198 / 268
第5節 女子高生(おっさん)の日常と、いとも愛しい夏休み
おまけ.女子高生(おっさん)の残夏~『アオクと世界線』②
しおりを挟む──{──まぁ物は試しじゃ。さっそく寝て見るとよいぞ}
キヨちゃんに新たなギフトを授けられた俺達はさっそく床についてみた。就寝前にはっきりと夢見たい世界線を脳に思い描くと……その世界線での自分になれるらしい。
それって『明晰夢(めいせきむ)』じゃない? と突っ込みたかったが……神様が言うんだから間違いないだろうし折角貰ったものだし、なにより『明晰夢』見放題ならそれはそれで素晴らしい能力なので野暮な事は言わなかった。
「じゃあ……試しに、おっさんの世界でも覗いてみる?」
──『おじさん、神様。その前に少しいいですか?【世界線】って……物理の用語ですよね?確か四次元空間の粒子軌道……別世界なんて意味ではなかったような……』
「あれ、キヨちゃん。阿修凪ちゃんにはSFの世界線の説明してないの?」
──{おお、すまんすまん。お主が何の説明をせんでも理解しておったから失念しておった。そういえば阿修凪嬢には誤用されて広まった【世界線】の意味は教えておらんかったの}
──『はい……だから、世界線と言われてもピンと来ないんですが……』
「うーん……『y●-no』とか『シュ●ゲ』とか見た事ない?」
──『……どちらも知りません……すみません……』
恐らくキヨちゃんの言う【世界線】と同じ解釈を取り上げた二本の作品を挙げてみたものの……『シュ●ゲ』はこの時代にまだなかったし、『y●-no』は18禁ゲームだったので阿修凪ちゃんは知らなかった。
ので、この二つの神作の内容を掻いつまんで説明すると、阿修凪ちゃんは納得した表情になった。
──『なるほど……川を時間に置き換えて無数の『線(せかい)』が流れる様を喩えたイメージなんですね』
──{うむ、そしてそれは間違ってはおらん。隣り合う世界は無限に存在する。その管理を司どっておるのが……ワシら夫婦というわけじゃ}
「そういえば、奥さんは見つかったの?」
──{……今はその話はどうでもよかろう。それよりも世界線の話じゃ}
キヨちゃんはバツが悪そうにして奥さんの話を即座に打ち切った。何かあったんだろうか?
──『隣り合う無限の世界……選択により新たに産み出される世界……』
──{些細なきっかけにより世界はいとも簡単に誕生する。『男』として誕生すれば阿修羅の世界となり『女』であれば阿修凪の世界となるように──何も行動しない世界もあれば、売れっ子小説家になる世界もできる。ふとした事で無限に増殖してゆくその流れを世界線と呼ぶわけじゃ。まぁ勿論、『あの時ケーキを食べたか食べていないか』くらいの細やかな変化では増えたりはせんがの……人は道を切り拓いた様を『新たな世界が拓けた』とか言うじゃろう? そのような転機には必ず道は二つに分かれ、分岐した世界が産まれるのじゃ}
「へぇ~……じゃあ俺がアシュナの時に選んだ別の選択肢の世界もあるってこと?」
──{無論じゃ。それが如実に現れたのはお主が保健室でいかがわしい事をしようとしていた(※150話~参照)時じゃな。あのまま流されていればお主は女に目覚め、阿修凪嬢の存在は露(つゆ)として消え、お主の女友達がボディーガードを糾弾(きゅうだん)し、国際問題に発展した世界になっておったぞ}
「なんで!? ちょっとした気の迷いでそんな修羅みたいな世界になっちゃうの!?」
──{それ程に選択というのは大事ということじゃ。かと言って思い悩む事は無い、たとえ自分が誤った選択をしたとしても……それもれっきとした一つの世界(みち)。『どんな世界でもそれは間違いではない』と胸を張って生きることが肝要なんじゃよ………まぁ、悪の道に走ったりするのはその限りではないがの……}
「……なんか、初めて神様っぽい事言ったねキヨちゃん。ただののじゃロリ要員でしかなかったのに」
──{お主は段々と神に対する敬いが消え失せておるぞ?}
──『…………自分の選択で世界は増える……』
「納得した? 阿修凪ちゃん」
──『……はい、ありがとうございます』
長々と話し、時間は22時を過ぎていておっさんは眠くなってきたのでここいらを潮時にして──早速、世界線の移動を試みる。
{──では、良い夢(たび)を}
まずは試験的に、学生時代……【アオク】に出会った時の夢へと出掛けてみるとしよう。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる