上 下
14 / 30
第1章 異世界と球技『アイスクラッシュヘヴン』

じゅうさんたまっ!

しおりを挟む

ピーッ!!

『さぁ、ホイッスルとともに試合再開!ボールを持つのはもう後がないボールアイ王国っ!アタッカーが負傷した今!一体どのように攻撃するつもりなのかっ!』
『注目すべきは…公式出場記録のない謎の存在【アイノタマ】。彼女がどんな属性でどんなプレーを魅せるのか…注目したい』


「みゃははっ!棄権すればよかったのに~、もう勝ち目なんてないんだからっ!」
「正しい、選手生命を縮めるだけだというのに全く正しくない判断だ」
「………どう思います?マリア」
「……そうね…気をつけるとすればアイノタマとかいう子だけど…彼女のサブ属性はミュリフォーリアがかけた加護により『氷』で決まり……例えメインがどんな属性であっても…我ら全員ならば対処できるはずよ」

ザッ!!

「「「「!!?」」」」

相手チーム全員が驚いた顔をする。
ボールを持って…フィールド中央に立つのは……『防御』属性のニャンちゃん。

「にゃはっ、さぁプレー再開にゃ」

(…一体どういうつもり?防御属性の亜人を氷像前から外すなんて…では氷像前は誰が…………………………………っ!?)

相手チームのキャプテンさんが私達の氷像の方を向いて更に驚く。

『あーっと!?これは一体どういう事だーっ!!?ボールアイ王国、氷像前ががら空きだーっ!!?他の選手達は一体どこに!?』
『……!あそこ!ボールアイ側の氷像の後ろに全員いる、……そうか!氷像を乗せる台座にはボール以外…攻撃を通さない【アンチアタック】【アンチマジック】が張られている。攻撃は全て吸収される、確かに攻撃の余波を避け回復するならあそこが一番………でも』
『そう!ニャンコ選手以外の全員が氷像に隠れている!これではボールを奪われればすぐに勝敗が決してしまうぞー!?何かの作戦なのかーっ!?』

三人にはこれ以上ダメージを負ってもらっちゃ困るんだ。
最後の3分間を…万全とまではいかなくても動けるくらいまで回復してもらわなきゃ……頼んだよ、ミーちゃん!ニャンちゃん!

「………ふ、ふふ、ふふふふ……とことん、とことんまで嘗めてくれるわ……貴女一人で我ら全員の相手でもするというの…亜人!」
「にゃはっ、悪いかにゃ?あー、やっぱ本性を出すと身軽だにゃ。おたまに亜人ってことがバレないように隠してたんにゃけど……おたまにはバレても問題にゃかったにゃ。アイツはいいヤツにゃ」
「…何をわけのわからない事を……」
「逆にお前らバカ魔女達にどう思われてもどうでもよかったにゃ、お前らの持ち上げてるダサい何とかの魔女は粉々に破壊してやるから覚悟しておくんだにゃ」

「……何ですって?」「また…この亜人は許してはおけません!」「全くだ……何もかも正しくない…思い知らせてやろうではないか」「殺す!」

ニャンちゃんの挑発に相手チーム前衛の全員がのる。
そんなに怒らせなくてもいいんだよ~!
でもニャンちゃんは余裕の笑みで動き出す。

バッ!!

【絶氷血雨の舞】【ネオ・サイクロンバスター】【グラビティショット】

ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!

「にゃあぁぁぁぁっ!?」

ニャンちゃんを四方八方からのつららと竜巻と空気の揺れが襲った!
たまらず叫び出すニャンちゃん!

「にゃーんてにゃ♪猫人族の素早さをなめちゃいけにゃいにゃ!」

シュバババババババババッ!!!

「「「!!?」」」

それらを全て紙一重で避け、フィールドの至るところにニャンちゃんはボールを片手に持ちながら猫さんみたいに飛び移る!

シュババババババババババババババッ!!!
円柱形のフィールド全てを使い自由に動き回るニャンちゃんに相手チームも攻撃を当てようと躍起になる!

「ちぃっ!!すばしっこいわね!!」
「猫人の亜人は回避に長けていると聞いてはいましたが…」

「アルム!アンタの能力で何とかならないのっ!?」
「正しくない、私の能力はあくまでサポート。対象の不意を突く事が前提になる、あんなに素早く動かれてはどうしようもない」
「ちぃっ!!使えないわね!」
「君こそ風使いならばあれより速く動いたらどうだ?何のための風だ?」
「何ですって!?」

ニャンちゃんのあまりの素早さに相手チームが仲間割れを起こす!
あと4分……っ!

パアアアアッ……

こっちではミーちゃんが片手ずつでフウちゃんとミュリお姉さんを回復している。
片手ずつだと全快するまでより時間がかかるみたいだけど…しょうがない。
二人に時間までに動けるようになってもらわなくちゃいけないんだ!
でも二人共…傷は酷いけどギリギリ意識だけは保てているみたい!

「お……たまっ……いい加減……説明しろっ…!時間を稼ぐだけで…どうするっ!?攻撃しないと……間に合わないだろうっ!」
「……フウジン……待って………何か……考えが……ある…んでしょ……おたま……?」

「うん、でも今はニャンちゃんが無事にやり遂げてくれる事を信じて集中させて。それに……」

残り1分になったら私も出ていかないと。
「それ」も上手くやらないといけない、正直無謀で穴だらけの…ほとんど作戦とは呼べない賭けに近いけど…。
残り……3分。

ズバッ!
「にゃっ!?」
「!」

ニャンちゃんの腕につららがかすった!
ごめんっ!耐えてっ……ニャンちゃんっ!

「規則性の無い動きで予測するのは難しい……けど、魔女をなめないでと何度も言ったはずよ!」

ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!

「にゃは~っ!さすがに体力が無くなってきたにゃ……けどっ!これしきっ!!」

シュバババババババババババババババババババッ!!

ところどころをつららが掠める。
あの猛攻を避け続けてさすがに汗をかき始めるニャンちゃん。
ごめんニャンちゃん、あと少しだから。
もう少し……頑張って!

シュババババッ!
・ニャンコ…ダメージ9%……残りHP75%

シュババババババババババッ!
「はぁっ!はぁっ…!」
・ニャンコ…ダメージ5%……残りHP70%

シュババババババババババババババババッ!
ガスッ!
「にゃあっ!?ぅぅっ!にゃあぁぁぁっ!」
・ニャンコ…ダメージ15%……残りHP55%

残り……………………………1分!!

バッ!!

「っ!?おたまさんっ!!?」「……っおたまっ……」

私は氷像前に飛び出し、フィールドを走る!
大丈夫、氷上はもう慣れた!
アイスホッケーやカーリングなら何回かやってきた!
氷の加護ってやつの力でスパイクでも大丈夫、経験を信じて!

サァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!

『おぉーっ!?戦いのフィールドにもう一人選手が乱入したぁっ!軽やかに氷上を滑り敵陣へ向かうのはっ!これまで沈黙してきた謎の助っ人…アイノタマ選手だーっ!』
『ニャンコの動きは囮?謎に包まれたアイノタマの属性が明らかになる?!』

私が向かうのは………氷像とは無関係の方向。
どこでもいい、プレーと無関係であれば!攻撃の対象外であれば!
それでもこの不気味な動きを敵チームは無視できないはずっ…必ず…止めようとするはず。

「カタリール!アルム!あの子にボールがいくかもしれない!我らはまだ攻撃できないわっ!止めなさい!」

「わかりましたマリア!」
「正しい、あのスピードなら止められる」

ババッ!

来たっ!
眼鏡の重力使いさんと宝塚の空間使いさん!

ザザザザッ!!

二人が私の前に立ちはだかった!
「貴女が何の能力を持っていようが関係ない、私の重力で氷上に頭を垂れなさい」

【グラビティショット】
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ……ズシッッ!
「ぅわわっ!?」
私の体が急に重くなった。
これがっ…重力使いさんの……予想より……ずっと重いっ…!
まるで体重が何倍にも増したみたいに……っ!

でもっ……動けなくなるわけじゃない…っ!
重さが増しただけっ……だったらっ!

ズリ………ズリ……ズリ……ズリ……
「!」
スポーツするのに必要なもの……地球の人でも皆持ってるもの…っ!
『気合いと根性』で動く事は……できるっ!
「まだ動きますか、ならば…より一層重くして差し上げましょう」

グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!
「ぅぐっ……!ぅああああっ!」
ピシッ…ピシッ…
私の体の重さがより一層増す。
あまりの重力に絶対凍土と呼ばれているフィールドもほんの少しひび割れを起こした。

よかった。
これで大丈夫そう………あとは。
「宝塚の……お姉さん……あなたの能力って……「空気の箱」…だよね?」
「!!!」
私は宝塚のお姉さんに聞いてみる。
やっぱりそうだったんだ、二人の驚いた表情で確信できたよ。
正直当てずっぽうな所もあったけど……とにかくこれで準備はできた。

「タイム!お願いします!」

試合時間……残り3分。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】 一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。 目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。 『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。 勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】 周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。 -------------------------------------------------------- ※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。 改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。 小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ! https://ncode.syosetu.com/n7300fi/ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...