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第5節 女子高生(おっさん)の日常と、いとも愛しい夏休み

150.女子高生(おっさん)と親衛隊

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「ただいまー」
「お帰りなさいあなた、ご飯にする? それとも三人目つくる?」
「おい! 二人の愛しい娘達に聞かれたらどうするんだ!」
「大丈夫よ、マナは勉強で部屋にこもってるし……アシュナは友達の家に泊まりに行ったから」
「な……なんだ、あの明るい三人の女の子達か? それとも警視庁のお嬢様のところか?」
「いいえ、年末に泊まりに来たオタクの子達」
「アシュナぁぁぁぁぁっ───!!」

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〈ケンの家〉

 ──なんて父と母の混沌と叫喚な会話が繰り広げられているだろう事を忘れ、俺は同志達と共にケンの家に泊まりに来ていた。
 目的は夏休みに開催されるコミケ参戦へ向けての会議(うちあわせ)だ。俺の家には既に同居人であるSPのカザカちゃんがいるため泊まらせるわけにはいかなかった。無論、猛反対されたがお泊まり会への同行の申し出も断った。いくら何でもこんな見知らぬ男だらけの巣にあんな可愛い子を随伴させるわけにはいかない。

 何故、そうまでして女子高生となった身である俺がそんな野獣の巣へ泊まりがけしてまで会議をしているか──勿論、以前みたいに同志同士のこの落ち着ける時間を大切にしているという意味も過分に含んでいるのだが……それ以上に、大事な意味があった。

「──それで、なにか計画はあるの? ケン」
「ふふ……当然でござる、我らの初陣を飾るに相応しい計画でござるよ!」

 そう、俺達は今回がコミケ初参戦──彼らはまだ高校二年生なのだから当然と言えば当然かもしれないが……精神がアラフォーのおっさんも実は、コミケには未だ行った経験が無いのである。
 理由を述べてしまえば至って単純で……単に興味が湧かなかっただけ。より正確に言えばオタクであっても分野が違ったからとでも言うべきだろうか。

『コミックマーケット』──別名を『オタクの祭典にして聖地』。ありとあらゆるポップカルチャーが集結する場で、夏と冬に東京で開催されるその祭りではあらゆるタイプのオタクがこぞって押し寄せる。
齢を重ねてネットや伝聞の知識のみで得た情報によれば……そこへ行く目的は大まかに2つに絞られるらしい。
 一つは【同人誌やグッズ目的】、一つは【コスプレ目的】だ。友好を広めたり……雰囲気を楽しんだりする人間もいるにはいるらしいが、そんな物見遊山で訪れてはいけない戦場であるとネットには書かれている。

 そこへ至って前世の俺は──アニメや漫画、ゲームやフィギュア好きなオタクではあったが……コスプレには興味無かったし、公式ではないものにはなるべく手を出さなかったし、一緒に行く人間もいなかったりで必然的にコミケに行く必要性も感じていなかったのだ。
 ケン達もケン達で、前世の高校在学中は小説執筆の魅力に取り憑かれていたのでコミケに行くというイベントも起きなかった。

 つまり全員がコミケ初心者──故にこうして泊まりがけで作戦を練らなければならない、というわけだ。

「その作戦とは──」
「あ、ちょっと待って。その前に……時間遅くなっちゃうしお風呂借りていい? 今日暑かったから汗で気持ち悪くてさ……」
「んぬるふぅっ! ももも勿論よよよ良いでござるるるよっ!」

 風呂を借りようとすると筋肉男以外の三人が目に見える動揺を見せた。別にそんな義理はないけれど、修学旅行時にこいつらとも想い出づくりはできなかったので……お詫びじゃないけど、悪戯心で少しサービスしてあげる。

「……………一緒にみんなで入る……? ……なーんて」
「「「はっ………はいっ!!!」」」
「あはは、じょ、冗談だよ……」

 血走った眼で、真顔になる童貞三人。若干ひきつつもそんな挙動が面白くてちょっと遊んであげようと企んだ。まだまだ夜は長いんだから。


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