【完結】人魚と同棲始めました~海の秘密と愛の絆~

花城カイ

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同棲の始まり

究極の選択

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 その日の昼頃、勤務中のショーンが昼食を持ってルカの部屋に立ち寄った。

「よぉ、ルカ。調子はどうだ?って、何かあんま顔色、良くねぇな。大丈夫か?まさか、二日酔いじゃねぇよな?」
「・・・あ、ああ。別に何ともねぇよ。」
「なら、いいけど。ほら、これ。お前の好きなパン屋のサンドイッチ。」
「・・・おぅ、サンキュ。」

 ルカは薄い笑顔を作ってそれを受け取ると、ショーンをソファに座らせ、コーヒーの用意をした。
 向かいに座るショーンの笑顔はいつもと同じで、楽しそうに勤務中のネタを話している。
 そんなショーンを、ルカはただほんやりと見つめていた。

 ――なぁ、ショーン。オレ、実はもう死んでたらしいぜ?

 とても言えた話ではないが、もしそんな事を聞かせたら、ショーンはどんな顔をするだろうかと考える。
 いや、そうでなくとも。

 現状、ルカが抱えている問題を伝えたら、ショーンは何と言ってくれるだろう?
「生きろ」それとも「死ね」?

 ――いや、そんな簡単に答えの出せるもんでもねぇか。

 そもそも、そんな辛い選択をショーンにさせるわけにはいかない。
 これは、ルカの問題なのだから。

「――ルカ?どうした?ぼぅーっとして。やっぱ具合、悪いんじゃねぇのか?」
「・・・いや。ちょっと考え事。」
「何だよ?気になるな、言えよ。」

 そんな風にショーンに言い寄られれば、ルカは何かを口にせずにはいられず。
 赤い目をすっと逸らした。

「なぁ、ショーン。もし、例えばの話な。一週間前、オレとお前があの屋敷に乗り込んだあの夜、オレが死んでたら、お前、どうしてた?」
「――ルカ?お前、何を・・・」
「あ―、いや、だから、もしもの話。そうなったら、オレって一応、殉職か。ってか、署内のデスクのオレの私物とか、お前にカタしてもらう事になるんだろうな。あと、お前の新しいパートナーは――」
「おい、ルカっっ!!」

 ぐっとショーンの両腕が伸びて、痛い程の力でルカの肩を掴む。
 いつもは穏やかな顔をしている事の多いショーンだが、この時ばかりは明らかに怒っていた。

「冗談でもそういう事を言うのはやめろっ!あの時、オレが――、いや、オレだけじゃない。お前の家族も、署内のみんなだって、どれだけ心配したと思ってるんだ?!お前が見つかるまで、どんなに必死に探したと――。お前がちゃんと目を覚ますまで、こっちはずっと生きた心地なんかしなかったんだぞ!」
「・・・ショー・・・ン。」
「レオもお前の親御さんも、ずっと泣きっぱなしだった。オレだって、お前がもし何かあったらと思うと、気が気じゃなくて――。ずっと怖かったんだ!!」

 瞬間、ルカはショーンに抱きついた。
 両腕を回して、強く抱き締める。
 そして、そのまま声を殺して泣いた。

「・・・ごめ・・・ん、ショー・・・」
「――おい、ルカ??!」

 いきなり泣き出したルカに、ショーンもすっかり怒りを忘れて。
 いつまでも泣き止まないルカを、ショーンはただただずっと抱き締めていた。
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