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第一章 一流警備兵イシハラナツイ、勤務開始

■番外編六十九.王女エメラルド ※エメラルド視点

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 ◇【王女エメラルド】視点

~~~~~~

-7年前-

<シュヴァルトハイム城.一室>

「お母様!? これは何なのでしょう!? わたし、とても気になるとございます!!」
「本当にエメラルドは10歳になっても好奇心旺盛なのね、物事に興味を持つ事は素晴らしい事よ。将来はきっとおてんばさんになるわね」

 私は小さな頃からお父様やお母様にずっと可愛がられてきましたでございます。兄様や姉様も少し意地悪でしたけど、仲睦まじく……本当に仲の良い家族でした、と思います。
 お父様やお母様は王族としての公務で忙しくしていましたが、空いた時間に家族は必ず一緒にいた、と感じます。

「しかし、癖のある言葉遣いは治らないな。勉学はきちんとこなしているのか?」
「そう聞いてはいますけど……もう少し言語の語学時間を増やしますか?」
「……いや、それよりも『職業適性検査』をしよう。もうエメラルドも10歳だ。そろそろ適性に合った技能訓練を行ってもいいだろう」

 お父様とお母様は私の言葉遣いを聞いて、そう言いました。

 王家では出生時、幼少期、学童期と細やかに職業適性検査を行い……その適性の職業の専門分野の方を雇って、その技術を幼い頃から伸ばすよう義務付けられているのです。
 出生時や幼少期はまだ発育が充分ではないので、検査結果が出ない事もあります。平均では10歳ほどから……何の職業が向いているのかはっきりしてくると私の国の教皇様は仰いました。

 その言葉通り、姉様や兄様は10歳の適性検査で既に自分に向く職業を見つけていました。
 長女のシュルリア姉様は天職の『女王』、長男のヴァイザル兄様は『創造主』という珍しい職業の他……『魔術師』『錬金術師』などの多くの適職、第二王子である次男のルイハイト兄様は『公爵』など……王族の名に恥じない職業が顕現した、と聞いてます。

「王族に恥じない職業であればいいのだがな……」
「既に継承権はシュルリアにあるのだから何だって良いではないですか、ねぇエメラルド。エメラルドは将来何になりたい?」
「お母様! 私は何でもいいと感じますでございます! 自分の好きになったものの職業に就きたいと感じますでございます!」
「ふふ、そうね。お花屋さんでも石細工職人でも冒険家でも何でもいいわよね? 王族としての名があれば何処ででもやっていけるわ」
「ふむ、王女の花屋か……平民職ではあるが可憐なイメージだ、中々面白そうではある」

 シュヴァルトハイムでは王位継承権を出生順や男女よりも、職業適性により決めるしきたりであったため……すでに次期王位はシュルリア姉様に決まっていました。
 ですから、お父様もお母様も気兼ねする事なく……好きな職業に就いたらいい、と心から思っていてくれていたように感じます。

 私は優しいお父様やお母様のもとへ産まれて幸せに感じていた、と判じます。

 私の職業適性の検査結果が出るまでは。

----------------------------
--------------

「…………陛下、エメラルド王女の職業適性結果が出たのではございますが………これは………」

 王室の職業監査の方が、私の職業適性の紙をお父様とお母様に見せた時……お父様とお母様は……絶望の表情ともとれる顔をしていたように感じます。幼い年頃ながらに……私は、その時の表情を今でも忘れる事ができません。

「………あぁ…………そんな…………」

 お母様は両手で顔を覆い、膝から崩れ落ちました。
 お父様は険しい顔をして職業監査の方に言いました。

「……………この結果は闇に葬れ、外には絶対に漏れないようにしろ。もしも情報を漏らした場合……即刻処刑するものと伝えよ。そして、エメラルドを二度と部屋から出すな。……軟禁して外部との一切の接触を禁ずる、良いな?」
「は……はっ!!」
「お前も良いな? 王妃として……王族の名誉を守る事に努めろ」
「……………………はい」

「………? お父様………お母様…………?」


 そして、私は自分の部屋に閉じ込められました。
 それから食事など……何不自由なく生活はできましたが、お城からは絶対に出させてもらえませんでした。
 お父様とお母様も……顔を見る事はありましたが……それからまともにお話しした事はないように思います。

 お父様とお母様の私を見る目は、冷ややかなものに変わってしまった、と私は……そう感じます。

----------------------------
--------------

-2年後-

 私は与えられた書物だけを読み、いつも部屋に閉じ込もっていました。あれから勉学も、中庭での運動訓練もその一切が行われませんでした。兄様も姉様も……それから私を一切見なくなりました。

 長い1日。
 しかし、それでも何故か私は苦になりません、と感じました。
 普通であれば精神を病むような、誰とも接触の無い日々。それでも私はまだ見た事のない何かを書物だけに見出だし、その1日を明るく何度も過ごしていました。

「エメラルド様、お食事をお持ち致しました」
「はい、お入りくださいと感じます!」

 唯一、人と接するのは私のお世話をしてくれている侍女の方とだけ。
 侍女の方もお食事とお召し物を運んでくださるだけでしたが……その目は冷たいというよりかは……哀れみを抱いたような目を私に向けていたように感じます。

 私はどうしても一つ気になる事を思い切って侍女の方に聞いてみました。

「……私は……一体、何の職業に向いていたのでしょうか?、と感じざるをえません。教えていただきたいと強く願います!」

 侍女の方はそれを聞いて、迷ったように見受けられましたが……周囲に誰もいない事を確認して……小声で私に言いました。

「…………実は……エメラルド様の適性結果の監査官達の会話を……偶然、耳にしてしまったのです……絶対に、口には出さないとお約束いただけますか?」

 侍女の方は……私を哀れんでなのか……告げてくださいました。

 私の職業適性結果は…………【天職の奴隷】である、と。






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