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序章第三節 石原鳴月維、王都警備開始
五十五.最適性武器
しおりを挟む「オラァァァァァァァァッ!!!」
勇者は叫びながらクソライオンに剣で斬りつける。
およそ生身を剣で斬りつけられたとは思えないような金属音がするがあのライオン、鉄ででも出来てるのか?
勇者の剣はライオンの皮膚、薄皮一枚すら通さず止められた。
余談だが勇者の持つ剣は超かっこいい装飾がされている。あの勇者には贅沢すぎる代物だ。
「……っ! かってぇっ……! なんつー固さだよ……っ!」
アホ勇者が弱いのかライオンが固すぎるのかしらんが、勇者が剣を押し込んでもクソライオンは一ミリも動かない。
「……あぁ? 誰だよおめーは? 今楽しんでんだから邪魔すんなや」
クソライオンは勇者の事をまったく意に介していないようだ。クソライオンの爪擊が勇者を襲う。
「がっ……!? 速っ……!?」
「勇者っ!!」
『ショック療法(ケアル)』
「痛っ!!」
ライオンに爪で斬られ、なんなくあしらわれた勇者をすぐに性格ブスが回復した。よし、ずっとそうやって攻撃&回復してればいつかは倒せるだろ。
「ゆ……勇者様が苦戦してる……そんなに強いのか……あの魔物……」
「やばいんじゃないか……? 俺達……勇者様が倒せなかったら……もう……この国は……」
「しかも……更に強い『魔王』もいる……勇者様が対抗できないんじゃ国どころか……世界は終わりだ……」
住民達は不安を抱き、ざわついている。ほら、お前らがさっさとライオンを倒さないからだぞ。
「あんたのせいなのん! オッサン警備兵! 勇者はあんたのせいで受けた傷が万全に回復してないのん! だから本調子が出てないのん!!」
「そうだぜオッサン! だからさっさと協力しろ! 勇者と共闘できる事を誇りに思って死ぬ気でやれよ!」
またもやわけのわからん事をバカ二人は言った。
「そうだぞ警備兵! さっさとやれ!」
「あんたのせいなんだから勇者様に力を貸しなさい!」
住民達も何か俺に向かってギャーギャー騒いでいる。
ふむ、なるほど。こいつらが隠れて様子をうかがってたり、俺を陰から攻撃してきた理由が何となくわかったぞ。
ピンチに駆けつけるヒーロー的な演出をつくりあげて勇者への信仰心を一層高めようとしてるわけか。つまり、国全体を相手どって恩を売ろうとしてるわけだ。チンピラに絡まれてる女を助ける演出をして惚れさせようとするやつと同じ事をしてるんだな。
凄いなこいつら、一国を巻き込んでそんな事をするなんて。規模がでかすぎるだろ。
さすがに魔物がこの国を襲ったのは偶然だろうが、それをチャンスと言わんばかりに好機を狙ったわけだ。
「(くっくっ……最近はこの国で豪遊しすぎて俺らへの不満も聞くようになっちまったからな、ここで一発でかい魔物を討伐すれば住民達も口を閉じるしかねーだろ!)」
「(そうなのん! アタシらの居場所をわざと流して魔王軍の耳に届くように仕向けたのん! あとは国が襲撃されるのを待つだけなのん!まさか幹部まで来るとは思わなかったけど……)」
「「((これであとは幹部を倒せば住民は俺(アタシ)らに平伏す(のん)))」」
「さぁ勇者っ!! ボーッとしてないでかかってこいや! もっと楽しもうぜっ!」
「ちっ……! 言われなくてもそうしてやるよっ!」
【天職勇者技術『七光剣』】
勇者は光輝く剣を構え、再度ライオンに斬りかかった。しかし、また鋼体に阻まれ傷一つつかない。
「さっきから何なんだおめーはよ! 今俺様は勇者と遊んでんだ! 邪魔すんじゃねえ!!」
「はぁ!? 誰も遊んでねぇよ?! 俺は魔物と遊ぶ趣味なんかねえ! 可愛い女の魔物ならともかくなっ!」
なんかすれ違いコントみたいなことになっている。もしかしてこのライオン、勇者の事を勇者と思ってないんじゃないか?
「うざってぇ!! どうせ勇者には効かねーんだ! ここら一帯爆破してやる! 周りの雑魚ども全員まとめて吹き飛びやがれ!!」
クソライオンは巨体をかがめ、光を放ち、放電しはじめた。どうやらまた爆破を起こそうとしているらしい。今までとは比べものにならないような規模の爆発を。
「ひぃっ……!!」
「ゆ、勇者様っ!! はやくっ……倒さないとっ……!」
住民達もその脅威を肌で感じとったのかおののいている。
「お、おいオッサン!! とどめはくれてやるっ! 早く倒せっ!」
「そっそうなのんっ! これはまずそうなのんっ!」
何好き勝手言ってんだこいつら、自分でやれよ。まぁこいつらじゃ仕留めきれないだろうけど。
しかし俺にも決め手がない。爆発は俺には効かないが、このままじゃこいつらが全滅、それどころか街も消し飛ぶな。ふむ、まいったまいった。
「イシハラさんっ!!!」
「ん?」
群衆の奥からムセンが登場し、俺の名を叫んで何か投げてきた。
また銃か? 二丁あったところでどうにかなるとは思えないけど。
パシッ
「!」
投げられた物を受けとり、手にとった瞬間。俺は直感する。
なんて手に馴染むのだろう。まるで何年も何十年も手にしていたような、そんな感覚だ。
初めて持つ物のはずなのに。もう何度も振っていたような、そんな感覚。
間違いない。ようやく見つかった。
これが俺の『適性武器』だ。
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イシハラは最適性武器『ライトセイバー』を手に入れた!
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