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最終節.女子高生(おっさん)の日常と、いともたやすく創造されしNEW WORLD

209.女子高生(おっさん)とレコーディング

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「──会えて嬉しいよアシュナちゃん。やー、でもほんま可愛いらしいなぁ」
「ほんまやね~、俺がも少し若かったら絶対放っとかへんねやけどなぁ」
「……センちゃん、今の時代……不用意な発言は全部セクハラになるから注意して………」

「あ……あわわ……よ、宜しくお願いします……」

 都内──レコーディングスタジオ。
 関係者がこぞって集まっているが、そんな人等は視界に入らず(※失礼)……俺の視線はとある四人へと注がれていた。

 ファンだけではなく業界人や音楽界からも神バンドと称される【アオク】のメンバー達が、今、おっさんの目の前にいるのだ。
 そんな現実に、久しぶりに俺は頭が真っ白になっていた。





 ファンタジー世界にて、無事に歌詞を書き上げた俺は翌日イドちゃんにさっそく連絡した。

 すると──イドちゃんはカッコいい高級車で颯爽(さっそう)と現れ、怪盗紳士が如く華麗に、俺をクルマに乗せてこのスタジオへ直行したという塩梅だ。
 少女マンガ主人公目線なら夢のような展開だが、おっさんにとってはスタードッキリ●秘報告……今で言うモニタ●ングみたいな超特急な展開なもんでついつい隠しカメラを探してしまった。

「ごめんね? メンバーのみんながどうしても会いたいって言うから……諸々のついでに顔合わせしようってことになって来てもらったんだ」
「嬉しいけどいきなりすぎるよイドちゃん……いくらおっさんとはいえ心の準備ってものが……しかもいきなりレコーディング?!……歌詞の確認とか手直しとかしなくていいの?」
「もうスケジュールぎりぎりだからね、それにアシュナちゃんに託して信じてたから。きっと最高の歌詞を書いてくれたんだって」

 イドちゃんはめっちゃハードル上げてくる。
 いや、そう言われると自信を失くす──俺は景色を見て歌詞を書いたわけじゃないし……イドちゃんが落ち込むと思って『【天幻郷】はもうありませんでした』とは言っていないからだ。

 それでも──あの場所で、トワちゃんらが笑い合っていたあの情景はおっさんの中に確かな形(し)となって溢れ出たから……自信満々意気揚々に完成したって言っちゃったけど……そんな『これまでの冒険が最高の宝(けしき)だった』みたいなオチでイドちゃん達が納得してくれるかは別問題だ。

 ヤバい、そう考えると自信失くなってきた。
 だけど……ここまできたらもう引き返せない──俺は【アオク】の皆に、書き記した歌詞を見せた。

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「…………奇跡だ………アシュナちゃん……貴女は本当に凄い人ですね………」

 ──めっちゃ絶賛された。
 メンバー四人全員が、じっくりと歌詞を読み込んだのちに感嘆と納得の表情を見せてくれた。

「思い出したよ………私は──いや、私はこうやって出逢ったんだ……始まりはここからだったんだね」
「……せやね、なんで忘れてたのか不思議なくらいやけど……ようやく思い出せたわ」
「ふふ……懐かしなぁ……あん時はみんなで笑い合ってたもんなぁ……」
「…………僕も、思い出せたよ」

【アオク】の皆はなにか思い出に浸(ひた)っているようだ──と、いうか……なんかメンバーの話し方に既視感を覚えた。
 いや、既視感もなにも【アオク】の事は前世でも今でもテレビやDVDで散々見てきたから知ってて当然なんだけど……つい最近、会っていたかのような錯覚を感じる。

 まぁ気のせいだろう。

「あ、ごめんね……思い出話に付き合わせて……」
「いえ、大丈夫です。【アオク】結成当時の思い出ですか?」
「いいや、【天幻郷】にみんなで行った時の話や。エルフ王家ご息女のイドの護衛で大変やったなぁって」
「リーダーは『最強勇者』なんて言われてたなぁ。ユッキィは『万物支配の絶対竜』……やったっけ?」
「そうそう、センちゃんは『千の魔女』で……性格引き継いじゃったんじゃない?」
「せやなー、娘達は元気にやってるやろかー」

「気のせいじゃないっ!!? ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん方っ!! あなたたち全員転生者なのっ!!?」
「……あはは、そうだったみたい。いやー驚きだね」
「軽っ!! しかもどっかで聞いたような肩書きをお持ちでっ!!」
「お……落ち着いてアシュナちゃん……」

 歌詞を認められた喜びも余韻も、何処かへ吹き飛んでいった。
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