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第一章
プロローグ
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(チッ!こんな時に…)
心の中で悪態を吐く。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時は遡る。
「今日は『軌跡のダンジョン』の20階層のボス倒しにいくか…」
俺はしがないDランク冒険者だ。
普通、冒険者は『経験値』を貯め、スキルを顕現させる。でも稀に、生まれた時からスキルを得ている者も居る。そいつらは冒険者に限らず、どの分野でも活躍しているやつが多い。俺も、生まれた時からスキルを得ていたのだが…『回帰』というどのような効果があるのかスキルだった。
鑑定もしてもらったが、結局どのような効果があるかは分からずじまいだった。
そんな俺が冒険者になったのは、憧れだ。何の計画性も無く、無謀だと思う。でも、一度きりの人生、夢を追い求めても良いだろう。
「早く現実世界に戻ってさっさとダンジョンで素材取ってきてください」
「あっ、すまん」
かなり辛口な彼女の名はミリー。冒険者ギルドの職員だ。冒険者ギルドとは国の運営する機関で、ダンジョンから得た素材はここが適正価格で買いとってくれる。直接冒険者から買い取ろうとする商人もいるにはいるが、やはり冒険者ギルドに売らないとランクは上がらないので、中々商人に売るやつは少ない。
「聞いてましたか?さっさと素材を売りにきて、私を儲けさせてください、ニクロスさん」
「は、はーい」
金の亡者め…。
「今日は『軌跡のダンジョン』の20階層のボスを倒しに行くつもりだ」
「分かりました。ではそのようにボードに書いておきますね。1週間連絡が付かなければ高確率で死亡と判断されますので、それまでに一度冒険者ギルドに立ち寄ることをおすすめしておきます」
「分かった。行ってくる」
「たくさん素材を持ち帰ってくださいね」
「ははは…」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
はぁ…はぁ…はぁ…
ようやく20階層への階段に着いたぞ…とりあえずここで体力を回復させるか。ボス部屋に入ったら出れないからな。
まず剣の血を拭いて……よし。
装備は……壊れてないな。
アイテムボックスに入ってる獲物の血抜きは……全部済んでいるな。
体力もOKだ。
ボス部屋に入る前にボスの情報を確認しようか。
ボスは大剣を持ったホブゴブリン。討伐推奨ランクはD。
主な攻撃は大剣の振り下ろしと突進。
周囲にはゴブ達と、ゴブリンアーチャーとゴブリンメイジ。
気をつけるべきはアーチャーとメイジだけだな。よっしゃ凸るぞ!
ボス部屋に入った瞬間分かった。そこは、空気が違った。
(いくらホブでもデカすぎる!こいつ、特殊個体か!)
ゴブリン達の死骸が散乱している。配下のゴブリン達の魔石を喰らって強くなったんだろう。よくよく見れば、人の死体もある。こいつに、やられたやつだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ギギッ!」
振り下ろしを間一髪のところで避けてファイアーボールを放つ…が、現時点では有効打とはなり得ない。有効打を与えるには近づいて斬るしか無いが…
(そもそも近づけねぇ!)
というかこいつ、頭が良い。俺の使える魔法がこいつに効かなかった時点で、俺には接近戦しか無いことを理解して、近づかれないようにやがる。
(絶対こいつの討伐推奨ランクC以上だろ…)
「って、うおっ!」
振り下ろしからの横薙ぎは初見だぞ!今しゃがまなかったら首落ちてたぞ…。
一回状況を整理しよう。
今の俺の目標は生き延びること。そして俺がこいつから生き延びる方法は2つある。
①他の冒険者がここに入るまで逃げ切る。
②コイツを倒す。
だけど…
「獲物の横取りは御法度。ボスと戦っていることはボス部屋手前で分かるから、救助は求められねぇ。それに、入ってきたらそいつは横取りを狙うロクでもねぇやつだから①はまず無い。せめてボス部屋の扉が防音じゃ無かったらなぁ……」
「あっ…ぶねぇ!」
袈裟斬りを後ろに飛び退いて躱す…が、少し斬られた。
「クソッタレっ!②も無理だろ!コイツをどうやって倒せば良いんだよ!」
(ジリ貧だな…。ここで死にたくはねぇぞ!)
「!!」
(チッ!こんな時に…)
心の中で悪態を吐く。
アーチャーとメイジがリスポーンしてきたのだ。
(アーチャーとメイジは無視して、無理にでもさっさと勝負を付けにいくしかねぇ!振り下ろしからの横薙ぎ、構え直して振り下ろしの体勢に…今だ!)
ボスの振り下ろしを左に跳んで避け、ボスに突進する。
(横薙ぎが来るまでに出来る限り近づかねぇと…)
だが、ボスは横薙ぎをせず、大剣を構え直す。
「流石は特殊個体と言ったところかなぁ!」
ファイアーボールをボスの醜悪な顔面へと放つ。
「ギギッ」
「ああ、流石に反応するよな!顔は弱点の一つだからな!」
ここから剣を振れば、ボスの足を斬れる…はずだった。剣を振る手を止めなければ。
「ガァッ!」
背中を焼けるような痛みが襲う。
いや、実際に焼けた。ゴブリンメイジのファイアーボールが背中に当たったのだから。
「こんな時にっ!」
ニクロスにボスの振り下ろしが迫る。
すんでのところで顔面真っ二つは避けたものの、右手が地に落ちる。
「っ!はぁ…はぁ…。ゔっ…。はぁ…」
もちろんそれで動きを止めたニクロスを逃すはずもなく、ボスがニクロスを袈裟斬りにする。
「アガッ!」
誰の目にも明らかだ。もうニクロスは助からない。ニクロスはここで、短い人生を終える。もうすぐ、その生を終える。
(ああ、ここで死ぬのか…)
死を自覚した人間は、2種類の反応を示す。
諦めるか、醜く足掻くか。
ニクロスは前者のようだった。
冒険者という職業柄、死んでいく人たちを見てきたから、なのかもしれない。
とうとう、ボスがその大剣を振り下ろす。
ニクロスの頭はグシャグシャに潰れ、呆気なく、その生涯を閉じた………
はずだった。
心の中で悪態を吐く。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時は遡る。
「今日は『軌跡のダンジョン』の20階層のボス倒しにいくか…」
俺はしがないDランク冒険者だ。
普通、冒険者は『経験値』を貯め、スキルを顕現させる。でも稀に、生まれた時からスキルを得ている者も居る。そいつらは冒険者に限らず、どの分野でも活躍しているやつが多い。俺も、生まれた時からスキルを得ていたのだが…『回帰』というどのような効果があるのかスキルだった。
鑑定もしてもらったが、結局どのような効果があるかは分からずじまいだった。
そんな俺が冒険者になったのは、憧れだ。何の計画性も無く、無謀だと思う。でも、一度きりの人生、夢を追い求めても良いだろう。
「早く現実世界に戻ってさっさとダンジョンで素材取ってきてください」
「あっ、すまん」
かなり辛口な彼女の名はミリー。冒険者ギルドの職員だ。冒険者ギルドとは国の運営する機関で、ダンジョンから得た素材はここが適正価格で買いとってくれる。直接冒険者から買い取ろうとする商人もいるにはいるが、やはり冒険者ギルドに売らないとランクは上がらないので、中々商人に売るやつは少ない。
「聞いてましたか?さっさと素材を売りにきて、私を儲けさせてください、ニクロスさん」
「は、はーい」
金の亡者め…。
「今日は『軌跡のダンジョン』の20階層のボスを倒しに行くつもりだ」
「分かりました。ではそのようにボードに書いておきますね。1週間連絡が付かなければ高確率で死亡と判断されますので、それまでに一度冒険者ギルドに立ち寄ることをおすすめしておきます」
「分かった。行ってくる」
「たくさん素材を持ち帰ってくださいね」
「ははは…」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
はぁ…はぁ…はぁ…
ようやく20階層への階段に着いたぞ…とりあえずここで体力を回復させるか。ボス部屋に入ったら出れないからな。
まず剣の血を拭いて……よし。
装備は……壊れてないな。
アイテムボックスに入ってる獲物の血抜きは……全部済んでいるな。
体力もOKだ。
ボス部屋に入る前にボスの情報を確認しようか。
ボスは大剣を持ったホブゴブリン。討伐推奨ランクはD。
主な攻撃は大剣の振り下ろしと突進。
周囲にはゴブ達と、ゴブリンアーチャーとゴブリンメイジ。
気をつけるべきはアーチャーとメイジだけだな。よっしゃ凸るぞ!
ボス部屋に入った瞬間分かった。そこは、空気が違った。
(いくらホブでもデカすぎる!こいつ、特殊個体か!)
ゴブリン達の死骸が散乱している。配下のゴブリン達の魔石を喰らって強くなったんだろう。よくよく見れば、人の死体もある。こいつに、やられたやつだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ギギッ!」
振り下ろしを間一髪のところで避けてファイアーボールを放つ…が、現時点では有効打とはなり得ない。有効打を与えるには近づいて斬るしか無いが…
(そもそも近づけねぇ!)
というかこいつ、頭が良い。俺の使える魔法がこいつに効かなかった時点で、俺には接近戦しか無いことを理解して、近づかれないようにやがる。
(絶対こいつの討伐推奨ランクC以上だろ…)
「って、うおっ!」
振り下ろしからの横薙ぎは初見だぞ!今しゃがまなかったら首落ちてたぞ…。
一回状況を整理しよう。
今の俺の目標は生き延びること。そして俺がこいつから生き延びる方法は2つある。
①他の冒険者がここに入るまで逃げ切る。
②コイツを倒す。
だけど…
「獲物の横取りは御法度。ボスと戦っていることはボス部屋手前で分かるから、救助は求められねぇ。それに、入ってきたらそいつは横取りを狙うロクでもねぇやつだから①はまず無い。せめてボス部屋の扉が防音じゃ無かったらなぁ……」
「あっ…ぶねぇ!」
袈裟斬りを後ろに飛び退いて躱す…が、少し斬られた。
「クソッタレっ!②も無理だろ!コイツをどうやって倒せば良いんだよ!」
(ジリ貧だな…。ここで死にたくはねぇぞ!)
「!!」
(チッ!こんな時に…)
心の中で悪態を吐く。
アーチャーとメイジがリスポーンしてきたのだ。
(アーチャーとメイジは無視して、無理にでもさっさと勝負を付けにいくしかねぇ!振り下ろしからの横薙ぎ、構え直して振り下ろしの体勢に…今だ!)
ボスの振り下ろしを左に跳んで避け、ボスに突進する。
(横薙ぎが来るまでに出来る限り近づかねぇと…)
だが、ボスは横薙ぎをせず、大剣を構え直す。
「流石は特殊個体と言ったところかなぁ!」
ファイアーボールをボスの醜悪な顔面へと放つ。
「ギギッ」
「ああ、流石に反応するよな!顔は弱点の一つだからな!」
ここから剣を振れば、ボスの足を斬れる…はずだった。剣を振る手を止めなければ。
「ガァッ!」
背中を焼けるような痛みが襲う。
いや、実際に焼けた。ゴブリンメイジのファイアーボールが背中に当たったのだから。
「こんな時にっ!」
ニクロスにボスの振り下ろしが迫る。
すんでのところで顔面真っ二つは避けたものの、右手が地に落ちる。
「っ!はぁ…はぁ…。ゔっ…。はぁ…」
もちろんそれで動きを止めたニクロスを逃すはずもなく、ボスがニクロスを袈裟斬りにする。
「アガッ!」
誰の目にも明らかだ。もうニクロスは助からない。ニクロスはここで、短い人生を終える。もうすぐ、その生を終える。
(ああ、ここで死ぬのか…)
死を自覚した人間は、2種類の反応を示す。
諦めるか、醜く足掻くか。
ニクロスは前者のようだった。
冒険者という職業柄、死んでいく人たちを見てきたから、なのかもしれない。
とうとう、ボスがその大剣を振り下ろす。
ニクロスの頭はグシャグシャに潰れ、呆気なく、その生涯を閉じた………
はずだった。
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