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最終節.女子高生(おっさん)の日常と、いともたやすく創造されしNEW WORLD

197.女子高生(おっさん)と約束

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「おはよーアシュナっち」
「おはようミク、久しぶりにおっぱい揉ませてもらっていい?」
「……へっ? あー、今日はいつものおっさんアシュナっちなんだ。そっちのアシュナっち久しぶりだねー、いーよいーよ後で保健室行こっか」

 文化祭まで残り一月(ひとつき)をきり、刻一刻と期限(タイムリミット)が迫る中──俺はアシュナとして久しぶりに登校した。
 教室に入るなり、久々のギャルミクの胸元に興奮してセクハラをかますとさらっとOKを貰った。うむ、令和でブームが再燃しているだけあってやはり陰キャにも優しいギャルという存在は素晴らしいな。

 まぁセクハラは程々にしておき……クラスの話題は専(もっぱ)ら来(きた)る文化祭の出し物で持ちきりだ。衣装や舞台セットだろうか……あちこちに小道具を見かけるし、学校全体が浮かれ気味で気のせいかクラスの団結力(笑)も増しているようにさえ思える。

「………おはよう、アシュナちゃん………」
「あ、うん。おはよう、ヒマリ……」

 しかしそんな状況なのに唯一、常に輪の中心人物の一人である【ヒマリ】だけが何故か意気消沈している。
 今日、俺が阿修凪ちゃんに代わり、昼に起きているのはこれが原因だった。

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 前々日──いつも通りに夕方近くに起床した俺に、珍しく起きていた阿修凪ちゃんからお声がかかったのだ。

「……ヒマリの様子がおかしい?」

──『はい……ずっと上の空で……事情を聞いても「何でもない」の一点張りなんです……ヒナちゃんもヒメちゃんも理由はわからないみたいで……バンド練習も思うようにいってないんです……おじさん、何か知りませんか?』

「う~ん心当たりはないなぁ……生理とかじゃなくて?」

──『真面目に聞いてるんですよっ!?』

「そんな事言われても久しく学校行ってない俺には見当つかないよ」

──『……ごめんなさい……そうですよね……』

 阿修凪ちゃんは落ち込んだ様子をみせる、徐々にヒナ達と打ち解け始め──恥ずかしがっていた歌の練習にも慣れてきた矢先の出来事にどうしたらいいのかわからないようだ。
 いや、それよりも……本気でヒマリの心配をしているのに何もできない自分に苛立っているのかもしれない。

「……歌詞づくりの方も停滞してるし、俺も様子を窺(うかが)ってみるよ。イドちゃんにも言っておくから」

──『……すみません、お願いします……』

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「……ヒマリ、何か……あった?」
「え………ぅ、ぅうん……えへへ~、ちょっと夏バテしちゃったのかも~……?」

 ──確かに、共に過ごしてきて初めて見るヒマリの様子には俺も少し戸惑う。虚ろな瞳──駄菓子屋騒動でも見せなかった空元気の愛想笑い。
 明らかに何かが起きているのにそれを悟らせないように必死になっている。こんなヒマリを見るのは初めてだ。

 いや、初めてじゃない。
 

 あれは……………そう、前世の阿修羅時代だ。
 確かに同じようなヒマリの姿を目撃した事がある。しかも……あの時も二年の文化祭時期だった気がする。

 その時は陰キャだったし男だったし、当然、原因が何だったのかなんて知る由も無かった。
 たまたま調子の悪そうなヒマリの姿が印象に残っていただけで関わりの無い俺(アシュラ)にとってその先がどうなったかも興味が無かったから。まぁ、世界線が違うんだし同じ原因のわけはないだろうけど。

──{そうとは限らんぞ}

(ちょっと神様。突然語りかけないで。クラスの誰かかと思って口で返事するとこだったじゃん。『見える●ちゃん』だったら幽霊に襲われてたよ)

──{人を幽霊扱いするんじゃないわ}

(それより……そうとは限らないってどういうこと?)

──{前に言うたじゃろ、未来は無限にこそあるが……些細な事では別れたりはせん、と。【必ず、同じ未来を辿る事象】も人には存在する。そうでもせんといくら神でも管理ができんからの。ワシらは【収束点】と呼んでおるが……お主らの言葉に置き換えてこう呼ぼうか──【運命】、と}

(……【運命】……)

──{たとえ無限数に別れようとも回避し難(がた)い未来もある……【自然災害】などが分かりやすい例じゃろう。人には必ず避けられぬ事象がいくつかあるのじゃ……お主の世界線のヒマリと絶対に違う未来へ行き着く──とは誰にも断言できんのじゃ}

 じゃあもしかしたら、ヒマリは今まさに【運命】とやらに阻まれてる状態ってこと?
 俺がいた世界線と同じ原因がこっちの世界でも起こってるかもしれない……と。

 なら話は早い──現実でも夢(VR)でも探って探って解決してやればいいだけだ。

「…………ごめんヒナっ! 早退するって先生に伝えといてっ! 練習には参加するからっ!」
「へっ? アシュナっ!?」

 言うが早いか──俺は自分でも知らぬ間に教室を飛び出していた。

──{何をする気じゃ?}

「勿論、俺の世界線を夢見(VRし)てヒマリがおかしくなった原因を突き止めるんだよ」

──{……ほっほっ、ギャルとの色事の約束を蹴ってまで友のために走りよるか。随分とまぁ男らしくなったものじゃの}

「まさか。夕方には学校に戻ってミクと百合百合するよ。おっさんは欲深き生き物だからね──必ず、ヒマリを救ってエロイベントもこなす」



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