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第5節 女子高生(おっさん)の日常と、いとも愛しい夏休み

おまけ.女子高生(おっさん)の残夏~『アオクと世界線』②

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──{──まぁ物は試しじゃ。さっそく寝て見るとよいぞ}

 キヨちゃんに新たなギフトを授けられた俺達はさっそく床についてみた。就寝前にはっきりと夢見たい世界線を脳に思い描くと……その世界線での自分になれるらしい。
 それって『明晰夢(めいせきむ)』じゃない? と突っ込みたかったが……神様が言うんだから間違いないだろうし折角貰ったものだし、なにより『明晰夢』見放題ならそれはそれで素晴らしい能力なので野暮な事は言わなかった。

「じゃあ……試しに、おっさんの世界でも覗いてみる?」

──『おじさん、神様。その前に少しいいですか?【世界線】って……物理の用語ですよね?確か四次元空間の粒子軌道……別世界なんて意味ではなかったような……』

「あれ、キヨちゃん。阿修凪ちゃんにはSFの世界線の説明してないの?」

──{おお、すまんすまん。お主が何の説明をせんでも理解しておったから失念しておった。そういえば阿修凪嬢には誤用されて広まった【世界線】の意味は教えておらんかったの}

──『はい……だから、世界線と言われてもピンと来ないんですが……』

「うーん……『y●-no』とか『シュ●ゲ』とか見た事ない?」

──『……どちらも知りません……すみません……』

 恐らくキヨちゃんの言う【世界線】と同じ解釈を取り上げた二本の作品を挙げてみたものの……『シュ●ゲ』はこの時代にまだなかったし、『y●-no』は18禁ゲームだったので阿修凪ちゃんは知らなかった。

 ので、この二つの神作の内容を掻いつまんで説明すると、阿修凪ちゃんは納得した表情になった。

──『なるほど……川を時間に置き換えて無数の『線(せかい)』が流れる様を喩えたイメージなんですね』

──{うむ、そしてそれは間違ってはおらん。隣り合う世界は無限に存在する。その管理を司どっておるのが……ワシら夫婦というわけじゃ}

「そういえば、奥さんは見つかったの?」

──{……今はその話はどうでもよかろう。それよりも世界線の話じゃ}

 キヨちゃんはバツが悪そうにして奥さんの話を即座に打ち切った。何かあったんだろうか?

──『隣り合う無限の世界……選択により新たに産み出される世界……』

──{些細なきっかけにより世界はいとも簡単に誕生する。『男』として誕生すれば阿修羅の世界となり『女』であれば阿修凪の世界となるように──何も行動しない世界もあれば、売れっ子小説家になる世界もできる。ふとした事で無限に増殖してゆくその流れを世界線と呼ぶわけじゃ。まぁ勿論、『あの時ケーキを食べたか食べていないか』くらいの細やかな変化では増えたりはせんがの……人は道を切り拓いた様を『新たな世界が拓けた』とか言うじゃろう? そのような転機には必ず道は二つに分かれ、分岐した世界が産まれるのじゃ}

「へぇ~……じゃあ俺がアシュナの時に選んだ別の選択肢の世界もあるってこと?」

──{無論じゃ。それが如実に現れたのはお主が保健室でいかがわしい事をしようとしていた(※150話~参照)時じゃな。あのまま流されていればお主は女に目覚め、阿修凪嬢の存在は露(つゆ)として消え、お主の女友達がボディーガードを糾弾(きゅうだん)し、国際問題に発展した世界になっておったぞ}

「なんで!? ちょっとした気の迷いでそんな修羅みたいな世界になっちゃうの!?」

──{それ程に選択というのは大事ということじゃ。かと言って思い悩む事は無い、たとえ自分が誤った選択をしたとしても……それもれっきとした一つの世界(みち)。『どんな世界でもそれは間違いではない』と胸を張って生きることが肝要なんじゃよ………まぁ、悪の道に走ったりするのはその限りではないがの……}

「……なんか、初めて神様っぽい事言ったねキヨちゃん。ただののじゃロリ要員でしかなかったのに」

──{お主は段々と神に対する敬いが消え失せておるぞ?}

──『…………自分の選択で世界は増える……』

「納得した? 阿修凪ちゃん」

──『……はい、ありがとうございます』

 長々と話し、時間は22時を過ぎていておっさんは眠くなってきたのでここいらを潮時にして──早速、世界線の移動を試みる。

{──では、良い夢(たび)を}

 まずは試験的に、学生時代……【アオク】に出会った時の夢へと出掛けてみるとしよう。

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