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[雑話後編]魔王と呼ばれる女性は蜘蛛の魔物に恋をする。

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目が覚めた。

「くぅ、ぅあ!よく寝た!」

おはようございます、外はちょうど夜になりました。

「ん?じゃあもう外出られるの?」

はい、それと闇で衣を作らせていただきましたのでこちらをお召し下さい。

そこには闇に月明かりが光るような綺麗なドレスが浮かんでいた。
すり抜けるように体に当たるとそのままドレスは着れた、うん、便利。

「外出たいんだけど、さ、えっと、なんて呼べばいい?名前がないとなんか不便で」

傲慢です。

「いや、それは分かってんだけどね。じゃあ、闇を生み出してくれたから、この世界の住人ってことでノワールって名前はどう?」

「でわ今日からはノワールと名乗らせていただきます。」

「うわ!!羊の骸骨!?てか....ん?執事?」

そこには羊の骸骨を被った執事がいた。

「名前をいただきましたので具現化した次第でございます、魔王よ。」

「待って、スキルが具現化して、こんな意思を持つなんて聞いたことないんだけど。」

「それは、作者の都合で御座います。」

「さく?まあ、なんでもいっか、じゃあノワール外に連れてってちょうだい。」

「魔王はスルーですか?」

「どうせそれもさくなんたらの都合とか言うんでしょ?」

クスクスとノワールは笑いながら「ごもっともで御座います」と返事をした。





外に出るとそこには何もなかった、半径1キロほどが土ごとえぐれてそこには黒い何かが蠢いて...

「これは?」

「はい、私を使用した際の威力が少しばかり強かったのでしょう。」

えぇー、こんな何にも残らないもんなの?
村も森も全てごっそり持っていかれてる。

「この黒いのは?」

「これは憎悪と悪意の魂の残り香ですね。言うなれば私の食べ残しです」

よく分からないけど、人だったってことだけは分かった。
魔王となったらしいし、種族も選べるらしい、少し楽しみって言うのもあるけどこれからどうなるって不安もある。
うーん、と悩んでいるとそこに1匹の真っ白な小さい蜘蛛がいた。

「ん?なにこ「魔王様お逃げ下さい」」

その白い蜘蛛は一瞬にしてノワールの体の半分以上を消した。
そしてその背後にいる私や森も、全てを消した。

「ガッハァ、?な、これ?」

「この子が新しい、魔王?弱い。」

その白い蜘蛛は一瞬で真っ白な女の子に変わりこちらに歩み寄ってくる。

やばい、これしぬ、のわーるは?仮面だけになってる??
ひんだ?わたひ。

「死にたく、ない、ない」

Now loading...

受理されました。

スキル:不老不死を獲得しました。
称号:cすTEェ無に愛されし@/t!獲得しました。

その瞬間私の体は元に戻り思考が凄い勢いで回り出した。

こいつは何者?強い。ノワールは死んだ?いや影にいる。仮面は?それは武器?闇は武器。傲慢を使う?使う。どうする?。この女を。直ちに殺す。

「受理しました」

ノワールは一瞬で少女の後ろから首を飛ばした。
が、一瞬遅れてノワールに四箇所の歯型のようなものが付きその部分が次の瞬間えぐれて無くなった。

「いだぃ、けど、美味しい。」

少女の首はそう喋ると小さな蜘蛛になりバラバラになった、そして体が裂けその中からまた先ほどの少女が出てきた。

「少し本気出すね」

そう言い残すとずっと閉じていた・・・・・・・・目を開いた、それを見た瞬間私は感じた。

あ、食べられた、と。







目を開けるとそこは知らない白い天井だった。

「おは、よう?」

「ひっ!??」

そして横には私を食べたはずの白い少女がお菓子を食べていた。

え?私死んでないの?どうして、確かにあの時私は食べられたはず。

「私のスキル、暴食、なんでも食べる、代わりに感情と記憶と視力をなくす。」

「え?...つまりどう言うことなの」

「最初から殺す気ない、魔王生まれたから迎えにきた。ついでに味見した、記憶を少し食べた。酷い過去だね」

「うるさい、勝手に見ないでよ!」

私はつい怒鳴り声を上げてしまった。こんな小さな女の子に、少しだけ悪いことしたかなと思った。

「...ごめん」

女の子はそう言い残すと部屋を出て行った。


少ししてまた少女が戻ってきた。

「何の用?私貴方の事嫌いだし早く帰りたいんだけど」

「帰る場所ないのに?」

「くっ!」

「お菓子持ってきた、お茶も、食べよ?」

これがイルーナ・イブ・アリアドネと初めて会った日である。


それから数ヶ月が経った。
居場所のなかった私はここに住まわせてもらうことになり、少しだけ、ほんの少しだけ仲良くなったイルーナと日々のお茶会がこれもほんの少しだけ楽しみとなっていた。

「そういえばイルーナってなんで私のことクロって呼ぶの?」

「ん?黒いから」

「そんまんまなのね」

そんなたわいない話をする仲になった。

イルーナはなかなか可愛いところが多かった、少し心配性の妹みたいな感じだった。

ノワールは生きていたがある日を境に羊のお面を置いて現れなくなった。私の声にも反応しなくなった。
その分イルーナが私の事を想ってくれた。

これは全てイルーナの策略かもしれない、なんて何度か考えたこともあったが、まぁそれでもいいか、と想ってしまう私がいた。

その時から私はイルーナ無しでは生きていけない存在になっていた。


「クロ、家できた」

それは唐突だった。
どうやらイルーナは私の家をわざわざ作ってくれていたらしい(正確に言えば彼女の分体が)
その家が出来たと言うことは。

「いや、イルーナとまだ一緒にいたい、どこかお出かけとかもしてみたいし、だからまだここにいる」

「むぅ」

困った顔もイルーナは可愛かった。
イルーナとの約束であと1週間だけ一緒に暮らすことになった。
その間私はイルーナに甘えまくった。

2人で私の家を見に行った。

「ねえ、イルーナ、何年か一緒に暮らしたけどやっぱり離れたくないよ。」

「ん、私も、だけどそろそろ独り立ちしないと。」

独り立ちというのは魔王の独り立ちである、魔王のあり方とかを教えてもらい訓練などもしてもらった。まあ、家庭教師みたいなものをしてもらってた。

自分でもわかっているんだが、やはり少し抵抗が...

「じゃあ、友達になろう。」

急にイルーナはそう呟いた。

「月に一回は、お茶会をしよう。」

イルーナはそう言い帰り支度をしていく。
淡々と。

「何かあったらクロ呼ぶ、だから何かあったら呼んで?」

「...うん、わかった!」

そしてニーナはこの日から新たに傲慢の魔王クロ・ノワールとして名乗りを上げ、魔王として恐れられる存在となっていく。



が、それはまた別のお話。

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