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チュートリアル

#003~箱庭入門『クラフト』②

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「ふぅ…………」

 あれから約一時間。
 俺の周囲には四角形ブロック型の『床』や『壁』があちこちに並んでいる。まるでブロックの迷路のようになってしまった。おまけにあちこち床もくり貫いたおかげで落とし穴まで沢山できてしまった。

 俺はハコザキから受け取った力【箱庭(L・クラフト)】で色々と試していた。ハコザキは……というと、あれからまた一切声をかけてこない。

「少し休憩……その間にこの力の事を完全に理解しておかなきゃな……色々とわからない用語やらが多すぎる」

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【箱庭(ラインクラフト)】
・【アイテムスロット】
9つのスロットの中にアイテムを収納できる。個数制限あり。どうやら大きさに関係なく『右手』で掴んだ物は何でも入れられるらしい(現段階の情報)
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(ブロック化した床も収納できた……これ以上の大きさの物はここには無いからわからないが……取り出すのも自由自在…………そして)

 俺は『左手』を横並びのアイテムスロットに伸ばす。今収納されているのは『松明』と『床ブロック』だけだ。とりあえず『床ブロック』に『左手』の指を触れてみる。

ピッ……シュンッ!

(……床ブロックの絵が……消えた………)

 そう、『右手』が【収納、取り出す】に対し『左手』でアイテムスロットの絵に触れると収納してるものを【消す】事ができる。

「なるほど……これで持ち運ぶ物を整理するのか……」

 しかしそれだけじゃない。この『左手』はアイテムスロットにだけ対応してるのではなかった。

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 【箱庭(ラインクラフト)】
 ・【クラフト(仮称)】
 『右手』で触れた物を四角形の『ブロック』に変化させる(縦横2メートルほど)。『右手』であれば重量に関係なく持ち運び可能。
 そして、『左手』でブロック化した物に触ると【破壊】する事ができる。
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 俺はブロック化した壁に『左手』で触った。
 すると瞬時に壁はバラバラに崩れ落ち箱の形状からただの石の破片の集まりへと化した。破片の山を調べてみる。

「……すごい……壁として固まっていた物も一瞬で崩せるのか……」

 しかし、『左手』で崩せる物はあくまで『右手』でブロック化した物だけだ。普段はどこかに触れても何も起きない『左手』のまま。

(それはそうか、無意識に左手で触った物が破壊なんてされたら日常生活すらままならないよな)

 とにかく、現段階で判明しているこの力だけでも遥かに常識を越えている。魔力も消費せず体力も腕力もほぼいらない。赤ん坊が積み木で遊ぶかの如くに地形をも変化させる事ができるうえに、収納すれば地面をも楽々に運べる。

<ふぁぁ……ようやっとわかったのか……つーかいつまで遊んでやがる。チュートリアルが長えってのぁ嫌いなんだよ。要領が掴めたらさったさと外に出て復讐でも無双でもしてこい>

 ハコザキはまた急に現れ、地球の単語を並べ立てる。

「わかってるさ、まだまだ試したい事はあるけど……とりあえずここを出てからだな」
<んで? ここからどう出るよ、言っとくがお前さんが落ちたこの深い階層は出入口がねぇ。隔離された秘密の空間だぜ? あるとすりゃあお前さんが落ちてきた遥か上にある穴だけだ>

 俺は上を見上げる。約10メートルくらいだろうか、暗いので僅かにしか見えないが……そこには確かに大きな空洞のようなものが存在している。

(あそこから地面に落ちてよく即死しなかったな俺……)

 確かに【箱庭】実験の時についでに周囲を調べてみたが、出入口らしきものはどこにもない。洞窟にある隔離された空間、上と穴だけで繋がっているって事は……この空間はごみ捨て場か何かなのだろうか。

<あんな高さじゃあ届かねぇやな、空でも飛べない限り。さぁ、この状況をどうするよ?>
「……それは俺を試してるのか? この力を使えばわけないだろうに」
<なはは、そこまでバカじゃなかったか。ならさっさと出やがれ>

 俺は周囲に並べた床や壁の箱をできるだけ【アイテムスロット】に収納して穴の真下に立った。
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