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最終節.女子高生(おっさん)の日常と、いともたやすく創造されしNEW WORLD

232.???なセカイ

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 聞き慣れた声、見慣れた天井を脳内に刷り込まれた途端──意識は覚醒する。

 そこは自分の部屋だった。
 時刻は朝──温かな布団に包まれ火照る自分の体が心地良い。フィルターがかかったような視界は、少し手でこするとスマホカメラのように機械的に鮮度を徐々に取り戻していく。
 目覚まし代わりになってくれた透き通るようや声の持ち主は、世界一の美少女と名高い俺と【波澄阿修凪】だ。

「あぁ………アシュナ、おはよう……」
「おはようじゃないですよ、クソ雑魚なめくじおじさん」
「……その『クソ雑魚なめくじおじさん』ってあだ名やめてくれない……?」
「……寝ぼけてるんですか? アシュラさんが『興奮するからそう呼んで』って言ったんじゃないですか……」
「そうだっけ? ふわんぁぁぁぁ~……」
「おじさんみたいな雄叫びのあくびしてないで……もう、学校に遅刻しますよ」
「わかったから一発ヌイてもらっていい? 朝勃ちが収まらないんだ」
「ナチュラルにセクハラするのやめてもらっていいですか!? 本当におじさんみたいなんだから……時間ないですから……一回、だけですよ……?」

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 リビングへ降りると父と母、そして妹のマナが朝食を摂っていた。
 団欒(だんらん)という言葉をそのまま絵に描いたような理想の一日の始まり──いくら昨今流行りのお絵描きAIであろうと、このヌクモリティ溢れる光景を描くのはもう少し技術進化しないと不可能であろう。

「あら、アシュラ、アシュナおはよう。なんか二人ともつやつやしてるわね」
「……あ、あはは……」
「ほら、時間ないから朝食は咥えて行きなさい。はい、ゆで卵」
「窒息するよ!?」
「じゃあ行ってきまーすっ!」





 学校への道をひた走っていると、至るところから畏敬のような感嘆のような念を含んだ声やため息がすれ違う人達から漏れるのが聞こえる。
 まるで朝からてぇてぇものでも拝んだかのような満足気な表情だ──アシュナに聞いてみたところ、どうやら俺達を見ての反応のようだが……彼女は慣れた雰囲気だ。どうやら毎度お馴染みの光景らしい。

「まだ寝ぼけてるんですか? 私達『現代のアダムとイヴ』って騒がれてるじゃないですか」
「へぇ~………」
「あ、そういえば今日転校生が来るんですよね」
「へぇ~………」
「あれ?『可愛い子かなぁ』とか気にならないんですか?」
「おっぱいがあればどんな娘でも可愛いよ」
「懐(ふところ)が深そうでありながら全女子を敵に回しかねない発言ですけど大丈夫ですか?」
「いや、この場合のおっぱいってのは巨乳って意味じゃ───」

 他愛もない会話を繰り広げてながら曲がり角に差し掛かろうとしたその時──突然、塀の死角から人が現れて俺と衝突した。

「──ぃたっ!!」「きゃあっ!?」

 創作物で使い古されたベタ展開の『朝、曲がり角でぶつかる』やつだ。
 余談だが、時代と共にそういった表現は徐々に変遷の一途を辿ってきている。
 昭和の時代では美少女とぶつかり言い争いになったりしたらしい……続く平成ではスカートの中に顔を突っ込んだりのTOLOVE(とらぶ)るが巻き起こったりしたようだ。では一体現代ではどんな変化が起こるのであろうか?

 何故こんな余談を考察するに至ったか──それは、出会い頭に衝突した女の子が俺の股関に顔を埋めて隠すことなく匂いを嗅いでいるからである。

「すー……はー…………すー……はー……クセになりそうこの匂い…………あ、ちょっと大きくなってきた……」
「ちょっと!! 何やってんですかこの変態女!?」

 金髪ツインテールの美少女は、アシュナと小競り合いしたのちにあわただしく去っていった。

「いやー、びっくりした。時代と共に曲がり角も様変わりするもんだなぁ」
「……絶対、特殊な変態とレアエンカウントしただけだと思いますけど………そんなことより遅刻しちゃいます! 急ぎましょう!」




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