51 / 90
第五十一話 惨劇
しおりを挟む
目があった瞬間、ユーヤは弾丸のように突進してきた。
「変態野郎ぉおおおおッ!」
突進の勢いのままに、隼人の顔面を殴り飛ばした。隼人は吹っ飛ぶ。ひどい音を立て、机が倒れる。悲鳴が上がる。集めた紙が宙に舞った。ユーヤも反動で転がりこんだ。
「うっ……!」
痛みに隼人はうめいた。倒れた机の足が、胴体に食い込む。バサバサと紙が、舞い落ちてきた。辺りは白まみれになる。机の足を避け、隼人は起き上がろうとした。
しかし、そのときには、もうユーヤの足が振りかぶられていた。
「らああああああっ!」
咄嗟にかばったことで顔に直撃は避けられた。また、隼人は机の海へと逆戻りする。何とか身をかばった隼人の腰に、ユーヤの蹴りがモロに入る。
痛みに火花が散り、息が詰まった。
「ッシ! ッシッ!」
息を吐いて、何度もキックボクサーのように、隼人を蹴り飛ばす。舞い上がる紙もお構い無しに蹴る。一度、的が外れて、机の足に当たった。ごいいんと激しい金属の音がして机が転がっていった。
「ってええああああ!」
痛みに足を抱えたと思うと、ユーヤは隼人を睨みつけ、今度は飛びかかり殴りつけにかかった。
「てめえええ! わああああーっ!」
余りに過剰な攻撃に、辺りは静まり返っていた。非現実的さに、乾いた笑いさえ漏れる始末だった。
「キモい小説書きやがって! この変態野郎っ! ホモ野郎! きめぇんだよっ! リュードーに謝れっ!」
ぼこぼこに隼人を殴り飛ばしながら、ユーヤは狂ったように叫んでいた。
隼人は必死で自分の身を守っていたが、龍堂の名前に、意識がとられた。
まさか……!
咄嗟に隼人は激しく転がった。ユーヤの不意を突き、包囲を抜ける。周囲から爆笑が上がったが、構っていられなかった。F組へ、隼人は扉へ向かう。
「逃げんじゃねえええええあっ!」
ユーヤの声と圧が、飛んできて、隼人のベルトを引っ掴んだ。全力のタックルに、隼人は引き倒され、床を滑った。
「きゃあ!」
「やだーっ」
女子の嫌悪の悲鳴が上がる。隼人は身を起こして、全身が熱くなった。ユーヤに引っ張られて、ズボンが膝まで脱げていたのだ。隼人は真っ赤になり、慌ててズボンを直そうとする。
「ッシ!」
ユーヤに尻を蹴り飛ばされる。痛みと羞恥に、隼人はくぐもった悲鳴を上げた。
「きめーんだよっ! しね! 死んでわびろ! リュードーだって、きめぇってたんだならなあああぁ!」
「――!」
隼人は心臓がすくみ上がった。
龍堂くん! 隼人は手を伸ばし、必死に這って逃げようとした。どん! と、ユーヤが腰の上に乗りかかった。拳を振りかぶるのが見える。
「離して!」
「シネッシネッシネッシネーッ!」
ユーヤの目は、完全に据わっていた。
物を壊すように、殴りつけられ、隼人は痛みに身を硬くするしかできない。
龍堂くん、龍堂くん……!
生理的な涙にまじり、恐怖の涙が隼人の目からあふれ出した。遠巻きに皆が、自分たちを見ているのがわかる。
ユーヤの叫び、周囲の無関心と享楽の満ちる教室の中。
隼人はひたすら孤独だった。
「変態野郎ぉおおおおッ!」
突進の勢いのままに、隼人の顔面を殴り飛ばした。隼人は吹っ飛ぶ。ひどい音を立て、机が倒れる。悲鳴が上がる。集めた紙が宙に舞った。ユーヤも反動で転がりこんだ。
「うっ……!」
痛みに隼人はうめいた。倒れた机の足が、胴体に食い込む。バサバサと紙が、舞い落ちてきた。辺りは白まみれになる。机の足を避け、隼人は起き上がろうとした。
しかし、そのときには、もうユーヤの足が振りかぶられていた。
「らああああああっ!」
咄嗟にかばったことで顔に直撃は避けられた。また、隼人は机の海へと逆戻りする。何とか身をかばった隼人の腰に、ユーヤの蹴りがモロに入る。
痛みに火花が散り、息が詰まった。
「ッシ! ッシッ!」
息を吐いて、何度もキックボクサーのように、隼人を蹴り飛ばす。舞い上がる紙もお構い無しに蹴る。一度、的が外れて、机の足に当たった。ごいいんと激しい金属の音がして机が転がっていった。
「ってええああああ!」
痛みに足を抱えたと思うと、ユーヤは隼人を睨みつけ、今度は飛びかかり殴りつけにかかった。
「てめえええ! わああああーっ!」
余りに過剰な攻撃に、辺りは静まり返っていた。非現実的さに、乾いた笑いさえ漏れる始末だった。
「キモい小説書きやがって! この変態野郎っ! ホモ野郎! きめぇんだよっ! リュードーに謝れっ!」
ぼこぼこに隼人を殴り飛ばしながら、ユーヤは狂ったように叫んでいた。
隼人は必死で自分の身を守っていたが、龍堂の名前に、意識がとられた。
まさか……!
咄嗟に隼人は激しく転がった。ユーヤの不意を突き、包囲を抜ける。周囲から爆笑が上がったが、構っていられなかった。F組へ、隼人は扉へ向かう。
「逃げんじゃねえええええあっ!」
ユーヤの声と圧が、飛んできて、隼人のベルトを引っ掴んだ。全力のタックルに、隼人は引き倒され、床を滑った。
「きゃあ!」
「やだーっ」
女子の嫌悪の悲鳴が上がる。隼人は身を起こして、全身が熱くなった。ユーヤに引っ張られて、ズボンが膝まで脱げていたのだ。隼人は真っ赤になり、慌ててズボンを直そうとする。
「ッシ!」
ユーヤに尻を蹴り飛ばされる。痛みと羞恥に、隼人はくぐもった悲鳴を上げた。
「きめーんだよっ! しね! 死んでわびろ! リュードーだって、きめぇってたんだならなあああぁ!」
「――!」
隼人は心臓がすくみ上がった。
龍堂くん! 隼人は手を伸ばし、必死に這って逃げようとした。どん! と、ユーヤが腰の上に乗りかかった。拳を振りかぶるのが見える。
「離して!」
「シネッシネッシネッシネーッ!」
ユーヤの目は、完全に据わっていた。
物を壊すように、殴りつけられ、隼人は痛みに身を硬くするしかできない。
龍堂くん、龍堂くん……!
生理的な涙にまじり、恐怖の涙が隼人の目からあふれ出した。遠巻きに皆が、自分たちを見ているのがわかる。
ユーヤの叫び、周囲の無関心と享楽の満ちる教室の中。
隼人はひたすら孤独だった。
20
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

目標、それは
mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。
今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?



【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる