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第二章 命名研究機関との戦い
第三十一話 人魚と王女
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「えーと、これをこうして…」
「簡単だにゃん!みてみて!文字を打ってみたよぅ!」
こころとエレがスマホを持ち二人ではしゃいでいる。
女神と別れた俺とアイは港町への道中、リーフ達と合流し野営地に最適な場所を見つけ野宿していた。
辺りは暗闇、パチパチと音をたてる焚き火と星空だけが光源の静かな草原の中。
傍らには澄んだ川が流れる、絶好のキャンプ地点だった。
皆は配られたスマホの操作に夢中になっている。
「こうしてっと…じゃあせんぱいっ!でんわしてみますね」
こころは輪を離れ、俺の番号をコールする。
『えーと、これでいいのかな?せんぱい聴こえます?』
『あぁ、聴こえるよ』
『ほぇーすっごい!本当に声聴こえますよっ!』
こちらの文明の事を俺の記憶を読んで知っていたこころが誰よりも早く順応する。
「伝えたい事をこれで送れるのかにゃ!?すごいな~リーちゃん届いた?」
続いてエレもスマホの操作に慣れたようだ。
「わからん」
「全然できない…練習してたのに…」
逆にエルフ姉妹は苦戦中のようだ。
「自然と共存するエルフにとって機械は慣れ親しまないものでな」
「エルフの里には機械は一切無いもんね」
なるほど。
ピロン
その時俺のスマホにメールのようなものが届いた。
神々のネットワーク関係は一体どうなっているんだろう。
差出人は、一人…輪の外の高台で見張りをしていた佰仟だった。
『ナナさん、君と町で熱い口づけを交わしてから平静を装っているが動悸がおさまらない。君にとっては能力を得る為にした事であろうが俺にとっては君と出会ってからした事、感じた想いの全てが初体験だ。思えば酒場で出逢ったあの日~(以下略)』
「……」
メールだと饒舌な、そして意外と使いこなしている佰仟だった。
イケメンじゃなかったらこの長さでその本文は色々とやばい。
「キララは本当にいいのか?」
「結構であります、そういう得体の知れない物は持たない主義であります」
「いや、それもそうだけど俺達についてきて」
「不都合でありますか?研究所には計画に巻き込まれて殺されそうになったであります、暗殺ギルド総出で潰してやるであります。今のところ敵は同じであります」
「まぁ、それもそうか…」
「貴方こそ味方では無い者を傍に置いていていいのでありますか?」
「構わない、心強いよ」
「………大した自信であります」
「ねぇせんぱいっ!見てみてーエレにゃんすまほに閉じ込めたよ~」
「にゃ!?いつのまにしゃめとったんだよぅ!消せーこころん!」
もはや現代から転生してきたと言ってもわからないくらいスマホを使いこなす二人だった、やっぱり明るい二人は仲良くなるのも早いな。
「それでシー・クレットってあとどれくらいなの?」
スマホの操作を一旦止めたアイが尋ねる。
「エレの風に乗ってもあと一日はかかる距離だな」
それに姉であるリーフが答えた。
「初めて行くのか?」
「うん、アタシは別の港から来たから……あ」
アイが何かを思い出す。
「そういえばアタシ師匠のところに行く途中だった!」
そういえばそうだった。
「師匠ってのは別の町にいるのか?」
「うん、溶岩の方向にあった町なんだけど……大丈夫かな」
「身を案じていても仕方あるまい、それにあの徘徊老人ならば平気だろう。存外もう国に戻っているかもしれん」
「…うん、そうだよね」
『ナナシさまー、佰仟さんからでんわですー』
びっくりした。
女神が知らせてくれる事もあるのか。
『ナナシさまーが気づいていらっしゃらない時だけ私がお知らせしますー』
とても便利だ。
ピッ
「はい、どうしたんだ佰仟」
『ナナシさん、向こうに灯りが見える、まだ気付かれる距離ではないが…向かってくる。ここを通りそうだ』
「どんな奴らか見えるか?」
『視力を倍にして確認した、真っ当な連中ではない。護衛らしきのが二人、商人らしき男が一人、馬車で荷を引いている。中には恐らく奴隷だろう、数人いる。きっと奴隷商人だろう』
やはり奴隷制度というものは存在するのか。
文明があるところには決まって存在する、通貨のある限り貧困格差が生まれ、それによって奴隷も産まれてしまうのだろう。
「……この世界では普通の事なのか?」
『……あぁ、国によってだが、それを封する法というのは各国で統一されてはいない。制度を承認している国もある。だが、この国での売買は禁じられている。検閲で通る事すらできる筈もない、だからあいつらは真っ当ではないのだ。この国は大陸一、多種多様な種族が住んでいる。人格者の元首による計らいによりな。それによって…』
ツーツー…
すまん佰仟。
それだけ聞けば充分だ、もう通話はきれている。
法に反しているなら助けるべきだ。
言うが早いか俺は馬車に乗り込んだ。
--------------
ヒュッ
「?」
荷車を引く馬に乗った商人風の男の頬を風がかすめた。
その横を歩く甲冑姿の護衛の二人は怪訝な顔をした商人の様子に声をかける。
「どうされました?」
「いや、何でもない。風か…」
ガタガタガタガタッ……
馬車の中には三人の奴隷らしき人物がいた。
予想ではまだ奴隷にはなっていないと思うが…
「「ひっ…」」
「静かに、声を出さないで。今助ける」
皆、怯えたようにこちらを見る。
全員女性で皆20代くらいの少女に見える。
暴行でも受けたのか、服は汚れ手足に傷を負っていた。
違いがあるとすれば種族の違いだけだ、一人は体が鱗に覆われたリザードマン、一人は体毛のある獣人、一人は背は小さく120cm程しかないが恰幅のいい…ヒューマンでなければ恐らくドワーフだろう。
全てゲームの知識による俺の勝手な判別だけど。
佰仟の言っていた通り、多様な種族がいる。
「皆声を出さないでな、能力で傷を治すから」
俺はアイスメリアの氷の造花の能力を発動する。
まずは見た目一番傷を負っている獣人の娘に手をあてがう。
「……」
ピキピキッ…
「…っ!ほ、本当に傷が……」
「これで大丈夫だ、じゃあ次は…」
「ま、まってくれ!!」
「?」
「本当に助けてくれるなら私達より先に……」
「奥にもう一人いるんです!彼女酷い傷で…」
確かめると暗闇の中、積まれた木箱の奥に確かにいる。
体温が外気とほとんど変わらなかったため、蛇の眼でも気づかなかった。
…という事は急いだ方がいい。
体温が下がりきっている。
「おい、大丈夫か!?」
「………だ………れ……」ヒュー…ヒュー…
ウェーブした水色の髪、恐らく元々は澄んだ清流のように美しかったのだろう。今は見るも無惨に土まみれで見る影もない。
元は可愛らしかったであろう顔立ちも、瞼も頬も腫れ原型を失わせている。
更に少女は上半身は下着?一枚だった。
露出した白い肌も土まみれで足蹴にされたのか足の形の跡が残っていた。
そして下半身は完全な無防備…何もつけておらず
液体が散乱していた。
それが何を意味するかは…
「……」
ピキッ
俺は氷で彼女を身体ごと包む。
「………え?……あ」
再生は無事成功したようだ。
「大丈夫か?」
「え……あの……ど、どなたですか…?」ビクビク
怯えている、無理もない。
怖い思いを沢山したんだろう。
心も記憶も読まなくてもそれくらい想像できる。
「もう大丈夫、助けるから。このまま外を見ないでちょっと待っててほしい」
----------
「急ぐぞ、夜の内に隠れ家まで行く。見つかったら大事だ」
「「はっ!」」
「しかし今回は大物だな、何せ…」
ドサドサっ!!
「?……何の音だ……………?っ!?」
「…」
二人の護衛は倒れ、動かなかくなった。
商人風の男は慌てふためく。
「お、おい!どうした!?護衛!何を倒れて……!?!?」
ザッ……
俺は商人風の男の眼前に無言で立つ。
「……」
「な、何だ貴様は!?一体…っ!?」
パァンッ!!!
そして拳を商人の顔目掛けて光の速度で撃ち抜く。
商人の顔は弾け飛んだ。
「…」グラッ………ドサアッ……
「もうお前の心なんか読みたくないから…一回死んでおいてくれ」
--------------
「終わった、全員離れた場所に置いて来たからもう見つかる事はないよ」
「あ、ありがとうございます」
「本当に…何て礼を言ったらいいか…」
「すまない…」
三人はそれぞれ俺に頭をさげお礼をした。
俺達は馬を止めて荷車を降り、平原の岩に腰かけた。
「………あ、あ…」びくびく…
一番暴行を受けたらしい少女は未だビクビクしている。
「無理して話さなくていい、見張ってるから少し休んでなよ」
「い、いえ!あ、あの…み、水……もらえますか…?」
「水か……待ってて。川で汲んでくるよ」
--------------
「はい、水」
「あ、ありがとうございます…頭から…か…かけてもらえますか?」
「あぁ、わかった」
トポトポトポ……
「はぁっ………いいでございますっ…生き返りましたで、ございます…」
「もういいか?」
「はい申し遅れましたでございます…う、うち…人魚の『しゃんつぉーね』でございます…助けていただき感謝でございます…」ぴちぴちっ
「ああ、よろしく。俺はナナシだ」
人魚なのは知っていた、というか見ればわかる。
下半身は魚だったから。
散乱した液体は含まれた水分だったのだろう。
「まぁ…ナナシさん…素敵な御名前でございます…」
「あ、ありがとう。しゃんつぉーねも可愛い名前だ」
「まぁ…て、照れるでございます…」ビクビク
先程までが嘘のように、元気…元気になったのかなこれは?
まだビクビクしているがよく喋る。
仕方ない、怖い思いをしたんだ。
「彼女は元からこんな感じだったわよ」
ドワーフの女の子が俺に言った。
そうだったのか。
ビクビクしているのは元来の性格だったのか。
まぁ酷い目にあったのは事実だ。
とりあえず今日のところはみんな休ませて……
ヒュンッ!
「!!?」
「はぁっ!!」
ドオオオオオオォォォォォォンッッ!!
ズザァッッ!!
その時突然、槍を持った美少女が
空から俺を目掛けて降ってきた!
寸でのとこで気づいて避ける事ができたけど。
「なっ…!?何でございますかっ…!!??」
人魚さんが驚きの声をあげる。
皆も驚いている、それはそうだ。
「まぁ!やりやりです!奴隷商のくせに!」
立て続けに一体何が起こってるんだ!?
「ついついに見つけました!我が国に蔓延る悪の根!アジトをはいはいてもらいますよっ!あたくし、【ルール・フォン・アウクストラ】、この国の王女の名のもともとにね!」
人魚の次は、王女…姫騎士!?
こんなテコ入れの連発聞いた事ないぞ!
冒険を始め次の町にすらまだ着いていない状態で。
意外とわがままなおどおどした人魚【しゃんつぉーね】と熱血で悪を許さない独特な喋り方をする王女【ルール】、二人との出会いを果たしたのだった。
「簡単だにゃん!みてみて!文字を打ってみたよぅ!」
こころとエレがスマホを持ち二人ではしゃいでいる。
女神と別れた俺とアイは港町への道中、リーフ達と合流し野営地に最適な場所を見つけ野宿していた。
辺りは暗闇、パチパチと音をたてる焚き火と星空だけが光源の静かな草原の中。
傍らには澄んだ川が流れる、絶好のキャンプ地点だった。
皆は配られたスマホの操作に夢中になっている。
「こうしてっと…じゃあせんぱいっ!でんわしてみますね」
こころは輪を離れ、俺の番号をコールする。
『えーと、これでいいのかな?せんぱい聴こえます?』
『あぁ、聴こえるよ』
『ほぇーすっごい!本当に声聴こえますよっ!』
こちらの文明の事を俺の記憶を読んで知っていたこころが誰よりも早く順応する。
「伝えたい事をこれで送れるのかにゃ!?すごいな~リーちゃん届いた?」
続いてエレもスマホの操作に慣れたようだ。
「わからん」
「全然できない…練習してたのに…」
逆にエルフ姉妹は苦戦中のようだ。
「自然と共存するエルフにとって機械は慣れ親しまないものでな」
「エルフの里には機械は一切無いもんね」
なるほど。
ピロン
その時俺のスマホにメールのようなものが届いた。
神々のネットワーク関係は一体どうなっているんだろう。
差出人は、一人…輪の外の高台で見張りをしていた佰仟だった。
『ナナさん、君と町で熱い口づけを交わしてから平静を装っているが動悸がおさまらない。君にとっては能力を得る為にした事であろうが俺にとっては君と出会ってからした事、感じた想いの全てが初体験だ。思えば酒場で出逢ったあの日~(以下略)』
「……」
メールだと饒舌な、そして意外と使いこなしている佰仟だった。
イケメンじゃなかったらこの長さでその本文は色々とやばい。
「キララは本当にいいのか?」
「結構であります、そういう得体の知れない物は持たない主義であります」
「いや、それもそうだけど俺達についてきて」
「不都合でありますか?研究所には計画に巻き込まれて殺されそうになったであります、暗殺ギルド総出で潰してやるであります。今のところ敵は同じであります」
「まぁ、それもそうか…」
「貴方こそ味方では無い者を傍に置いていていいのでありますか?」
「構わない、心強いよ」
「………大した自信であります」
「ねぇせんぱいっ!見てみてーエレにゃんすまほに閉じ込めたよ~」
「にゃ!?いつのまにしゃめとったんだよぅ!消せーこころん!」
もはや現代から転生してきたと言ってもわからないくらいスマホを使いこなす二人だった、やっぱり明るい二人は仲良くなるのも早いな。
「それでシー・クレットってあとどれくらいなの?」
スマホの操作を一旦止めたアイが尋ねる。
「エレの風に乗ってもあと一日はかかる距離だな」
それに姉であるリーフが答えた。
「初めて行くのか?」
「うん、アタシは別の港から来たから……あ」
アイが何かを思い出す。
「そういえばアタシ師匠のところに行く途中だった!」
そういえばそうだった。
「師匠ってのは別の町にいるのか?」
「うん、溶岩の方向にあった町なんだけど……大丈夫かな」
「身を案じていても仕方あるまい、それにあの徘徊老人ならば平気だろう。存外もう国に戻っているかもしれん」
「…うん、そうだよね」
『ナナシさまー、佰仟さんからでんわですー』
びっくりした。
女神が知らせてくれる事もあるのか。
『ナナシさまーが気づいていらっしゃらない時だけ私がお知らせしますー』
とても便利だ。
ピッ
「はい、どうしたんだ佰仟」
『ナナシさん、向こうに灯りが見える、まだ気付かれる距離ではないが…向かってくる。ここを通りそうだ』
「どんな奴らか見えるか?」
『視力を倍にして確認した、真っ当な連中ではない。護衛らしきのが二人、商人らしき男が一人、馬車で荷を引いている。中には恐らく奴隷だろう、数人いる。きっと奴隷商人だろう』
やはり奴隷制度というものは存在するのか。
文明があるところには決まって存在する、通貨のある限り貧困格差が生まれ、それによって奴隷も産まれてしまうのだろう。
「……この世界では普通の事なのか?」
『……あぁ、国によってだが、それを封する法というのは各国で統一されてはいない。制度を承認している国もある。だが、この国での売買は禁じられている。検閲で通る事すらできる筈もない、だからあいつらは真っ当ではないのだ。この国は大陸一、多種多様な種族が住んでいる。人格者の元首による計らいによりな。それによって…』
ツーツー…
すまん佰仟。
それだけ聞けば充分だ、もう通話はきれている。
法に反しているなら助けるべきだ。
言うが早いか俺は馬車に乗り込んだ。
--------------
ヒュッ
「?」
荷車を引く馬に乗った商人風の男の頬を風がかすめた。
その横を歩く甲冑姿の護衛の二人は怪訝な顔をした商人の様子に声をかける。
「どうされました?」
「いや、何でもない。風か…」
ガタガタガタガタッ……
馬車の中には三人の奴隷らしき人物がいた。
予想ではまだ奴隷にはなっていないと思うが…
「「ひっ…」」
「静かに、声を出さないで。今助ける」
皆、怯えたようにこちらを見る。
全員女性で皆20代くらいの少女に見える。
暴行でも受けたのか、服は汚れ手足に傷を負っていた。
違いがあるとすれば種族の違いだけだ、一人は体が鱗に覆われたリザードマン、一人は体毛のある獣人、一人は背は小さく120cm程しかないが恰幅のいい…ヒューマンでなければ恐らくドワーフだろう。
全てゲームの知識による俺の勝手な判別だけど。
佰仟の言っていた通り、多様な種族がいる。
「皆声を出さないでな、能力で傷を治すから」
俺はアイスメリアの氷の造花の能力を発動する。
まずは見た目一番傷を負っている獣人の娘に手をあてがう。
「……」
ピキピキッ…
「…っ!ほ、本当に傷が……」
「これで大丈夫だ、じゃあ次は…」
「ま、まってくれ!!」
「?」
「本当に助けてくれるなら私達より先に……」
「奥にもう一人いるんです!彼女酷い傷で…」
確かめると暗闇の中、積まれた木箱の奥に確かにいる。
体温が外気とほとんど変わらなかったため、蛇の眼でも気づかなかった。
…という事は急いだ方がいい。
体温が下がりきっている。
「おい、大丈夫か!?」
「………だ………れ……」ヒュー…ヒュー…
ウェーブした水色の髪、恐らく元々は澄んだ清流のように美しかったのだろう。今は見るも無惨に土まみれで見る影もない。
元は可愛らしかったであろう顔立ちも、瞼も頬も腫れ原型を失わせている。
更に少女は上半身は下着?一枚だった。
露出した白い肌も土まみれで足蹴にされたのか足の形の跡が残っていた。
そして下半身は完全な無防備…何もつけておらず
液体が散乱していた。
それが何を意味するかは…
「……」
ピキッ
俺は氷で彼女を身体ごと包む。
「………え?……あ」
再生は無事成功したようだ。
「大丈夫か?」
「え……あの……ど、どなたですか…?」ビクビク
怯えている、無理もない。
怖い思いを沢山したんだろう。
心も記憶も読まなくてもそれくらい想像できる。
「もう大丈夫、助けるから。このまま外を見ないでちょっと待っててほしい」
----------
「急ぐぞ、夜の内に隠れ家まで行く。見つかったら大事だ」
「「はっ!」」
「しかし今回は大物だな、何せ…」
ドサドサっ!!
「?……何の音だ……………?っ!?」
「…」
二人の護衛は倒れ、動かなかくなった。
商人風の男は慌てふためく。
「お、おい!どうした!?護衛!何を倒れて……!?!?」
ザッ……
俺は商人風の男の眼前に無言で立つ。
「……」
「な、何だ貴様は!?一体…っ!?」
パァンッ!!!
そして拳を商人の顔目掛けて光の速度で撃ち抜く。
商人の顔は弾け飛んだ。
「…」グラッ………ドサアッ……
「もうお前の心なんか読みたくないから…一回死んでおいてくれ」
--------------
「終わった、全員離れた場所に置いて来たからもう見つかる事はないよ」
「あ、ありがとうございます」
「本当に…何て礼を言ったらいいか…」
「すまない…」
三人はそれぞれ俺に頭をさげお礼をした。
俺達は馬を止めて荷車を降り、平原の岩に腰かけた。
「………あ、あ…」びくびく…
一番暴行を受けたらしい少女は未だビクビクしている。
「無理して話さなくていい、見張ってるから少し休んでなよ」
「い、いえ!あ、あの…み、水……もらえますか…?」
「水か……待ってて。川で汲んでくるよ」
--------------
「はい、水」
「あ、ありがとうございます…頭から…か…かけてもらえますか?」
「あぁ、わかった」
トポトポトポ……
「はぁっ………いいでございますっ…生き返りましたで、ございます…」
「もういいか?」
「はい申し遅れましたでございます…う、うち…人魚の『しゃんつぉーね』でございます…助けていただき感謝でございます…」ぴちぴちっ
「ああ、よろしく。俺はナナシだ」
人魚なのは知っていた、というか見ればわかる。
下半身は魚だったから。
散乱した液体は含まれた水分だったのだろう。
「まぁ…ナナシさん…素敵な御名前でございます…」
「あ、ありがとう。しゃんつぉーねも可愛い名前だ」
「まぁ…て、照れるでございます…」ビクビク
先程までが嘘のように、元気…元気になったのかなこれは?
まだビクビクしているがよく喋る。
仕方ない、怖い思いをしたんだ。
「彼女は元からこんな感じだったわよ」
ドワーフの女の子が俺に言った。
そうだったのか。
ビクビクしているのは元来の性格だったのか。
まぁ酷い目にあったのは事実だ。
とりあえず今日のところはみんな休ませて……
ヒュンッ!
「!!?」
「はぁっ!!」
ドオオオオオオォォォォォォンッッ!!
ズザァッッ!!
その時突然、槍を持った美少女が
空から俺を目掛けて降ってきた!
寸でのとこで気づいて避ける事ができたけど。
「なっ…!?何でございますかっ…!!??」
人魚さんが驚きの声をあげる。
皆も驚いている、それはそうだ。
「まぁ!やりやりです!奴隷商のくせに!」
立て続けに一体何が起こってるんだ!?
「ついついに見つけました!我が国に蔓延る悪の根!アジトをはいはいてもらいますよっ!あたくし、【ルール・フォン・アウクストラ】、この国の王女の名のもともとにね!」
人魚の次は、王女…姫騎士!?
こんなテコ入れの連発聞いた事ないぞ!
冒険を始め次の町にすらまだ着いていない状態で。
意外とわがままなおどおどした人魚【しゃんつぉーね】と熱血で悪を許さない独特な喋り方をする王女【ルール】、二人との出会いを果たしたのだった。
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