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第1章 異世界と球技『アイスクラッシュヘヴン』
じゅうろくたまっ!
しおりを挟むビュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ…………!!
一陣の風がフィールドに舞った。
『っ!突然ミィシャン選手からまばゆい光が放たれアースリンドウの面々の視界を眩ませたーっ!かくいうわたくし達も予期せぬ事に実況が止まってしまったわけだがー……光もおさまりそろそろ目も慣れてきたんだけど……』
『ぅう…エンジェリアも目がしぱしぱする、一体…ボールアイの狙いは何………………え!?』
「っ、小癪な真似を…こんな事で我等を惑わせるとでも……?!」
「「「!!」」」
相手チームの全員がフィールドにつくられた違和感に気づく。
「ボールは!?それにっ……!この氷の道は…………っ!?」
それはフィールド中央の坂から伸びた…長い氷の道。
ミュリお姉さんが造った……天まで伸びるような長い長い氷の…勝利への道。
「アイギール!!ボールはっ!?」
「え…………あ……っ!?ないっ!?回復のやつは持ってねえぞ!?」
「!!」
「マリアッ!あの子がいませんっ!アイノタマが!」
「マリアさんっ!あの風使いもいないよっ!?フィールドのどこにも!!」
「!!!?」
〈試合時間残り…50秒〉
【アイスメイクシールド】
ピキィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!
「「「!!」」」
『おっとぉ!?何故かここでミュリフォーリア選手が氷像を守る氷の壁を張ったーっ!!?しかも……っ自陣の氷像ではなくっ相手の氷像前にーっ!?これはどういう事だーっ!!?』
「決まっているでしょう?邪魔させないためよ」
『その前に…フィールドにボールがない!?誰もボールを持っていない!?いや、アイノタマとフウジンの姿が見えない!?一体彼女達はどこへ!?』
ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥ……
〈試合時間残り…30秒〉
「ミュリフォーリア!貴女の狙いは一体……っ!?」
「………不思議よね、今さらだけどあの子は一体何者なのかしら……なんか抜けているように見えてこんな大胆な作戦を迷いなく実行して…」
「本当だにゃ~……しかもウチらのためじゃなくボールのためとかわけわかんにゃい事言い出すしにゃ~…けど」
「その眼には…何か確たるものがあって……本当にお話しに出てくる『球技の女神』様そっくりです」
ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ………
〈試合時間残り……20秒〉
『さぁ試合時間は残り20秒!アースリンドウの選手達はボールの所在が不明の為一切攻撃できずにいるっ!しかしボールアイもこのまま時間を迎えれば敗北となってしまうがっ!?』
「この……氷の道…っ!重力っ…まさかっ!?」
------------------------------------------
「うわぁぁぁぁぁっ!?高いっ!!高いよフウちゃんっ!」
「今更だな、お前が高い所から落ちると言ったんだろう、おたま」
私達は今、空を翔んでいる。
いや……正確に言うと空に飛んでいる。
そう、これが私の作戦……陳腐で穴だらけで…どうしようもない程シンプルな作戦。
「安心しろ、狙いを定めるために途中までは一緒に落ちてやる。そうすれば落下スピードは更に増し衝撃はまるで隕石の如く跳ね上がるだろう」
「本当にお星様になっちゃいそうな高さだよ~!」
ヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
でも凄いな、空から見ると本当に異世界なんだなって実感するよ。
空に浮かんでる街、色とりどりの星、そこらへんを飛び回る竜さん。
見渡す限りの大自然、本当にこんな世界があるんだな~。
……なんて呑気な事を言っている間に今、私の体にかかっている何倍もの重力に引っ張られて…私達は球技場へ落下していく。
ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!
わぁっ…凄いっ!下には氷に包まれた巨大な闘技場が見える。
あれが私達が試合を行ってた球技場なんだ!外から見るとなんか教科書で見たコロッセオみたいな感じだよ!
ビュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
「そろそろ行くぞおたまっ!!覚悟を決めろっ!」
「……っ!うんっ!!やって!フウちゃんっ!」
私はボールを胸に抱き抱える、…安心してボールちゃん。
私は最後まで共にいるよ。
だから……力を貸してね。
目を瞑り、覚悟を決める。
目指すのは勿論……………相手チームの氷像!!!
【暴化旋風斬】!!
ビュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
フウちゃんの風に押され、私はより速度を増してフィールドに落下する!!
もう目なんか開けてられないけど…っ、フウちゃんがきっと狙いを定めてくれた!
私は、私にできる事は……!
最後までボールを信じて一緒にいる事だから!
ボオッ!!!
------------------------------------------
〈試合時間残り…10秒〉
『おーっとぉ!!!空から竜巻が物凄い勢いでアースリンドウの氷像へ落下してくるっ!!?そしてっ…!その竜巻の先には…何とアイノタマ選手だーっ!!まるで隕石のようにっ!炎を纏いながら氷像へと垂直に落下するーっ!!』
『最初からこれが狙いだった!?わざと重力をかけられて重くして……球と一緒に空から落下して氷像を壊すつもりで!?』
〈試合時間残り…5秒〉
「なっ!?マリア!アイギール!シルフィ!何とか妨害をっ!」
「もう遅いわよ、それに…あたくしがそんな事許さないわ。いって……おたま」
〈試合時間残り…3秒〉
「「「「行けーーーーっ!!おたまーっっっっっ!!!」」」」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!
〈試合時間終了〉
……
……………
……………………
………………………………
パラパラ……パラパラッ……
『…………す、凄まじい衝撃でした…まるでこの球技場そのものが破壊されるくらいの……氷像は…どうなったのでしょうか……?そしてまるで自爆のような攻撃をしたアイノタマ選手は無事なのでしょうか…?審判による判断が待たれます…』
『ボールアイの氷像残耐久値は5%……勝利にはアースリンドウの現状耐久値は60%だから…56以上の破壊率を与えてなければいけない…加えてアイノタマも無事である事が条件……』
シュウゥゥゥゥゥゥッ……カツ…カツ…カツ…カツ…
「……………………アースリンドウの氷像は……………あらあら…」
カツ……カツ…カツ…カツ…
「………そして……アイノタマ……貴女は………………あらあら……うふふ」
カツ……カツ……カツ……カツ…シュウゥゥゥゥゥゥッ!
『さぁ!審判による結果がでましたっ!モニターに表示されますっ!果たして勝者はっ!?』
〈試合結果発表〉
【ボールアイ王国】
・氷像損傷率…95%
・フウジンHP35%・ミュリフォーリアHP21%・ニャンコHP40%・ミィシャンHP97%
【アースリンドウ連邦国】
・氷像損傷率……98%
・アイスマリアHP100%・カタリールHP100%・アルム・ド・ロンドHP100%・シルファニアHP75%・アイギールHP100%
・アイノタマHP13%
『奇跡の逆転劇ーーーーーーーーーーーーっ!!勝ったのはなんとっ【ボールアイ王国】だぁーーーーーーーーーーーーっ!!』
ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!
えへへ…よかったぁ……勝てたみたい……
死ななくてよかったぁ…正直それだけが…ぅうん、全部心配だったんだけど…。
死んじゃったら氷像壊しても試合は負けになっちゃうもんね…本当よかったぁ…
「「「「おたまっ!(さんっ!)」」」」
皆が心配そうな顔して駆け寄ってくれた…うん。よかったよ…勝つ事ができて…。
でも…何か疲れちゃったんだ…少し…寝させてほしいなぁ…。
うん…試合は終わったからいいよね?少し…ほんの少しだけ……
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