上 下
15 / 15

エピローグ『日常』

しおりを挟む
「んー……」
オレはかけていた布団を跳ね除けた。
ふと自分の手を見る。―肌色。指は五本だった。
オレはジャンプをし、手を挙げて喜んだ。
「人間だあー!!!よっしゃあああ!!!!」
騒がしい音にお母さんが寝室に入ってくる。
「陸、何言ってるのよ。人間だなんて当たり前のことでしょう?」
どうやらお母さんは、オレが前まで人間じゃなかった事を覚えていないようだ。覚えていないというより、何かの機能で……みたいな感じだった。
お母さんは続けた。
「それより今日受験でしょう?まだ勉強してないなら、今起きてやりなさい」
オレはコレまでの出来事で一杯で、勉強なんて一ミリもしていない。それどころか、受験があることも知らない。オレが冒険をしている時期に知らされたのだろう。
オレは急いで起きて、勉強机と向かい合った。
今まではダラダラしていたが、
流石に落ちるのは嫌だった。
―それこそ、『ダラル』なのだろうと思った。
「早くしなさいよ」
お母さんの声がする。オレは筆を走らせるスピードを高めた。

いつもの日常。―でも、オレに新たな出会いが待っている気がした。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。


処理中です...