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第3節 女子高生(おっさん)の日常といともたやすく行われるアオハル
74.女子高生(おっさん)と素晴らしきこの世界……からの──
しおりを挟む〈午後1時 市内〉
昼下がり──雲一つない青空の下、遠景には田舎特有に田園地帯と鉄塔、野焼きの煙、春真っ只中を告げる緑緑とした山々……忙しい日常を忘れさせるのんびりとした風景を眺め、俺は駅から家までの帰路を歩く。
テスト期間中なので午前中で学校終わり、気分により電車通学といつもとは違う道を選択したのはどうやら正解だったようで、風景を楽しみながら歩いていると心が澄み渡っていくのを身体でも感じる。騒がしい毎日から隔離されたような静かな一時はおっさんの疲れを癒していく。
(こんなにもゆっくり地元を歩くのは……中学生以来かな……二十歳で上京して十数年……たまに帰省はしてたけど散歩なんてしなかったからなぁ……こんなにも清々しい気持ちになるのは女子高生の今が充実してるおかげかな?)
やがて市内を横断する川沿いに伸びるサイクリングロードにたどり着く。まるで共に海まで続くかと錯覚させられるこの道は、住宅地と緑一色の地を同時に眺めることができて散歩にはもってこいだ。
平日の昼間であるためにちらほらとすれ違うのは、健康維持の為に歩いていると思われる高齢の方やジョギングに精を出す中年達。それに下校時刻なのかランドセルを背負いはしゃぐ子供たちの声──春風と草花が奏でる自然の音楽に味わいを添えている。
(のどか……この川が現世と夢の境目みたいで……夢見心地になってくる……)
最高の居心地に浸ったせいか、普段では出てこないような高尚な表現が次々と頭に浮かぶ。これは小説の執筆作業にはもってこいだと、川へり草原の丘に腰を降ろした。
水の流れる音、遠く聞こえる車の排気音、鳥の囀(さえ)ずり、学校のチャイム、花舞いそよ風……全てが今この時に感じた想いを書き留めるためにお膳立てされたものかと錯覚してしまいそうになる。
(なんて爽快……おっさんになってからは低俗な考えしか浮かばなくなってしまったというのに……風流というものがここまで自身を気高くしてくれるとは……今日は邪(よこしま)な気持ちは封印して綺麗な世界を感じよう)
どこまでも続く青い空、暖かい日の光、なだらかな清流……全身でそれらを感じていると──ふと、橋の下に何かがいるのが目についた。
いたのはランドセルを背負った小学生達だ。
(ふふ、可愛い坊や達だこと)
普段のおっさんは小学生男子など気にも留めないところだが、今の自分は自然と一体化した高位の存在。穏やかな心で見守ることにした……が、様子がおかしいことに気付く。
小学生男子達はなにかを囲むように輪になり、しゃがんだままに動かない。俺からはその『なにか』が見えないが……聡明なおっさんは直感する。
(あ! あれ絶対エロ本読んでる! エロ本だエロ本! あそこエロ本スポットなんだよなー! 懐かしい! おっさんも混ぜてもらおう!)
エロ本には勝てなかったおっさんは、厳(おごそ)かな空気感もなにもかもを忘れてエロガキ達に特攻した。
〈続く〉
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