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第5節 女子高生(おっさん)の日常と、いとも愛しい夏休み
172.女子高生(おっさん)とギャルと委員長と地下ドルと養護教諭とネズミの国③
しおりを挟むその後、パーク内のあらゆるアトラクションを見たり乗ったりして回った。
食わず嫌いをしていたが……これが意外と楽しかった。中でも園内で売っていたチュロスと肉棒の美味さは筆舌に尽くしがたかった。
──『食べ物の感想じゃないですか……あと肉棒って言わないでっ』
(でも楽しいのは本当だよ、待ち時間と人混みさえなければ20年に一度くらいは来てもいいかも知れない)
──『皆既日食だってもう少し頻繁に来ますよ……』
「アシュナっち元気だねー、さすがにあたしもバテてきたよ。つーか暑すぎだよね」
「師匠は汗一つかいてませんしずっといい匂いですねー、流石っス」
懸念していた真夏の試練にも指摘されてから気づく。どうやらいつだったかキヨちゃんから貰ったギフト『自浄作用』の効果により、紫外線やらの乙女の天敵らしいものや暑さは感じても身体に害を及ぼさないようだ。意外と便利かもしれない。
「まぁでも、もう直に涼しくなってくるわよ。夕方だしね、煌花ちゃん大丈夫?」
「はいっ、ウチこんな楽しいの初めてですっ! 誘ってくれておおきにね、アシュナっ!」
「うふふ、私も久しぶりに年甲斐もなくはしゃいじゃったわ……恥ずかしいところを見せたわね」
「クラハセンセってまだ20前半っしょ? むしろアリ寄りのアリじゃん?」
「そうですよっ、自信もってください!」
「そこまで悲観したつもりもないんだけれど……そんな悪いこと言う娘はお仕置きしちゃうわよー?」
「ちがっ、励ましただけですよっ! 師匠助けて犯されるーっ!」
みんなも最初こそはぎこちなかったものの、性質的には陽寄りなメンバーはすっかり打ち解け合っていた。
そんな中で、浮かない──というか浮いているような表情をしていたのは……もはや一人だけだった。
「……いいの? 来なくて……過程はどうであれ、キミが今この風景を作ったんだよ?自分(おっさん)とばかり喋って初ディィゥ●ゥィィヌゥィーを終わらせるつもり?」
──『……でも……私…………まだ……皆さんと普通に喋れる自信が無くて……』
「少しずつでいいんだよ、駄目そうだったらすぐに交代すればいい。じゃ、代わるよ」
──『えっ!? まっ──』
………
……………『ほら、代われた。さっきみたいに拒否反応をだしてないってことは……『代わってみたい』って少なからず思ってたって事だ』
「……で……でも……ま………まだっ……心の準備がっ……」
入れ替わると、阿修凪ちゃんの焦燥──心の動悸がめちゃくちゃ速くなるのがおっさんに伝わってきた。
焦り、混乱、恐怖……逃げたいという気持ちがひしひしと流れ込んでくる──どうやら『中』に入ると『外』を司(つかさど)る主人格の感情や感覚がまるで液体のように注入されてくるらしい。
マジで『おS●X』みたいである。
どうやら『中』側の心の内は『外』側人格に伝わらないようでいやらしい事を考えても阿修凪ちゃんは反応しなかった。
──『あぁ……阿修凪ちゃんの中、あったかいなりぃ……』
「………」
セクハラにも反応しない、どうやら相当に追い込まれているらしい。
昔の自分を見ているようで少し罪悪感を覚えるが──これから先の未来を考えれば、彼女とここで交代するわけにはいかない。
──『阿修凪ちゃん、俺がおっさんになって唯一得た教訓を一つ、教えてあげよう』
「な……なんですか……?」
──『将来の自分に嫌な事を押し付けない方がいい──マジで後悔する、いや、後悔しかしない。おっさんも同じだった……学生時代に逃げた事や後回しにした事が何十倍の苦労にもなっておっさんにまわってきて──その結果、おっさんみたいな哀しきモンスターが産まれてしまったのだ』
これ程の説得力をもつ言葉は他にあるまい、別世界だけど……未来の哀れな姿による自分からの助言だ。
何年後かの自分に責を押し付ければ、確かに今は楽になるだろう。
しかし、それは本当に先延ばしにしかならず……やはり問題は手遅れになる前にクリアしなければ後々に肥大化して襲いかかってくる──骨身に沁(し)みて理解できたおっさんの体験談だ。
「………………………」
それを聞いても、阿修凪ちゃんは固い表情を崩さない。だが……彼女の心は隠しようもなく、おっさんへと伝わってくる──その感情は……
「……おじさん、そんなダメなおじさんからのアドバイスで……私が変われると思いますか?」
静かな──それでいて、とても熱い『決意』だった。
「──だから、私は変わります。証明してみせます。おじさんのいた未来のことは私はわかりませんけど………私はおじさんがダメな人だなんて思いませんから。だから変わって見せます。そうすれば……おじさんも自分がそんなにダメな人間じゃないって思えますよね?」
阿修凪ちゃんはそう言って、ミクミク達のつくる輪の中へと足を踏み出した。
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