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第一章 名無しさんの最強異世界冒険録

第二十一話 エルフの少女vs切裂魔②

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……

………

…………

アタシ…死んだのかな…?
もう目の前が真っ白…何も見えない……

何も見えなくなる前……アタシが最期に見たのは……
バラバラにされたアタシ……

そして

その奥に……

--------------


「ぎゃひっ!ぎゃひひ!まーた殺っちった!あーもーやっぱ我慢できねーな!今日四人目だぁ!えーと、さっき邪魔だった門番の兵士二人だろぉ……そいつらあっちに捨ててからー兵士をもう一人ー、…それにーリーフレイン?ん?でもこいつ偽者っぽかったなー、ま!いいか!ぎゃひっ!」
「…………」
「ん?あれ?んー?」
「…………え?」
「ん?……あれ?今、俺、殺したよな?バラバラに引き裂いたはずだよなー!?あれ?!」

ティアラップの前には引き裂かれたはずのエルフの少女が当然のように座っていた。

「え?何で?アタシ……」

確かに自分は腕も脚も視界さえもバラバラになったはずだ、と困惑する。
血が飛び散るのも腕が飛んでいくのも視界が真っ二つになるのもアイは最期にこの目で見て身体で感じていた。

しかし何事もなかったように自分は今五体満足でここにいる。
あれはただの悪夢だったのか?
それともこうしているのが夢なのか?
身体を確認すると着ていた服はバラバラで血まみれだった。
やはりさっきまでのは夢じゃない。
では何故自分は今無事なんだろうか。

思考がまとまらないアイは突如、肌に異変を感じた。

ピキッ ピキピキ……

「…えっ?冷たっ……!?」

見れば傷のあった場所、裂かれた箇所を
花の形を模した『氷』が覆っていた。

「っ!?な…何…これ?」
「……誰だぁ?てめぇ…」
「……っ!?」

アイが自身に起きた事を驚いている間にティアラップはこの場にもう一人いる事に気付き臨戦体勢をとっていた。

そう、アイが最期に見たのは

アイが散る間際、アイの名前を呼んでいたのは


------------------------------------------




「遅れてごめん、無事でよかった」


「…っ!…遅いょぉっ…ばかぁっ……」


アイの瞳からは大量の涙が零れる。
歩み寄り、アイを抱き締める。

「…っぐすっ…ぐすっ…」

良かった、無事で本当に良かった。
まさかこんな事態になるなんて思いもよらなかった。

「ぅぇぇぇぇん…ばかぁ…」

怖い思いをさせたな…

「ぐすっ…でも、違うのぉ…アタシっ…もうダメかと思ったから…ただナナシに会えたのが…嬉しかったのぉ…ぐすっ」

後でいっぱい謝ろう。
だけどその前にやる事がある。
俺はアイを離し、アイと『敵』の間に入る。

ザッ!

「……」
「おい…誰だって聞いてんだよぉ?」
「今は女の姿だし、いいか」
「あぁ?」


「とりあえず全力で殴るよ」




--------------
--------------
---------
------




「もう動ける?」
「うん……平気…」
「肩に掴まって、ほら」
「………」
「どうしたの?」
「…ごめん、…お姉ちゃんともあなたとも約束したのに…強くなるって……また足引っ張ちゃった…」
「……」
「もう呆れるよね……アタシなんか……どうして…」

ちゅっ

「っむ!?」
「……っは…馬鹿な事ばっか言ってると私も怒るよ?」
「なっなにっ!?何でキスしたの!?」ドキドキ
「アイ、君が助かったのは君の力なんだよ?」
「……え?どーいう事…」
「それは教えない、きっと君はその意味を自分で見つけられるはずだから。まだ旅は始まったばかりだよ、君は自分の名前と向き合うんだ、そうすれば必ず君は強くなる」
「……?」
「さぁ、今日はもう宿に帰ろう」
「……何の事かわからないけど……うん、ありがとう……ねぇ、それと女の子の姿でもいいけど……次はする時はナナシに戻ってね」
「ふふ、はいはい」

……


『アイスメリア…あなたの名前は昔お母さんが外の世界で見た美しい氷で創られたお花の名前…幾重にも氷を重ねて創りあげた一つの命…氷の造花…そんな意味があるのよ、ふふ…まだ難しいかもね。でもいずれわかる日がくるわ、あなたは素直じゃないところもあるけど頑張り屋さんで一生懸命になれる子だもん。きっと大丈夫…いつかあなたもお姉ちゃんを助けてあげられる』


New skill

【アイスメリア(降り注ぐ日射し)の力】
肌を焼く直射日光を発生させその光の路を通る物体を増殖させる。
【アイスメリア(氷の造花)の力】
氷を何重にも発生させ、氷に包まれたものの命を再生、又は創りだす事ができる。


--------------



ナナとアイvs切り裂きティアラップの戦闘を闇の中で終始見ていた女性が一人。
それは佰仟と先ほど邂逅していた『命名研究機関』室長の肩書きを持つ女だった。

「な…なにもの…なの?あ、あの人間の女…ば…化け物だわ…」

『命名研究機関』室長の肩書きを持つという女の目には
削られた世界の一部があった。
見渡す限りに地面は抉られ、まるでそこだけ戦争でもあったかのような光景が映っていた。

それはナナシもといナナの放ったたった一発の拳から発生した衝撃の結果だった。

「し…所長に…ほ、報告しませんと…」

女の足元には一緒にこの町へ来た、切裂ティアラップと呼ばれる少女の一部だけが残っていた。
少女はナナシと呼ばれていた人間の女に
一発殴られただけで
発生した竜巻と共におよそ3kmほど吹きとばされ
原型を留めずバラバラになっていた。

「あ、あんな…デタラメな力…わたくし達の手には負えない……」

あれじゃあまるで…
この世界に現在皇帝として名を轟かせている『全能』
一度その力を見た事があるがそれに近いものをあの人間の女から感じた。

「……っ」ガタガタ

こうしている場合ではない、最早大会や数字を遣う傭兵やこの約束を守らず兵士を殺害しアシをつけた馬鹿の事などどうでもよかった。

「け…研究所に戻らなくては…」

そして女は闇夜に消え、もうこの町に戻る事はなかった。


ピキッ

ピキピキ…

女が姿を消して数秒後、発生した氷によりバラバラになった少女は再生したがそれを女が知る事もなかった。

--------------

少し遅れて異変に気付き、轟音と竜巻を見た佰仟は急ぎ門へと向かいその光景を見た。

「………」

佰仟も驚きを禁じえなかった。
何故ならばナナとその友人が
口づけを交わしていたから。

「な、ナナさん…あんな事を友人と…もしかしたら…ナナさんは…そういう気のある人…だから男とは付き合えない……そ、そんな…………………ふっ………ふふっ………………………………………………………そうだとしたら何だというのだ!俺は負けん!必ず!ナナさんともっといい関係になってみせる!」

物語の渦中にいながら、どこかズれている佰仟だった。



























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