9 / 15
ジュラルの正体
しおりを挟む
その日オレ達は日が暮れるまで遊んだ。
通りすがりの男の子にかまってもらったり、ポメラニアンに嫌われたり、いっぱい出来事があった。
「ねえ、今日は早めに寝ましょうよ」
りんがそう吐いた。ジュラルも賛成だった。
「そうだな。疲れたし、みんなも足ダルいだろ」
オレ達は寝る準備をし、夜を眠り通した。
「……!!」
オレは悪夢に起こされた。明け方頃の事だった。
―嫌な夢だったな。
りんは寝言をブツブツ言っている。たい焼きをもう食べれないだの、サッカー選手になっただの、意味不な言葉を発していた。
「……あれ、ジュラルは?」
不意に、揮の声がした。
振り向くと、揮がきょろきょろしてジュラルを探している。―起きてたのか。
―そういえばジュラルがいない。
またかよ。
「りん、後でたい焼きやるからジュラル探すぞ」
オレが耳元で囁くと、りんは「ホント!?」と嬉しそうに飛び跳ねた。
「揮、行くぞ!」
オレとりんは揮に続きゆっくり歩き出す。
この時、オレ達はどこに行くか決まっていた。
「……やっぱりね」
りんが唖然とする。
ジュラルは前回と同様、神社にいた。心なしか、ジュラルの手が綺麗すぎるように見えた。
ジュラルはポツリと呟く。
「なんで……」
その後、りんが強い口調で怒鳴った。
「何をしに行ってたの?」
ジュラルは少し黙り込んでから、情けない声で叫んだ。
―情けないけれど、不思議な一言だった。
「実は、俺人間なんだ!」
「……え?」
揮とりんが同時に声をあげる。オレも目を丸くした。
ジュラルは続けた。
「朝起きたら、こうなってて!それで、元に戻ろうとしていたんだ……」
オレ達は喋らなかった。ジュラルが真剣な話をしているのが分かったからだ。
そして、オレは気づいたんだ。
ジュラルも、あの光によって犬になってしまった事を。
起きたら、犬になっていた。オレと、りんと、揮と、全く同じだ。
けれど、一つオレ達と違うところを見つけた。
オレは思わず尋ねた。
「なんで元に戻ろうとしたんだ?」
犬は最高の生き物。人間になんて戻ろうとしなくてもいいのに。
―勉強にやたら反応するのは、ジュラルが勉強嫌いだからだ。
「このままだと、何もかも不便だ。人間の方が出来ることも多い。だから……」
「なーに馬鹿な事考えてるんだ」
オレは呆れ、小さい声で呟いた。
「それは……」
オレはトドメの一撃の言葉を放った。
「お前、勉強嫌いなんだろ?しなくていいだろ?動物は好かれまくって幸せだろ?」
ジュラルはオレに共感したのか、反論しなくなった。
「このまま、オレ達と一緒に生きようぜ」
「……いい」
とても小さな声だったので、オレは聞き取れなかった。
「?」
「いいよ」
ジュラルは切なそうな表情を浮かべて、オレについていく事を誓った。
りんと揮は黙り込んでいる―が、ちょっとだけオレを睨んでいるような気がした。
こうして、オレ達とジュラルは死ぬまで暮らす事になった。
通りすがりの男の子にかまってもらったり、ポメラニアンに嫌われたり、いっぱい出来事があった。
「ねえ、今日は早めに寝ましょうよ」
りんがそう吐いた。ジュラルも賛成だった。
「そうだな。疲れたし、みんなも足ダルいだろ」
オレ達は寝る準備をし、夜を眠り通した。
「……!!」
オレは悪夢に起こされた。明け方頃の事だった。
―嫌な夢だったな。
りんは寝言をブツブツ言っている。たい焼きをもう食べれないだの、サッカー選手になっただの、意味不な言葉を発していた。
「……あれ、ジュラルは?」
不意に、揮の声がした。
振り向くと、揮がきょろきょろしてジュラルを探している。―起きてたのか。
―そういえばジュラルがいない。
またかよ。
「りん、後でたい焼きやるからジュラル探すぞ」
オレが耳元で囁くと、りんは「ホント!?」と嬉しそうに飛び跳ねた。
「揮、行くぞ!」
オレとりんは揮に続きゆっくり歩き出す。
この時、オレ達はどこに行くか決まっていた。
「……やっぱりね」
りんが唖然とする。
ジュラルは前回と同様、神社にいた。心なしか、ジュラルの手が綺麗すぎるように見えた。
ジュラルはポツリと呟く。
「なんで……」
その後、りんが強い口調で怒鳴った。
「何をしに行ってたの?」
ジュラルは少し黙り込んでから、情けない声で叫んだ。
―情けないけれど、不思議な一言だった。
「実は、俺人間なんだ!」
「……え?」
揮とりんが同時に声をあげる。オレも目を丸くした。
ジュラルは続けた。
「朝起きたら、こうなってて!それで、元に戻ろうとしていたんだ……」
オレ達は喋らなかった。ジュラルが真剣な話をしているのが分かったからだ。
そして、オレは気づいたんだ。
ジュラルも、あの光によって犬になってしまった事を。
起きたら、犬になっていた。オレと、りんと、揮と、全く同じだ。
けれど、一つオレ達と違うところを見つけた。
オレは思わず尋ねた。
「なんで元に戻ろうとしたんだ?」
犬は最高の生き物。人間になんて戻ろうとしなくてもいいのに。
―勉強にやたら反応するのは、ジュラルが勉強嫌いだからだ。
「このままだと、何もかも不便だ。人間の方が出来ることも多い。だから……」
「なーに馬鹿な事考えてるんだ」
オレは呆れ、小さい声で呟いた。
「それは……」
オレはトドメの一撃の言葉を放った。
「お前、勉強嫌いなんだろ?しなくていいだろ?動物は好かれまくって幸せだろ?」
ジュラルはオレに共感したのか、反論しなくなった。
「このまま、オレ達と一緒に生きようぜ」
「……いい」
とても小さな声だったので、オレは聞き取れなかった。
「?」
「いいよ」
ジュラルは切なそうな表情を浮かべて、オレについていく事を誓った。
りんと揮は黙り込んでいる―が、ちょっとだけオレを睨んでいるような気がした。
こうして、オレ達とジュラルは死ぬまで暮らす事になった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
転生王子はダラけたい
朝比奈 和
ファンタジー
大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。
束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!
と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!
ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!
ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり!
※2016年11月。第1巻
2017年 4月。第2巻
2017年 9月。第3巻
2017年12月。第4巻
2018年 3月。第5巻
2018年 8月。第6巻
2018年12月。第7巻
2019年 5月。第8巻
2019年10月。第9巻
2020年 6月。第10巻
2020年12月。第11巻 出版しました。
PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。
投稿継続中です。よろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
俺とシロ
マネキネコ
ファンタジー
【完結済】(全面改稿いたしました)
俺とシロの異世界物語。ゲンが飼っていた犬のシロ。生涯を終えてからはゲンの守護霊の一位(いちい)となり彼をずっと傍で見守っていた。そんなある日のこと、ゲンは交通事故に遭いあっけなくこの世をさってしまった。『大好きなご主人様、最後まで守ってあげたかった』悔いを残すかたちとなって役目を終えてしまった犬のシロ。命つきてもなお主人を助けようとする純真なおもい。その無垢で穢れのない魂を異世界の女神はそっと見守っていた。『聖獣フェンリル』として申し分のない魂。異世界の女神はぜひ自分の世界にスカウトしようとシロの魂を呼び寄せた。そうして女神からフェンリルへ転生するようにとお願いされたシロであったが……。それならば転生に応じる条件のひとつとして、「元の飼い主であるゲンも一緒に転生させて欲しい」そう女神に願い出るのだった。この世界でならまた会える。そしてまた一緒に生きていける。『今度こそはぜったい最後まで守り抜くんだ』 シロは新たに決意を固めるのだった。
シロは大好きなご主人様と共に、異世界にてどんな活躍をみせてくれるのか?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる