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第一章 一流警備兵イシハラナツイ、勤務開始
■番外編.王王パニック※【魔王視点】
しおりを挟む<ウルベリオン王都.冒険者ギルド内食堂>
「…………」
ふーん、ここが冒険者ギルド……魔物とかを退治して報酬を得る職業を生業とする人間の集まり、ね。
武器防具に身を包んだやつが多いわ、一応紛れ込むためにそれなりに冒険者っぽい服装をしてきたけど……誰も何とも言わないわね。
全員が顔見知りじゃないってことかしら……確かにこの食堂だけで五十人は人がいるけど、それってセキュリティ関連からするとどうなのかしら、ね。
今まさに、ここに冒険者じゃないアタシが紛れ込んでるって言うのに。危機感とかないのかしら?
それとも、不審者の一人くらい容易に追い出せるってことかしら?
人間って意外と呑気なのね。
前回の魔王戦争で勝ったからって調子に乗ってるのかしら?
それとも、聞いた通り勇者とやらに依存しきっているからかしら?
ま、どーでもいいわ。アタシは冒険者になるためにここに来たわけじゃない。情報を得るために来たのよ。
そうやってアタシが慣れない人間のお酒を少しずつ口にしていると、隣に座っていた弱そうな男女の冒険者が料理が来た事をきっかけに大声で話し始めた。
「どうしたんだ? ルレリア、呑まないのか? せっかくまとまった金が入ったんだから贅沢にいこうぜ」
「そーだよー、まさか隣の国の兵士さん達があんな洞窟にいるなんてねー。王女様が行方不明だったなんてさー」
「そうそう、それで『盗賊団と警備兵と名乗る謎の人物にさらわれたかもしれない』って伝えただけでこんなにお金もらえるなんてな、色々予想外な事だらけだったけど……俺達の初仕事は大成功だったんだ。盗賊団のリーダーは捕まえた事だし」
「………それもあの謎の警備兵が倒したのを渡されただけじゃないですか……それにその警備兵も盗賊団の残党も結局見失いましたし……私達は何もしていません……」
「まぁ確かに何もしてないねー、でも王女様は無事だったみたいだし良かったじゃん」
「それであの警備兵の人は何者だったんだろうな?」
「さぁー?」
冒険者達が話していると突然騒々しい足音が扉の外からバタバタと聞こえ、扉が開かれた。
「おい! 新たな十二騎士団入りするやつが決まったらしいぞ!! なんでもこの王都の警備兵らしい!! 名前は……【イシハラ・ナツイ】だってよ!!」
「「「………警備兵……?まさか………」」」
周囲がざわめき、隣にいた冒険者達が何かに動揺した様子で持っていた陶器を床に落とした。
意外と早く見つかったわね、ま、どーでもいいわ。ぶらぶらと会いにでも行きましょう。
「適当に待ってなさいね、イシハラナツイ」
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