一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

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序章第二節 石原鳴月維、身辺警備開始

四十三.十二色(クレバス)騎士団

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 ウテンは俺達に言った。

『ウルベリオン王都が戦場になる』

 ムセン、シューズ、スズキさん、エミリがその言葉の意味を頭の中で反芻(はんすう)しているようだ。誰も何も言わずウテンの次の言葉を待っているようにも見える。

「だからすぐに戻って力を貸してほしい、特にいー君。魔王軍と戦争するならあなたの力は必要」
「魔王軍とやらが街に到達するまでの時間は?」
「わからない。現在王国の十二騎士のうち三名が軍を率いて防衛地点の『ガレン砦』に向かっている。そこで時間を稼げればあと1日は猶予(ゆうよ)があるはず」

 十二人の精鋭である騎士団長達、そいつらが率いているとかいう騎士団か。だもん騎士も騎士団長だったっけ。
 だもん騎士も中隊長を倒せるくらいだし大丈夫だとは思うけど。
 だがウテンの言い方だと時間稼ぎくらいしかできないように聞こえるが。

「恐らく。確認された情報だと魔王軍の軍勢は野良魔物を含めると騎士軍勢の倍以上いる。しかも……魔王軍は四業幹部【テロリズム】が指揮を取っている」

 四業幹部ってのはお馴染み四天王とかそういうやつか。面倒だな。クク……奴は四天王でも最弱……のやつだったらいいんだけど。

「そ……その幹部とは一体……そんなに危険な存在なのですか?」
「当たり前、ムセン・アイコム。魔王に次ぐ危険な存在。『四業』と呼ばれる『悪職』に就く魔王軍四天王。その力は極めて強大。一国を生身で落とせる程」
「そんな……」
「もう既に住民の避難や各国への支援要請や高名技術者の戦闘配備をさせてはいるけど……それでもどうなるかはわからない」

「た……大変なのよ……お母さんがっ! 街がっ!」
「シャイナ……! リィナ……! 今すぐに戻りましょう!」

 エミリとスズキさんが血相を変えている。家族が街にいるんだから当然だろう。

「落ち着いて。馬車は用意してある。馬車なら街まで四時間ほどで着く。十二騎士団が足止めしていれば充分に猶予はある」

「わかった、行くとしよう」
「はい!」
「うん、わかったー」
「ぴぃ!」

 俺達はウルベリオン王都へ向け出発する。

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 大分行程を進めただろうか、おおよそ半分くらいの時間が過ぎた。馬車の中は重い沈黙に包まれている、まぁ今から戦争の渦中に飛び込もうというのだから仕方あるまい。エミリやスズキさんにとっては家族の命運もかかっているのだから尚更だ。

「ウテン、騎士達について知ってる限り教えてくれ」
「……イシハラさん……?」

 そんな中、俺はボーッと景色を眺めているウテンに聞いてみた。何故か、ムセンが意外そうな表情をする。

「……ウルベリオンの騎士は旧き慣わしにより実力重視の序列制度でランク付けされる。総勢一万二千いる兵士達から選抜された四千の騎士兵ーー更にそこから選出される【十二人の騎士団長】に騎士兵が割り振られ騎士団になる。それがウルベリオンの【十二色(クレバス)騎士団】と呼ばれる精鋭達」

 ふむ、その序列最下位がだもん騎士か。十二色と名がつけられているということはそれぞれに特色が与えられてるとかなんかそんな設定だろう。だもん騎士は【蒼色の騎士】か。武器も蒼い剣だったし。

「騎士達の逸話などあれば聞かせてくれ、今回防衛にあたっているのはどんな奴等だ?」
「ガレン砦に向かったのは序列第6位【翠の騎士ツリー・フォン・シャルロット】と第8位の【黄金の騎士ボルト・ライジングレヴァー】。そして偶然近くに居合わせた特別枠の【無色の騎士ミンネ】。いずれも魔王軍中隊長くらいであれば難なく退けられる実力者」

 翠に黄金、それに特別枠か。序列とやらも上の方だしなんとかなるんじゃないか。どんな技術とやらを持っているのか知らんが。

「翠の騎士は【創生(ユグドラシル)】という特別な技術を持つ、無から植物を生み出したり操る事が出来るらしい。黄金の騎士は幼くして【属性検定『雷』一級】を取得した『雷』の使い手。電光石火の剣閃で有名。【無色の騎士ミンネ】についてはあまり知らない、元騎士団長のジャンヌが見つけ出した優秀な人材としか」

 ふむ、よくわからんが漫画的な技を使えるという事だな。【木属性】と【雷属性】の騎士、中々に強そうで善き哉善き哉といった感じだ。

「……イシハラさん? どうしちゃったんですか……? 普段ならそんな事は気にも留めずに『興味無い、寝る』と言ってすぐに寝るか食べるかしかしていませんのに……」

 話の途中ーームセンが心配そうな顔をしながら最上級の無礼を俺に働く。心外にも程があるな、まぁ確かに全く興味は無いんだけど。
 俺はムセンを無視して話を再開する。

「つまりは信じられない位に優秀な人材が国を守っているんだろ?」
「……まぁそう。『十二色(クレバス)騎士団』は他国から見ても技術レベルは高いーー序列十二位のアクア以外は全員が天性の騎士才の持主」
「なら大丈夫だろ、それに確か王都には勇者一行もいるんだろう。会った事はないが勇者っていうくらいなんだから魔物退治は十八番だろう」
「いやいや!? これ以上ないくらい最低な出会い方を果たしましたよね!? 複雑な記憶障害でもお持ちなんでしょうか!?」

 突っ込み名人が何やら騒いでいるが、無視して続ける。

「王も有能そうだったし、避難措置くらい迅速に進めているだろう。つまりは街や母親は大丈夫だ、と言う事だ。わかったら小便を我慢してるみたいな顔してないで明日の宿題の心配でもしてろ」
「…………イシハラ………………」

 エミリにそう言うと、小便我慢顔がみるみるうちに安堵する表情に変化した。まさか馬車内にぶち撒けたのだろうか? 小学一年生の年齢なら致し方あるまい。

「そんなわけないのよ!! デリカシーの欠片もない慰め方するななのよ!!」
「少しは元気になって何よりだ」
「………全くあんたは…………でも、ありがとうなのよイシハラ。依頼を受けてくれたのがイシハラ達で……本当によかった……なのよ」
「まだ何も終わってないぞ、ちゃんと花を渡して喜ばせて飯食って早寝をしろ。そしてまた明日同じ事を俺達に言え」
「ーーうん、わかったなのよ」

 いつも通りとはいかないまでも、エミリの不安に包まれた様子は少し和らいだようた。いつまでも焦燥しきったような顔をされてたら堪(たま)ったもんじゃないからな。
 
「……イシハラさん……だから興味ないにも関わらずあれこれ聞いていたのですね……エミリさんのために…………」

 小声でなんか呟いていたムセンを見ると、頬を染めながら火照ったような眼で俺を見ていた。
 こいつも小便をぶち撒けてしまったのだろうか? 流石に16歳なら管理くらいしろよ、と若干引いた。
 
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