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同棲の始まり
不可解な出来事
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「いや、お前さ。屋敷のテラスから海へ飛び込んだんだろう?お前が発見されたのは、そこからずいぶん離れた海岸の岩場なんだよ。泳いでたどり着くには不自然過ぎる距離だし、潮の流れから言って、そこに流れ着くってのもちょっとありえなくてな。」
何よりルカには海に飛び込んでからの記憶がないので、まさか自力で泳ぎ切ったとは言えずに。
だとすれば、海に身を任せて流れ着いたとしか考えられないのだが、何でそんなところで発見されたのかなんて、ルカには皆目、見当もつかない話だった。
「それにな。お前、発見された時、全裸だったらしい。」
「ぜっ、全裸??!ウソだろ??!」
「・・・もしかして。お前、あのマフィアの連中に何かされたんじゃねぇだろうな?」
「い、いや、それは絶対ねぇから!!オレ、海に飛び込むまでちゃんと服は着てたし!間違いなく!!」
けれど、じゃあ、服はどうしたんだと問われれば、ルカは閉口するしかなく。
まさか、海に漂っている間に自然に脱げてしまうなんて、普通に考えてもありえない。
「な?ちょっと謎めいてるだろ?だから、署内では、実はお前は人魚に助けられたんじゃないかって、そんな噂にもなってるんだぜ?」
「はぁ?何、バカな事、言ってんだ?」
「まぁ、きっといろいろな偶然が重なって、そういう事になったんだろうけど。噂好きな連中が多いからな。もしかして退院する頃には、お前が不老不死になったとか言われてるかもな。」
「不老不死?何で?」
「ほら、昔からよく言うだろ?人魚の血肉を食った人間は不老不死になるってさ。」
そう鼻で笑うショーンに、ルカも苦笑した。
確かに、人魚の伝説の一つにそういう話があった。
バカバカしい夢物語だ。
「ってか、もしオレが本当に不老不死になってたら、四日間も寝込んでなんかいねぇで、さっさと目を覚ますと思わねぇか?」
「それもそうだな。じゃあやっぱり、お前は不老不死ではなさそうだ。」
そんな軽口を叩き合って、しばらく和やかな時間を過ごした後。
いい加減、ルカを休ませるべきかとショーンはベッド脇の椅子から腰を上げた。
「じゃあな、ルカ。また明日も見舞いには来るから。」
「おぅ、サンキュ。ショーンもケガ、大事にしろよ?」
「ああ。でも、お前は本当に強運の持ち主だとは思うぜ?オレがこのとおりボロボロなのに、お前は無傷で生還だもんな。」
――え?
思わず、固まったルカにショーンの方が不思議そうな顔をした。
「どうかしたか?」
「って言うか、無傷じゃねぇし。オレだって、腹を撃たれて――」
そう言いながら、あの時、撃たれたであろう箇所をショーンに見せてやろうと上着の裾を捲ってみたものの、そこには傷一つなく。
ルカの方こそ驚いて、目を剥いた。
「ルカ?腹がどうした?どこか痛むのか?」
「・・・あ、いや。その、別に。何でもねぇ・・・。」
引きつった笑みを返し、何とかショーンを宥めて病室から追い出すと、ルカはもう一度、自分の腹を見た。
けれど、やっぱりそこには銃創どころか、かすり傷すらない。
そんなはずはない。
あの夜、確かにルカは撃たれたのだ。
銃弾を腹に受けたあの衝撃も、熱も、痛みも。
全て鮮明に覚えているのに。
溢れる出血を抑えながら、必死で屋敷を逃げ回ったのは夢ではないはずだった。
それなのに。
――どうして??!
撃たれた事実がまるで跡形もないその光景に、ルカは息を呑むしかなかった。
何よりルカには海に飛び込んでからの記憶がないので、まさか自力で泳ぎ切ったとは言えずに。
だとすれば、海に身を任せて流れ着いたとしか考えられないのだが、何でそんなところで発見されたのかなんて、ルカには皆目、見当もつかない話だった。
「それにな。お前、発見された時、全裸だったらしい。」
「ぜっ、全裸??!ウソだろ??!」
「・・・もしかして。お前、あのマフィアの連中に何かされたんじゃねぇだろうな?」
「い、いや、それは絶対ねぇから!!オレ、海に飛び込むまでちゃんと服は着てたし!間違いなく!!」
けれど、じゃあ、服はどうしたんだと問われれば、ルカは閉口するしかなく。
まさか、海に漂っている間に自然に脱げてしまうなんて、普通に考えてもありえない。
「な?ちょっと謎めいてるだろ?だから、署内では、実はお前は人魚に助けられたんじゃないかって、そんな噂にもなってるんだぜ?」
「はぁ?何、バカな事、言ってんだ?」
「まぁ、きっといろいろな偶然が重なって、そういう事になったんだろうけど。噂好きな連中が多いからな。もしかして退院する頃には、お前が不老不死になったとか言われてるかもな。」
「不老不死?何で?」
「ほら、昔からよく言うだろ?人魚の血肉を食った人間は不老不死になるってさ。」
そう鼻で笑うショーンに、ルカも苦笑した。
確かに、人魚の伝説の一つにそういう話があった。
バカバカしい夢物語だ。
「ってか、もしオレが本当に不老不死になってたら、四日間も寝込んでなんかいねぇで、さっさと目を覚ますと思わねぇか?」
「それもそうだな。じゃあやっぱり、お前は不老不死ではなさそうだ。」
そんな軽口を叩き合って、しばらく和やかな時間を過ごした後。
いい加減、ルカを休ませるべきかとショーンはベッド脇の椅子から腰を上げた。
「じゃあな、ルカ。また明日も見舞いには来るから。」
「おぅ、サンキュ。ショーンもケガ、大事にしろよ?」
「ああ。でも、お前は本当に強運の持ち主だとは思うぜ?オレがこのとおりボロボロなのに、お前は無傷で生還だもんな。」
――え?
思わず、固まったルカにショーンの方が不思議そうな顔をした。
「どうかしたか?」
「って言うか、無傷じゃねぇし。オレだって、腹を撃たれて――」
そう言いながら、あの時、撃たれたであろう箇所をショーンに見せてやろうと上着の裾を捲ってみたものの、そこには傷一つなく。
ルカの方こそ驚いて、目を剥いた。
「ルカ?腹がどうした?どこか痛むのか?」
「・・・あ、いや。その、別に。何でもねぇ・・・。」
引きつった笑みを返し、何とかショーンを宥めて病室から追い出すと、ルカはもう一度、自分の腹を見た。
けれど、やっぱりそこには銃創どころか、かすり傷すらない。
そんなはずはない。
あの夜、確かにルカは撃たれたのだ。
銃弾を腹に受けたあの衝撃も、熱も、痛みも。
全て鮮明に覚えているのに。
溢れる出血を抑えながら、必死で屋敷を逃げ回ったのは夢ではないはずだった。
それなのに。
――どうして??!
撃たれた事実がまるで跡形もないその光景に、ルカは息を呑むしかなかった。
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