2 / 16
プロローグ
第2話 発端~早とちりの神様~
しおりを挟むそう、あれは一年前の出来事。
家族で鍋を囲んでいる最中だった。
祖父、祖母、父、母、姉、兄と義理姉、妹、猫に犬……そして僕。全員で。
そしたら鍋に魔法陣が現れ、そこに吸い込まれた、家族全員。
何を言ってるのかわからないと思うけど、僕もよくわからない。
すき焼きの最中に異世界召喚されたのはたぶん僕達が初めてだろう。しかも家族ごと。
~~~~~~~~~~~~~
気がつくと僕の目の前には十二才くらいの女の子が立っていた。
辺りは見た事もない景色で……だけど、何かにたとえようのない、言葉で言い表せないほど綺麗な空間。
「わわっ、転移魔法成功したのです! やったのです!」
女の子は無邪気にはしゃぐ。
長い金髪、可愛らしい顔立ち、Tシャツにオーバーオール。
(何……? ここ……? 僕はご飯食べていたはずだったんだけど……それに誰? この子……? 近所にこんな可愛らしい子いたっけ…?)
「あ! あなたが樹山ファミリーの次男『森(シン)』様ですね! 初めましてです! わたしは遊びを担当する神……【プレリリャ】と申しますです! 突然ですがあなた方『樹山ファミリー』は神々に選ばれ、あなた達の言語で言う『異世界転移召喚』される事になりました!」
【プレリリャ】と名乗る変な女の子は怒涛の勢いで僕に捲(まく)し立てた。
(こんな小さな女の子にまで……異世界系の話って流行ってるのか……神様系のおままごとしたいのか? 誰かわからないけど……とりあえず付き合ってあげるか)
僕はまどろむような意識の中、目の前の女の子のおままごとに話を合わせる事にした。
「えーと……どうして僕なんですか? いや、僕ら家族なんですか?」
「何となくです! 異世界転移転生は神々の間で頻繁に行われている遊戯なのです! 選ばれる人は大体ランダムか神に見初められた人、又は潜在能力がズバ抜けている人……って感じなのです! 今回は転移先の世界が世界なだけに……完全ランダムにしてみたのです!」
「……宝くじに当たったみたいなものか……それで? その転移先の世界って?」
「樹山ファミリー様達の転移先は……全てが規格外の世界『インフィニティ・グランデ』!! ありとあらゆる……いわゆる超超能力者達があちこちに蠢(うごめ)き、更に人間以外のモンスターも蔓延(はびこ)るまさに地獄!! そんな生物達が覇権を争う群雄割拠の大乱の世界なのです!!」
いかにも子供が好きそうな設定だ。
かくいう僕も嫌いじゃない、本当にそんな世界があるなら……怖いけどワクワクする。
「この世界……実は神々の誰も転移先として選ばないほど問題視されている世界なのです!!」
「どうしてですか?」
「転移転生しても誰も生き残れないのです! 記録では……今まで13526人この世界に転移転生しましたが……1年ももたず、みな死亡してます!」
「なにそれ……」
「わたしは間違って『インフィニティ・グランデ』を選んでしまったのです! 変更はきかなかったのです! だからせめて運任せでランダム方式でラッキーパンチを狙って抽選したところ、見事樹山ファミリー様が選ばれた所存なのです!」
それは見事っていうの?
僕達にとっては運悪く地獄行きのチケットを押しつけられただけのような気がする。
「頑張ってくださいなのです!! 勿論、転移転生させる際……取り決めとしてあなた方の世界で『チート』や『ギフト』『スキル』と呼ばれる超能力を授ける事ができます!! 所望されるなのですか!?」
「はい、それは勿論……というかそんな世界に能力無しで行ったら即死亡してしまうでしょう……」
「それはわたしにとっても都合が悪いなのです!! かしこまりました! 『チート』能力は抽選方式か……その人が持つ潜在力の限界突破方式か……お望み通りの能力かになりますが……どれになさいますか!?」
抽選か、潜在力の上昇か、望み……か。
まず抽選は嫌だな……神様が与える能力なんだから外れスキルでも実は……みたいなのがあるかもしれないけど……ランダムってのはちょっと不安だ。
潜在力も……僕は何の取り柄もない普通の中学生だし……何か大きな力が眠ってるとも思えない、却下。
「……いや、どう考えてもお望み一択じゃないですか?」
「お望みの能力をご所望で!! かしこまりました! しかし、これはお一人様につきたった一能力しか与えられないなのです!」
「え? 他のだったら何個も能力貰えたってことですか?」
「はい!! しかしもう決定してしまったので変更は不可なのです!」
先に言ってください、と不満を言いかけたけど……まぁ、おままごとなんだから別にいいか、と納得する。
小さい女の子が考えたにしては色々と細かい設定だ。
「では! 樹山ファミリー代表の『樹山森』様!! あなたが所望する能力は何でございますか!? ちなみに考える制限時間は10秒です! よーいスタート!」
ええええええ!?
何もかもが説明不足すぎじゃないじゃないですかね!?
と、僕は混乱しつつ真剣に考える。
(能力…能力……たった一つで無双できる……規格外の世界を生き残れる能力………!!)
「9~8~7~……」
そういえば……転移するのは僕だけじゃなく家族全員って言ってた。
こんな突拍子もない話に……異世界のファンタジーにすぐ適応できそうなのは……中二病の妹を除いて僕しかいない。
もし……ファンタジー世界の事なんかよく知らない父さんや母さん……じいちゃんばあちゃんなんかがそんな世界に放り出されたら……絶対生き残れない。
(そんなの……絶対に嫌だ。僕が……僕が絶対に、守らなきゃいけない。守りたい)
「3……2……」
僕の望み、自然と湧き出る望みはたった一つだった。
カウントダウンされている事もあってか、僕は望みを大げさに叫んだ。
「家族を、絶対に守れる力……それが欲しい!」
「【絶対的な家族に守られたい】、それがシン様のお望みなのですね! かしこまりました! それでは規格外世界『インフィニティ・グランデ』へ、よい異世界ライフを!」
十二才くらいの神様の耳は色々とおかしかった。
耳というか……もうなんか全てが色々と雑だった。
(違う違う違う!! 言葉は似てるけど意味が真逆!)
すると、神様の祝福みたいな効果音と光が僕を照らし……僕の視界には何か文字が出てきた。
------------------------------------------
◇『神様からのギフト』
・【絶対的家族の守護】の恩恵を授かりました。
------------------------------------------
(何これ!? なんか意識の中に文字が出てきた!? あの女の子色々と説明不足だし、早とちりしすぎ!)
…………まぁ、冷静に考えるとおままごとだし……そもそもこれ夢だろうし慌てる事ないか。
もしこれが本当の話だったら一大事だけど……ははは、ないない。異世界転移かぁ、もしできるなら一度でいいからしてみたいな──って、そんな事考えてる場合じゃないか。僕、受験生だし……現実逃避してる場合じゃない。早く起きて勉強しないと。
と、薄れゆく意識の中で僕は呑気にそんな事を考えていた。
~~~~~~~~~~~~~
こうして目覚めた僕達の前に、超広大なファンタジー世界での生活が待ち受けていたのだった。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい
司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】
一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。
目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。
『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。
勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】
周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。
--------------------------------------------------------
※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。
改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。
小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ!
https://ncode.syosetu.com/n7300fi/
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件
後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。
転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。
それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。
これから零はどうなってしまうのか........。
お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる