かれれば、明らかに前者だ。

 だが、今、問題はそういうことではなく。
 俄かに、これが自分の姿とは信じ難い。

 とりあえず、自分の頬を思いっきりつねってはみたが、何も変化は見られなかった。
 どうやら夢じゃないらしい。

 ということはだ。
 オレは、即座に理解した。
 これは異世界転生というヤツだと。

 いや、厳密に言うと、俺は現世で死んだ覚えはなく、普通に自室のベッドで寝て起きたら、こうなっていたわけだから、これが転生と言うのかはわからないけれど。
 ともかく、今現在、オレがいるこの世界は異世界に間違いないだろう。

 けれども、オレは動じなかった。
 何故なら、オレは重度のライトノベルの愛読者だったから。

 そう、オレは「ライトノベラー」なのだ。
「ライトノベラー」とは、今、オレが作った言葉だが。
「プレイ」を「プレイヤー」と言うみたいに。
 いや、「ピアニスト」のように、「ライトノベリスト」の方がかっこいいかもしれない。

 そもそも「ライトノベル」の語尾を変換して、擬人化させるのはおかしいという問題はひとまず置いておくとして。


 何が言いたいかというと、つまり。
 異世界転生もののライトノベルを読みすぎるあまり、このとんでもない事態においても、十分に対応できる謎の自信がオレにはあった。

 何しろ、今の自分は美少女だ。
 この美貌を活かしてハーレムを築いてもいいし、スローライフを楽しむのもありかもしれない。
 部屋を見る限り、家も裕福なようだし、普通に生活するには困らないだろう。

 何だ、楽勝じゃないか。

 なんて、深くも考えずにオレは浮かれていたのだが。

 この時の自分を殴ってやりたい。
 今となっては、心の底からそう思う。
 そう、何故なら、この世界はオレの思うようにはままならない。
 事はそう簡単ではなかったのだ。


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