一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

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序章第三節 石原鳴月維、王都警備開始

四十七.隠し子

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<中央大広場>

「さぁ! 住民達は引くでおじゃるよ! 大階段に向かおうとした者は容赦なく斬り伏せるでおじゃるよ!」

 鼻毛丸と連れの兵士達は階段への道を塞ぐ。

「退くわけにはいきませんっ! 広場には子供もいるんですよ!? ならばせめて他に避難場所を見つけるべきではないのですかっ!?」

 ムセンはそれに抵抗するように、鼻毛丸達に食い下がる。

「残念ながら無いでおじゃるが……聞けば東西の門は魔物の減少が確認されたでおじゃるよ、代案というならそこから外に出て逃げるしかないでおじゃるな」
「まだ魔物達が攻めてくるかもしれないのにですか!? これだけの人数を安全に避難させるルートはあるんですか!?」
「そんなのは知らないでおじゃる、警備兵というならば自分達で守ればいいでおじゃる」
「………!」

 ムセンは言葉を無くし、プルプルと怒り顔で震えている。 
 はぁ、仕方ないな。行くとするか。
 俺はムセンと鼻毛丸の間に割って入った。

「……! イシハラさんっ……!」

 ウテンに頼んだ事は少し時間がかかる。それまでフォローでもしてやろう、あぁめんどい。

「……今度は誰でおじゃるか?」
「王の隠し子、ウルベリオン・フォン・イシハラ・ナツイだ」

「「………………は?」」

 なんか適当に嘘をついたらムセンと鼻毛丸がきょとんとした。こういう理詰めをしてくる相手に時間稼ぎをするには突拍子もない嘘八百を並べ立てるに限る。
 いや、嘘ではないな。ただ本当の事じゃないだけだ、いや、もしかしたら俺は本当に王の隠し子である可能性もなきにしもあらず、すべからず、ちはやふる。
 なにせ異世界召喚されてここの王の元にきたんだ、それはもう王の子供と言っても過言ではないのだろうか? 異世界召喚にはなんかしらの儀式が必要であってそれに王が立ち会ったのだからそれはもう父親といってもおかしくないわけであの召喚の間は分娩室のようなもので

 おっと、危ない。また全部口に出るところだった。

「何をバカな事を言っているでおじゃるか……隠し子? その発言……今が非常事態でなければ即死罪に値しているでおじゃるぞ」
「それが嘘ならな、だが、言い切れるのか? もし本当ならお前の方が死罪になるぞ」
「……そんなわけないでおじゃる、ウルベリオン王には男系の子息はいないでおじゃる、隠し子なぞもっての他で……」
「バカかお前。確認できてないから隠し子と言うんだ。王だって一人の男だ、我慢できない時もある」
「………」
「男系の子息はいないといったな? だったら次期王様は俺ということになる、そうなってくるとこの場の最高責任者は俺になるな」
「………」

 ムセンは黙って俺を見つめている。鼻毛丸も黙って考え事しているようだ。周りにいる兵士達も顔を見合わせ、ざわつき始めた。
 バカじゃないかこいつら、少し考えればわかるだろうに。もし本当に隠し子でもいきなり現れたやつに指揮権が移るわけないだろ。

 ただの時間稼ぎにすぎないが、これで本当に話がまとまるならそれに越した事はない。さっさと住民達を上に避難させて魔物をどうにかしよう。

「ん」

【王国騎士団長技術『浄化の光』】
【一流警備兵技術『危険予知』】

「きゃあっ!?」
「おじゃっ!?」

 突然、地面が割れる音が響いてムセンと鼻毛丸が叫ぶ。

 ふぅ、危ない危ない。何か眩しいと思ったら光の塊みたいな光線が頭上から降ってきた。ぎりぎり察知して避けたけど。
 近くにいたムセンと鼻毛丸は衝撃で吹き飛んだ、俺が避けたところには深い穴が空いている。

 そして、重厚な足音と共に大階段へ続く道の奥から重そうな鎧に身を包んだ男が姿を現した。どうやら攻撃してきたのはあいつらしい。

「何言いくるめられてんだ軍師さんよ、そいつが本物の隠し子かどうかなんて今は確認できねぇだろ。だったら引っ捕らえて牢にぶちこんでおきゃぁいいだけだ。今はアンタが指揮者なんだぜ?」
「むむ……確かにその通りでおじゃるな……あまりにも突飛な発言に少し混乱したでおじゃるよ」

「いや、嘘に決まってるだろ、馬鹿かお前ら」
「いたた……いやいや! イシハラさん! もう自分からバラしてしまうのですか!? 一体何のためにそんな嘘をっ……」

 仕方ないだろ、また新キャラが出てきたんだから。
 見てすぐにわかった。この鎧まんには出鱈目は通用しない、それどころかこいつはそれが仮に事実だったとしても躊躇なく攻撃してくるだろう。
 久々に見たな、こういうタイプのやつ。自分の信じた正義を執行するためなら味方だろうと平気で殺すタイプのやつだ。

「どっちでもいーんだよ、たとえそれが事実だろうと……俺様が決めた事に変更はねぇ。上に行こうってんなら魔物だろうが平民だろうが殺すだけだ」

「「「「ひぃっ……!」」」」

 大剣を抜いた鎧まんに睨まれた住民達が一斉に押し黙る。威圧されているらしい、最早住民達は諦めムードに入っている。

「……っ」

 言う時は言うタイプのムセンまでもが鎧まんには何も言わずにいた。きっと本能的な何やらで何をしても敵わないやつだと悟ったのだろう。
 仕方ない、こいつがいたらウテンに頼んだ事もパァだ。

「てめぇが誰であろうがどーでもいいが……面倒そうな野郎だ、早めに排除しといた方が良さそうだな……」


 鎧まんは俺に大剣を向けた。どうやらやる気らしい。

「こっちの台詞だ」

 俺も剣を抜いて、鎧まんに向けた。

「……何だそりゃあ? 何の真似だ」

 俺は何も握っておらず、手をグーにして向けていただけだった。そういえばデカ蜘蛛に剣取られて洞窟に置いてきちゃったんだ。
 ま、いいか。何とかなるだろたぶん。








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