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第一章 一流警備兵イシハラナツイ、勤務開始
八十六.おかし
しおりを挟む「と、いうわけでムセン。魔女になってみてくれ」
イキリキノコ達がいなくなり、『マフィンフィールド』には俺達とキノコの取り巻きじゃない貴族クラスと一般民クラスとやらが残っている。
一般民クラスは魔法使い的なものや剣士などに変身し、大人しく『技術』を試している。
ルメットは半裸で街へ繰り出したイキリキノコ達を追いかけて行ってしまった。
俺達はルメットに頼まれて一時、残った生徒達の面倒を見ている。
仕方あるまい、キノコ達を半裸で外に追いやったのは俺だしな。戻ってくるまで暇なのでムセンに魔女になってもらいテレポート技術を試してみる事にした。
それにしても『マフィンフィールド』ってとても美味そうな夢のある空間だな。
「イシハラさん、『マフィン』じゃなくて『アフィンフィールド』ですっ! そして何が「と、いうわけで」なんですかっ!?」
「仕方あるまい、俺は男だから魔女にはなれないんだ。それに本当に魔女がテレポートを使えるかどうか実験してみなくては」
「確かにそうですけど……私、魔女とか魔王だとかの想像が全然つきませんよ?」
そうか、こいつはそういった魔族的な概念が無い世界から来たんだった。じゃあ想像するのは無理だな。
「い、いえっ! イシハラさんがせっかく頼んでくださったんですから教えて頂ければ私頑張りますっ! その【魔女】というものを教えてくださいっ!!」
「別にエメラルドにやってもらってもいいけど」
「ナツイ様……申し訳なく感じます……わたしも書物で読んだ以上の想像はできないか、と思います……それにわたしは『技術』の使い方もわからないのです……使用した事もありませんので……しかし……ナツイ様が望むのであればわたしも変身させて頂きますっ!! 『技術』も是非使ってみたく望みますっ!」
そうか、エメラルドは今まで職業に就いた事がないから技術の使い方もわからないのか。
ウテンは協力しないだろうし、ミントとやらもまだ学生だし正しく魔女に変身できる女性がいないな。
まぁいいか、とりあえずムセンとエメラルドの二人に試してもらおう。俺は地球のイメージの魔女の概要をありったけ伝えた。
………
………………
「……不思議な術を扱い、人に害を及ぼす女性を【魔女】と呼称するのですね? イシハラさんの想像する魔女というものはわかりました。何となくイメージが湧きました」
「わたしもでございます。ナツイ様の世界の魔女とこちらに伝わる魔女の相違はあまりないように思います。変身してみたく思います」
二人は魔女のイメージが掴めたようで瞑想し始める。
すると、二人の周囲に光の粒子が現れた。
「おお」
ムセンとエメラルドは学生達と同じように鮮やかな光の粒子に包まれながら変身し始める。
まるで魔法少女の変身シーンのようだ。
二人の服が発光した後、形を変えて身を包んだ。
シュゥゥゥゥゥゥッ……………
どうやら完了したようだ、二人の服はヒラヒラした胸部を半分くらい露出させたようなドレスっぽい服装になっていた。
ムセンは白、エメラルドは緑。
スカートの丈はかなり短く、太ももが露になっている。かなり露出度の高い服装だ。
手にはまるで魔法少女のようなステッキっぽいものまで持っていた。
ふむ、これ【魔女】じゃなくて【魔法少女】じゃないか?
------------------------------------------
・ムセンとエメラルドは【魔法少女】に変身した!
------------------------------------------
「「……き……きゃあああああああああああああああっ!!?」」
自分の変身した服装を見たムセンとエメラルドが体を隠しながら悲鳴をあげた。
「何ですかこれっ!? 想像したものと全く違いますよっ!? こんな破廉恥な装備なんか想像してませんからっ!」
「わ……わたしもでございますっ! ナツイ様っ!! 違いますよっ!? このようなはしたないお姿になりたいなど微塵も想像しておりませんからっ!」
確かに二人は地球のアニメで見るような可愛い感じだけど露出度の高い魔法少女っぽい姿になっている。これはどういう事だろうか?
俺は魔法少女の事なんか二人に一切伝えてないのに。この二人が魔法少女なんてイメージできるわけもないしな。
「ぁ………ぁのぅ……ナツイさん……」
「ん?」
なんか行商人っぽい格好になっているミントとやらが話しかけてきた。背中にはどでかい鞄を背負っている。
変身したのか、しかしここは戦闘職にしかなれないのになんで行商人になれるんだ?
「ぁ……ぇっとこれは……【白の調合師】と呼ばれている戦闘職業なんです……回復薬を仲間に調合したり……魔物に効果のある薬剤を戦闘中に使用して援護をする……」
ふむ、調合師。そんな職業もあるのか。
「それで? どうした?」
「ぁの………たぶんここでは【魔女】にはなれ……」
「悪い子はいね~~がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
「ひぃっ!!?」
「「きゃあああああっ!!?」」
ミントとやらが話し始めると突然、横から黒いフードを頭まで被った何者かがなまはげのような台詞を言って俺達に襲いかかってきた。
ミントとやらも驚いたようでビクッと体を弾ませる、ムセンとエメラルドは再度やかましく悲鳴をあげた。
「あはははっ!! ビックリした!? アタシアタシ!」
老婆の魔女みたいな格好をして現れたのはルメットだった。いつの間に戻ってきてたんだ? 全く気づかなかった。
「ルメットさんっ!? 驚かさないでくださいっ! いつの間に戻ってきたんですか!? そしてその格好は何ですかっ!?」
「今だよー今っ!! これでしょ!? イシハラの言ってる【魔女】って!! アタシも変身してみたよ! どう!? 似合う!?」
ふむ、ルメットが魔女に成ってくれていたのか。
確かにイメージ通り、壺の中で紫色の液体をねるねるねるねする老婆の魔女っぽい。
「あははっ! 何それ失礼しちゃうっ! アタシはまだ艶のある二十代だよっ!!」
「どうでもいい、それよりテレポートを使ってみてくれ」
「合点っ!! んんんんんっーーーー! シュバッ! どう!? できた!? 違う場所に移動した!?」
「ふざけてるのか、全然できてないぞ」
「えーー!? これが全力だよ!? 待って! 今ステータス見てみるから!!」
ルメットは自分のステータスを開き、技術を確認している。
「んーーー……………っ、ない!! テレポートなんてどこにもないよ!色んな属性技術はあるけど! 面白そう! これとかっ!」
【炎獄の魔女技術『ヘル・オブ・ジャッジメント』】
ルメットが魔女の技術を使うと至る場所から火柱が立ち昇り、空間を灼熱に変えた。火柱達は唸り、スパークを生じさせながらあちこちを破壊し尽くしている。割れた地面からは更にマグマが溢れ出して草木を燃やし尽くす。
「きゃあああああああああっ!!? ルメットさんっ!! 何をやっているんですかっ!!?」
「ごめーーんっ!! こんな強くするつもりはなかったんだけどさー! 止め方わかんないからみんな退避っ!!!」
辺り一面は火の海と化し、修復が追い付かないほど燃え盛った。生徒やムセン、エメラルドはあたふたしながら退避している。
ふむ、どうやら魔女にはテレポートは使えないようだ。
念のため検証しておいて良かった、魔女勧誘に無駄な時間を使うところだった。じゃあ別の職業を探してみるか。
「イシハラさんっ! 呑気にしてる場合じゃないですよっ! 逃げてくださいっ!」
なんか辺りから機械の壊れるような音が聞こえる。確かにさっさと立ち去ったほうがよさそうだ。
生徒達もキャーキャー言いながら避難している、ふむ、懐かしい。
学生の時やったな、避難訓練。
まずは防災頭巾を被らなければ、そして、おさないかけないしゃべらない、だ。ん、まずいな。防災頭巾持ってないぞ。
「なにをやっているんですかっイシハラさんっ! 早くこちらへっ!」
俺の手をムセンが強引に引っ張った。
俺はおさないかけないしゃべらない、を守り、無言でついていった。
「……………」
一人、ミントとやらが何かを考え込んでいた。そういえばさっき俺に何を言おうとしたんだろうな。
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