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二章第一節 一流警備兵イシハラナツイ、借金返済の旅
百九.警備兵vs女夢魔
しおりを挟む「んふふ、じゃあー……お姉さんからも攻めたげよっかなー? ウチ受けも攻めもどっちもイケるやん?」
紫っぽいピンク色のバリア的なものに身を包んだ変態がそう言って扇情的に笑う。
やはり、人語を普通に喋るレベルの魔王軍の魔物は一筋縄ではいかないらしい。いつだったか王都に現れたテロリストのなんとかと同じくらい流暢に喋ってるしな、何故か関西弁だけど。
と、いう事はあれと同じくらい厄介ってことか。あぁ、面倒くさい。
「たあっ!!」
俺がやる気をなくしていると、だもん騎士が空へと跳躍した。狙いは勿論、変態の魔物だ。
剣を構えている、直接攻撃にうつるらしい。
結構な上空にいる変態へと地面を一蹴りしただけで到達しようとしている、ふむ、やはり鍛えているだけはある。
もはや漫画の世界、人間じゃないな。
「イシハラ様が言うなアル! あなたが一番人間とは思えないネ!」
骨っ娘から突っ込みがとんでくる。
ふむ、ムセン(突っ込み役)がいないとボケが飽和状態になってしまうのではないかと思っていたが思わぬところに突っ込み役がいた。
「はぁっ!!!」
変態の下部からすくい上げるようにだもん騎士は剣を振るう。
「たっぷり濡らせてあげるやんね、んふふ」
【女夢魔(サキュバス)技術『愛液体(ラブローション)』】
「!! っく!?」
「アクアっ!!」
変態魔物の身体から出てきた謎の液体が上空に跳んでいただもん騎士に浴びせられる。粘液のようなものに濡らされ怯んだだもん騎士は勢いを失い、そのまま地面へと落下した。
ドサッ!
粘液のようなものに包まれたおかげで受け身をとれないまま落下してもさほどダメージにならなかったようだ。しかし、全身がヌメヌメになったせいなのかだもん騎士は嫌悪感を表情に滲ませている。
「くっ……何だこれは……気色の悪い……だが、こんなもので動きが封じられることはないっ! 嘗めるなっ!!」
「もう、そんなにがっつかんといて? ゆっくり、じっくり、そっちの方が実は気持ちええんよ?」
ビクンッ!
「やぁんっ!?」
突然、だもん騎士は奇声をあげた。それと同時に痙攣でもしたのか身体が一瞬跳ねた。
「ど……どうしたネ!? アクアッ……」
「わっ……わからんっぅ……か……からだとっ……気持ちがっ勝手に………ぃんっ……!?」
「んふ、いっぱいいっぱい気持ち良くなってええやん? この技術は濡れた相手をめーっちゃ感じさせる技術やねんで? キレイな顔がとろけていく様……お姉さんにいっぱい見せてぇな」
「んんぅっ……!! はぁっ……はぁっ……はぁっ……はぁっ」
だもん騎士は悶えながら苦しそうにしている。
なるほど、あの魔物はサキュバスとかいうやつか。なんか18禁的な攻撃をする魔物だ、そういえば羽根といい角といい尻尾といい地球で見た事あるような感じだ。
「ど……どうしたアル!? アクアが何か苦しそうネ?!」
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……ナ……ナツィィ……」
だもん騎士は身体を両腕で包むような感じで目にはうっすらと泪を浮かべていた。そして、人の名前を呼ぶなりよろよろと俺に近づいてきた。
「はぁ……はぁっ……だっ……めぇ………からだがっ……勝手にっ……」
だもん騎士は顔を紅くし、潤んだ綺麗な蒼い眼でじっと俺を見つめる。
「どうした? 大丈夫か?」
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ…………………………………………んっ!」
そして、いきなり俺の頬を両手で掴み、凄い勢いでその薄く赤い唇を俺の口に重ねた。
「!!?? ひゃあっ!!? なっ……何やってるアルか!? アクアっ!!?」
その光景を見た骨っ娘は両目を手で覆い隠した。
ふむ、ほうやら(どうやら)らもんひしは(だもん騎士は)はきゅらす(サキュバス)のひじゅつ(技術)にやはれて(やられて)おかしくなっているらしい。
やはりひゅうはっひんへきな(18禁的な)ほうへひをふる(攻撃をする)魔物だということだな。
「なんネその技術っ不健全アルっ!!……ていうかイシハラ様冷静すぎネ!! こんな時まで実況しなくていいアル!! ひやぁっ!? そんなに舌を絡めながらっ……!?」
「んふふ、お姉さんにじゃなくていしはら君にいったってことはーそういう事やね? ちょっと嫉妬してまうなぁ……」
わへのわはらない(訳のわからない)事を言いながらへんはい(変態)は地上に降りてきた。
らもんひしは(だもん騎士は)俺の首に手をまわしてさはに(更に)激しく唇を重ねあはせる(合わせる)。
ていうか、喋りにくい。
「おい、落ち着けだもん騎士。こんな事をしている場合じゃないだろう」
「…………………………………………はっ!!?……え?……一体私は何を……え? ナツ……イ…………」
ようやくだもん騎士は正気を取り戻したようだ。
が、ボーッとしたまま俺の顔を見たまま動かなくなった。
そして少しの間をおいた後、突然顔を更に紅くさせてわけのわからない表情をした。
「………キッ………キャアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?」
と思ったら奇声をあげてその場にうずくまった。忙しい奴だな。
「わわわわわ私は一体何をっ!? 何故っ? 何でっ!?」
どうやら混乱しているようだ。
変態魔物め、人を操ったり無気力にさせたり混乱させたり。多彩な状態異常を扱える魔物のようだ。
「いや……たぶん混乱してるのは違う原因だと思うアル……けど、厄介な精神異常系技術を駆使するのは間違いないネ!」
「んふふ、そうやで? ウチが得意とするのは【魅了】……人は何かに【魅了】されるとそれの言いなりになり……欲望を剥き出しに……欲望を吐き出した後は虚無になるんや………こんな風に」
【女夢魔(サキュバス)技術『投げチュー』】
「!?」
----------------------------
・リィ・シャンシャンは【魅了】された!
----------------------------
「あ……リリスさまぁ……アル……」
変態が投げキッス的な動作をするとハートマーク的なものが出てきて骨っ娘に直撃した。
するとどうだろう、骨っ娘は変態に骨抜きになり。まさにただの『っ娘』になって変態にすり寄っていった。
「んふふ、ウチの可愛さならではの成せる技術やね……この技術でウチは世界中の人間を魅了させてやりたいんよ。それがウチの使命なんや……」
パチンッ
「……はっ!? 今……ボクは何を……? はぁ………」
変態が指を鳴らすと骨っ娘は正気に戻った。
しかし、脱力感に襲われたように地面に座りこんでしまった。
「さぁ、いしはら君は骨抜きになるとどんな感じになるんやろね?」
変態魔物はターゲットを俺に絞ったようで俺へとゆっくりとした足取りで近づいてくる。もうだもん騎士や骨っ娘には目もくれない。
そして、あまりにも近すぎる位置で、というか身体の至るところを俺に密着させて変態は止まった。
「はぁ……はぁ……き……危険ネ……この技術……力が入らないアル……いくらイシハラ様でも……危ないネ……」
「ぅぁぁ……わ……私は何ていう事を……婚前前に……自ら……女性から唇を重ね合わせるなど……しかも……初めてだったのに……あんなに貪(むさぼ)るように激しく……こ……こんな形で……もっとナツイとは愛を育んだ上でするべきだったのに……リィ君! ナツイは私の事をはしたない女だと思わないだろうか!?」
「し……知らないネ……取り乱してる場合じゃないアルよアクア……同性のボク達でさえ……あの魔物に魅了されたアル……いくらイシハラ様とはいえ……男アルよ……イシハラ様がやられたら……」
「……ふっ……そんな心配は無用だ……戦闘の技術面でもあのような魔物に遅れを取るわけがない……それに、ナツイの精神を見たのだろう? ナツイがあんな娼婦のような魔物に魅了される事など断じてない」
「……そ……そうアルね……食べ物の事しか頭にないイシハラ様が女に骨抜きになるわけがなかったネ……」
【女夢魔技術】
「んふふ、勘違いしてるやんね? 人は必ず何かに感動したり何かに心奪われたり何かに夢中になるもんや……綺麗な景色……美しい料理……荘厳な建造物……豪華絢爛な内装……絵画、服、武器、何でもええ。【魅了】ってのは女の子が好きであれば【魅了】されるんやない……心を動かされる何かを持っていればええやん……たとえ女性に興味が無かろうと……」
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・イシハラナツイは【魅了】された!
----------------------------
「「!!?」」
「お姉さんからは、逃れられへんよ?」
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