名無しの最強異世界性活

司真 緋水銀

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第一章 名無しさんの最強異世界冒険録

第十一話  エルフの少女①

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「ここか……」

俺は約一時間の道程を進み獣が生息するという森へ辿り着く。
遠景には遥か雲の上までそびえ立つ巨大な山。
その麓に辺り一面に広がる木々、広大な森がある。

「ゲームだと大抵序盤に『迷いの森』を通過するのがお決まりだしな」

最も俺は別に旅の最中にたどり着いたわけではないので通過する必要はない。
ただ単にレベル上げをしに来たのだ。
ちなみにここまで歩いてくる途中で男に戻った。
やはり慣れ親しんだこの身体で戦闘経験を積むのが一番だろう。

「しかしここまで何もなかったな……モンスターに少しは出くわすと思っていたんだけど…」

案外世界は平和なのか?
それともこの一帯だけなんだろうか…
まぁ女神の話では別に魔王が支配しているわけではない
ただ人間の欲による危機ってわけだし、そうそう獣にエンカウントするわけはない。

「…よしっ!入ってみるか!」

事前にパラメーターの全てを500近くまで上げ、マップを確認し森へと足を踏み入れた。

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森の内部は薄暗く、光は乏しかった。
木々は鬱蒼としており、多少の湿気はあるが冷気が漂い寒気すら感じる。
音は無く、たまに吹く風による木々のざわめきが辺りを支配する。

「不気味だな~……それに寒い…」

元の世界では夏だったため、俺はTシャツにジャージという格好でこの異世界に来ていた。
あの高原では丁度よかったのだが、この森の冷気は肌に堪える。

「しかし何もいないぞ…」

まだ20分ほど歩いただけだが、木や草、土以外には何も見ていない。
何かに使う用途があるのか、一応人が通る土道が整備されている。

「もっと奥まで行ってみるか…」

そう思った瞬間、背後から頭に何か衝撃を受ける。

ガスンッ!

「!?」

振り返るとそこには熊がいた。
正確に言うとそれは熊のような謎の生物、体格や毛並みは熊なのだが尻尾があり、その尻尾は蛇のような別の生物だった。
熊の方は約3メートル、蛇の方は全長5メートルはあるかという巨大生物。
しかも顔の半分は頭蓋が飛び出ており、痛々しい姿をしている。

「な…なんだこれ…」

どうやらその熊のような生物に後ろから殴られたようだった。
…が、何か柔らかいボールをぶつけられたような感触しかなく当然のように無傷だった。

「何度も言うけどなんて便利な力だ」

パラメーターを上げていなければもう死んでいただろう。
この生物の攻撃力がどれほどかは知らないが、この体格に不意に一撃をもらっては普通ならタダじゃ済まない。

ザッ

少し距離をとり、熊?と向き合う。
武器も何もないが能力を信じてやってみるしかない。

「しかし…こんなモンスターみたいなのが普通に誕生するのか……何て世界だ」

この生物にも名前はあるのだろうか。
いや、普通に考えて名前はあるだろうが…それは俗に学名と呼ばれるやつだろう。それは加味しなくてもいいのか…

【学名】生物などにつけられる世界共通の名称。

そうじゃないと人間には「人間」という能力がある事になる。
あくまで個人につけられた名が能力として体現するのか。
しかし女神は名をつけられた獣【名獣】と言っていた。
この生物にも名前というものがある事になる…。
…わからん、かっこつけてないで最初は女神に同行してもらうべきだった。
最初の攻撃が通じず、様子をみていた熊が再度動きを見せる。

「っ!」

構え、とりあえず対応を試みたその時、木々の隙間から閃光のようなものが走った。

グサッ

それは矢だった。
熊のような生物の剥げた頭蓋に刺さったそれを見て視認する。

「今のうち!こっちへ走って!」

少し動揺を見せる熊だが、あまり効いてないようで矢の発生源を探すように顔を振る。

「何をしているの!早く!」

俺に言っていたのか。
とりあえず敏捷性を高めた俺は声のする方へ跳んでみる。

シュバッ!!

…が、力加減を間違えてほとんど飛翔し、木々を突き抜け一歩(一蹴り)で遥か先にいる謎の人物の前に出てしまった。

ヤバい、ぶつかる!
高い木の上にいた人物は想定していなかった事態に驚き声をあげた。

「えっ!?キャアアアっ!」ドカァッ!

二人は折り重なり、衝撃で木の上から落下する。

ザザザザッ、ドサッ!

枝葉を突き抜け、一直線に地面に落ちた。
謎の人物を抱き抱えた俺は約30メートル上空から地面に背中から激突したが当然無傷。
謎の人物は無事だろうか。

「~~むーっ!んーっ!」ジタバタ

俺に胸に顔を埋め、苦しいと暴れて抗議していた。
よかった、無事のようだ。

「ぷはっ!」

俺は腕を離しその人物を解放する。

「なっ何してるのよアナタ!っていうか今どうやったの?!」

謎の人物はまたもや可愛く綺麗な女の子だった。
どうしても女神と比べてしまうが、それでも顔や体型だけなら甲乙つけがたいほどの美少女。
輝くブロンドの髪を二つに脇で結び腰まで伸びるツインテール、目付きは尖っているが引き込まれそうな藍色の瞳。そして尖った耳。

「……もしかして、エルフってやつ?」
「そうよ!悪い!?」

気の強い子みたいだ、年は16~18くらいか?

「それよりアナタ!こんなところで何してるの!そんな変な軽装で!自殺でもしにきたの!?はっ!まさかアナタ研究所の人間!?」

それによく喋る子みたいだ。
とりあえず自己紹介してみる。

「いや、俺はただの旅人だよ。この森は初めてでさ、ちょっと立ち寄ってみたんだ」

当たり障りのない嘘で答えてみる。
なんかレベル上げに来たとか言ったらややこしそうだなって思ったから。

「……」じとー

完全に怪しまれている。
じと目なんか生身の人間がしているの初めて見た、可愛いからいいけど。

「その言葉を信じたとして…ここがどういう森かも知らないで入ったっていうの?」
「もちろんだ、ていうかこの地域一帯の事は全然知らない」
「……ふーん、まぁいいけど。ここはね…」

グオォォォォォォォォッ!

獣の咆哮が会話を遮る、さっきの熊だろうか?
一キロは離れたのにもう追い付いてきたのか。

「!話は終わりっ!アナタはさっきの力で逃げなさい!アタシが足止めしておくからっ!」
「そんなわけいくか」
「いいから!邪魔なの!てんで弱っちそうなくせに!」

随分とものをはっきり言う子だ。
エルフの少女は声のした方向に弓を構える。
一キロほど離れた場所から命中させる腕は大したものだがさっきの攻撃は全然効いていなかったような…

ヒュッ!

まだ姿の見えない暗闇へ矢を放つ少女。
命中したのかどうか確認はできないがそんな事に構わず少女は次の矢をかまえる。

ヒュッ!

しかし足音は徐々に近づいてくる。

「なぁ!あの獣は害獣なんだよな?!」
「はぁ!?見たら判るでしょ!何人も人間を殺してるわよ!」
「……」

生物の命を奪うのは嫌だが仕方ない。
本当は戦いながら力を調整して、相手の意識を失わせつつ経験を積もうと思っていたんだが。
初戦闘に加え、手加減していてはこの少女が危険に晒される。
今はパラメーター調整を試している場合ではない。

ザッ

少女と音のする暗闇の間に立つ。

「!?アナタ何やってるの!?」
「…」

俺は答えずにパラメーターを調整する。
上げる数値は…腕力。
その数値は、銃兄弟を悶絶させた数値の5倍。

腕力1000

格闘技の経験など一切無かった俺だが
テレビやアニメのどこかで見た構えをする
正中線から右半身を後ろにずらし、腰を下げ、右拳を握り腰の辺りに、前に出た左半身の左腕は胸の辺りに拳を握り構える。
形だけは武闘家のような構えになっていた。

暗闇から熊が姿を現す、獣のように四足歩行で物凄いスピードだ。

グオォォォォォォォォッ!!

雄叫びをあげる。
普通ならこの距離でそれを受けたらそれだけで威圧され、怯むだろう。

「ひっ……」

後ろの少女が小さく悲鳴を漏らすのが何より証明している。
頭にはさっき見たより多く矢が刺さっている。
全て命中していたのか。
しかし、やはり余り効果は見てとれなかった。

俺は動じず
構えていた右拳を
思い切り前に突き出す

熊はまだ俺の100メートルほど前
当然腕は空を切る

パァンッ!!

しかし瞬間辺り一面の木は薙ぎ、草、土埃は舞い上がる。
可視はできないが、竜巻が前方に向かって伸びていたと後に後ろから見ていたエルフの少女は語っていた。

俺の拳は、竜巻を放ったのだ。

ゴオオオオオオォォォォォッ………

ドォン!

そして、熊はその場に倒れた。
見ればその腹には何かが貫通したような
大きな空洞が開いていた。
拳から放たれた風圧がそこを通り抜けたのだろう。

通り抜けた風圧は渦を巻き、前方一直線を散々に撒き散らしながらどこかへ消えた。
まるでそこだけ台風が通過したかのように
約200メートル以上にわたり
木々は倒され、土は抉られ、闇は晴れ光が射し込んでいた。

「……っな……あ……え?」
呆然とその場に座り込み、声も出せない少女。

「……ふぅ」
見よう見まねでやってみたが上手くいった。
バトルものの漫画を読んでてよかった。
パラメーター1000にもなると災害を産み出すのか、注意しておこう。

「あ……アナタなにもっがっ?!」

カラン

弓の倒れる音と共に
少女が突然苦しそうに奇声をあげる。
振り向くと先ほどまで熊の尻尾だった大蛇が少女に巻き付いていた。

「がっ…ぐっぅうっあ!」

そうか、さっきの熊の本体は蛇の方だったのか!
熊は蛇の疑似餌のようなものだったのだ。

グポッ!

「!!?」

少女の上半身が蛇に呑み込まれる、動作が素早かった。
俺は一歩出遅れる。

「~~~~~~○#☆*§※〒」

何か叫んでいるが籠っていて聞き取れない。
足をジタバタさせてもがいている。

「吐き出せっ!!」ドゴッ!

俺は大蛇の腹の辺りに思い切り蹴りをかました。

パァン!

また破裂音が響き、大蛇は肉片を撒き散らし爆散してしまった。

ボタボタボタ……

「腕力って…蹴りも強くなるのか…」
「…………っぷはぁっ!」

少女に駆け寄る、唾液まみれではあるが外傷は無く無事なようだ。

服以外は。
少女の着ていた服は見事に上半身だけが溶けたようで
真っ白な肌と形の良い小ぶりな胸が露わになっている。
唾液にまみれ光る小さいがぷっくりと膨らむ桃色の乳首が官能的だった。

「~~~っ!」バッ
それに気づいたのか慌てて腕をクロスし胸を隠す。

「……アナタ…一体何者なの…?」

頬をピンク色に染め、上目遣いでこちらを睨みつける少女。
強気な態度とは裏腹に、怖かったのだろう、その目には涙が浮かんでいた。

俺は答える。

「言っただろ、ただの旅人だよ。名はナナシだ」

森でエルフの少女と出会う、そんなベタベタな展開から
俺の長い旅は始まった。











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