明日、君に会いたい【本編完結】

白崎ぼたん

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第五十一話 惨劇

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 目があった瞬間、ユーヤは弾丸のように突進してきた。

「変態野郎ぉおおおおッ!」

 突進の勢いのままに、隼人の顔面を殴り飛ばした。隼人は吹っ飛ぶ。ひどい音を立て、机が倒れる。悲鳴が上がる。集めた紙が宙に舞った。ユーヤも反動で転がりこんだ。

「うっ……!」

 痛みに隼人はうめいた。倒れた机の足が、胴体に食い込む。バサバサと紙が、舞い落ちてきた。辺りは白まみれになる。机の足を避け、隼人は起き上がろうとした。
 しかし、そのときには、もうユーヤの足が振りかぶられていた。

「らああああああっ!」

 咄嗟にかばったことで顔に直撃は避けられた。また、隼人は机の海へと逆戻りする。何とか身をかばった隼人の腰に、ユーヤの蹴りがモロに入る。
 痛みに火花が散り、息が詰まった。

「ッシ! ッシッ!」

 息を吐いて、何度もキックボクサーのように、隼人を蹴り飛ばす。舞い上がる紙もお構い無しに蹴る。一度、的が外れて、机の足に当たった。ごいいんと激しい金属の音がして机が転がっていった。

「ってええああああ!」

 痛みに足を抱えたと思うと、ユーヤは隼人を睨みつけ、今度は飛びかかり殴りつけにかかった。

「てめえええ! わああああーっ!」

 余りに過剰な攻撃に、辺りは静まり返っていた。非現実的さに、乾いた笑いさえ漏れる始末だった。

「キモい小説書きやがって! この変態野郎っ! ホモ野郎! きめぇんだよっ! リュードーに謝れっ!」

 ぼこぼこに隼人を殴り飛ばしながら、ユーヤは狂ったように叫んでいた。
 隼人は必死で自分の身を守っていたが、龍堂の名前に、意識がとられた。
 まさか……!
 咄嗟に隼人は激しく転がった。ユーヤの不意を突き、包囲を抜ける。周囲から爆笑が上がったが、構っていられなかった。F組へ、隼人は扉へ向かう。

「逃げんじゃねえええええあっ!」

 ユーヤの声と圧が、飛んできて、隼人のベルトを引っ掴んだ。全力のタックルに、隼人は引き倒され、床を滑った。

「きゃあ!」
「やだーっ」

 女子の嫌悪の悲鳴が上がる。隼人は身を起こして、全身が熱くなった。ユーヤに引っ張られて、ズボンが膝まで脱げていたのだ。隼人は真っ赤になり、慌ててズボンを直そうとする。

「ッシ!」

 ユーヤに尻を蹴り飛ばされる。痛みと羞恥に、隼人はくぐもった悲鳴を上げた。

「きめーんだよっ! しね! 死んでわびろ! リュードーだって、きめぇってたんだならなあああぁ!」
「――!」

 隼人は心臓がすくみ上がった。
 龍堂くん! 隼人は手を伸ばし、必死に這って逃げようとした。どん! と、ユーヤが腰の上に乗りかかった。拳を振りかぶるのが見える。

「離して!」
「シネッシネッシネッシネーッ!」

 ユーヤの目は、完全に据わっていた。
 物を壊すように、殴りつけられ、隼人は痛みに身を硬くするしかできない。
 龍堂くん、龍堂くん……!
 生理的な涙にまじり、恐怖の涙が隼人の目からあふれ出した。遠巻きに皆が、自分たちを見ているのがわかる。
 ユーヤの叫び、周囲の無関心と享楽の満ちる教室の中。
 隼人はひたすら孤独だった。


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