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第1章 異世界と球技『アイスクラッシュヘヴン』
じゅうさんたまっ!
しおりを挟むピーッ!!
『さぁ、ホイッスルとともに試合再開!ボールを持つのはもう後がないボールアイ王国っ!アタッカーが負傷した今!一体どのように攻撃するつもりなのかっ!』
『注目すべきは…公式出場記録のない謎の存在【アイノタマ】。彼女がどんな属性でどんなプレーを魅せるのか…注目したい』
「みゃははっ!棄権すればよかったのに~、もう勝ち目なんてないんだからっ!」
「正しい、選手生命を縮めるだけだというのに全く正しくない判断だ」
「………どう思います?マリア」
「……そうね…気をつけるとすればアイノタマとかいう子だけど…彼女のサブ属性はミュリフォーリアがかけた加護により『氷』で決まり……例えメインがどんな属性であっても…我ら全員ならば対処できるはずよ」
ザッ!!
「「「「!!?」」」」
相手チーム全員が驚いた顔をする。
ボールを持って…フィールド中央に立つのは……『防御』属性のニャンちゃん。
「にゃはっ、さぁプレー再開にゃ」
(…一体どういうつもり?防御属性の亜人を氷像前から外すなんて…では氷像前は誰が…………………………………っ!?)
相手チームのキャプテンさんが私達の氷像の方を向いて更に驚く。
『あーっと!?これは一体どういう事だーっ!!?ボールアイ王国、氷像前ががら空きだーっ!!?他の選手達は一体どこに!?』
『……!あそこ!ボールアイ側の氷像の後ろに全員いる、……そうか!氷像を乗せる台座にはボール以外…攻撃を通さない【アンチアタック】【アンチマジック】が張られている。攻撃は全て吸収される、確かに攻撃の余波を避け回復するならあそこが一番………でも』
『そう!ニャンコ選手以外の全員が氷像に隠れている!これではボールを奪われればすぐに勝敗が決してしまうぞー!?何かの作戦なのかーっ!?』
三人にはこれ以上ダメージを負ってもらっちゃ困るんだ。
最後の3分間を…万全とまではいかなくても動けるくらいまで回復してもらわなきゃ……頼んだよ、ミーちゃん!ニャンちゃん!
「………ふ、ふふ、ふふふふ……とことん、とことんまで嘗めてくれるわ……貴女一人で我ら全員の相手でもするというの…亜人!」
「にゃはっ、悪いかにゃ?あー、やっぱ本性を出すと身軽だにゃ。おたまに亜人ってことがバレないように隠してたんにゃけど……おたまにはバレても問題にゃかったにゃ。アイツはいいヤツにゃ」
「…何をわけのわからない事を……」
「逆にお前らバカ魔女達にどう思われてもどうでもよかったにゃ、お前らの持ち上げてるダサい何とかの魔女は粉々に破壊してやるから覚悟しておくんだにゃ」
「……何ですって?」「また…この亜人は許してはおけません!」「全くだ……何もかも正しくない…思い知らせてやろうではないか」「殺す!」
ニャンちゃんの挑発に相手チーム前衛の全員がのる。
そんなに怒らせなくてもいいんだよ~!
でもニャンちゃんは余裕の笑みで動き出す。
バッ!!
【絶氷血雨の舞】【ネオ・サイクロンバスター】【グラビティショット】
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!
「にゃあぁぁぁぁっ!?」
ニャンちゃんを四方八方からのつららと竜巻と空気の揺れが襲った!
たまらず叫び出すニャンちゃん!
「にゃーんてにゃ♪猫人族の素早さをなめちゃいけにゃいにゃ!」
シュバババババババババッ!!!
「「「!!?」」」
それらを全て紙一重で避け、フィールドの至るところにニャンちゃんはボールを片手に持ちながら猫さんみたいに飛び移る!
シュババババババババババババババッ!!!
円柱形のフィールド全てを使い自由に動き回るニャンちゃんに相手チームも攻撃を当てようと躍起になる!
「ちぃっ!!すばしっこいわね!!」
「猫人の亜人は回避に長けていると聞いてはいましたが…」
「アルム!アンタの能力で何とかならないのっ!?」
「正しくない、私の能力はあくまでサポート。対象の不意を突く事が前提になる、あんなに素早く動かれてはどうしようもない」
「ちぃっ!!使えないわね!」
「君こそ風使いならばあれより速く動いたらどうだ?何のための風だ?」
「何ですって!?」
ニャンちゃんのあまりの素早さに相手チームが仲間割れを起こす!
あと4分……っ!
パアアアアッ……
こっちではミーちゃんが片手ずつでフウちゃんとミュリお姉さんを回復している。
片手ずつだと全快するまでより時間がかかるみたいだけど…しょうがない。
二人に時間までに動けるようになってもらわなくちゃいけないんだ!
でも二人共…傷は酷いけどギリギリ意識だけは保てているみたい!
「お……たまっ……いい加減……説明しろっ…!時間を稼ぐだけで…どうするっ!?攻撃しないと……間に合わないだろうっ!」
「……フウジン……待って………何か……考えが……ある…んでしょ……おたま……?」
「うん、でも今はニャンちゃんが無事にやり遂げてくれる事を信じて集中させて。それに……」
残り1分になったら私も出ていかないと。
「それ」も上手くやらないといけない、正直無謀で穴だらけの…ほとんど作戦とは呼べない賭けに近いけど…。
残り……3分。
ズバッ!
「にゃっ!?」
「!」
ニャンちゃんの腕につららがかすった!
ごめんっ!耐えてっ……ニャンちゃんっ!
「規則性の無い動きで予測するのは難しい……けど、魔女をなめないでと何度も言ったはずよ!」
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!
「にゃは~っ!さすがに体力が無くなってきたにゃ……けどっ!これしきっ!!」
シュバババババババババババババババババババッ!!
ところどころをつららが掠める。
あの猛攻を避け続けてさすがに汗をかき始めるニャンちゃん。
ごめんニャンちゃん、あと少しだから。
もう少し……頑張って!
シュババババッ!
・ニャンコ…ダメージ9%……残りHP75%
シュババババババババババッ!
「はぁっ!はぁっ…!」
・ニャンコ…ダメージ5%……残りHP70%
シュババババババババババババババババッ!
ガスッ!
「にゃあっ!?ぅぅっ!にゃあぁぁぁっ!」
・ニャンコ…ダメージ15%……残りHP55%
残り……………………………1分!!
バッ!!
「っ!?おたまさんっ!!?」「……っおたまっ……」
私は氷像前に飛び出し、フィールドを走る!
大丈夫、氷上はもう慣れた!
アイスホッケーやカーリングなら何回かやってきた!
氷の加護ってやつの力でスパイクでも大丈夫、経験を信じて!
サァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!
『おぉーっ!?戦いのフィールドにもう一人選手が乱入したぁっ!軽やかに氷上を滑り敵陣へ向かうのはっ!これまで沈黙してきた謎の助っ人…アイノタマ選手だーっ!』
『ニャンコの動きは囮?謎に包まれたアイノタマの属性が明らかになる?!』
私が向かうのは………氷像とは無関係の方向。
どこでもいい、プレーと無関係であれば!攻撃の対象外であれば!
それでもこの不気味な動きを敵チームは無視できないはずっ…必ず…止めようとするはず。
「カタリール!アルム!あの子にボールがいくかもしれない!我らはまだ攻撃できないわっ!止めなさい!」
「わかりましたマリア!」
「正しい、あのスピードなら止められる」
ババッ!
来たっ!
眼鏡の重力使いさんと宝塚の空間使いさん!
ザザザザッ!!
二人が私の前に立ちはだかった!
「貴女が何の能力を持っていようが関係ない、私の重力で氷上に頭を垂れなさい」
【グラビティショット】
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ……ズシッッ!
「ぅわわっ!?」
私の体が急に重くなった。
これがっ…重力使いさんの……予想より……ずっと重いっ…!
まるで体重が何倍にも増したみたいに……っ!
でもっ……動けなくなるわけじゃない…っ!
重さが増しただけっ……だったらっ!
ズリ………ズリ……ズリ……ズリ……
「!」
スポーツするのに必要なもの……地球の人でも皆持ってるもの…っ!
『気合いと根性』で動く事は……できるっ!
「まだ動きますか、ならば…より一層重くして差し上げましょう」
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!
「ぅぐっ……!ぅああああっ!」
ピシッ…ピシッ…
私の体の重さがより一層増す。
あまりの重力に絶対凍土と呼ばれているフィールドもほんの少しひび割れを起こした。
よかった。
これで大丈夫そう………あとは。
「宝塚の……お姉さん……あなたの能力って……「空気の箱」…だよね?」
「!!!」
私は宝塚のお姉さんに聞いてみる。
やっぱりそうだったんだ、二人の驚いた表情で確信できたよ。
正直当てずっぽうな所もあったけど……とにかくこれで準備はできた。
「タイム!お願いします!」
試合時間……残り3分。
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