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いい居場所

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まず先に喋ったのは、揮だった。
「僕、知ってるよ。ほら、あそこの公園」
ああ、あそこか。あの、楠公園って所。―そうだと思う。
オレは何とか分かったが、りんは首を傾げている。何で分かんねえんだよ。
「楠公園」
オレが後から付け足すように教えると、りんは納得したような表情を浮かべた。
すると、揮が変なことを言った。
「僕たちの犬の名前をつけようよ」
「どういう事?」
りんが聞く。揮は「分からないのか!?」みたいな顔をして、詳しく説明をした。
「今、僕たち犬じゃん?だから、犬用の名前をつけようって事。人間での名前は陸、りん、揮だけど」
揮が説明してくれた事で、オレもりんも意味が分かった。
揮がオレに聞いた。
「ねえ陸。僕の犬の名前つけてよ」
急に聞かれたモンだから、しっくりした名前が思いつかなかった。
―オレは彼がロボット好きな事を思い出した。
「ロボランっていうのはどうだ?」
「おおー!!いいね!いいよ!」
納得してくれたみたいだ。良かった……。
「ねえ、私はどう?」
「お前は普通にリンでいいだろ」
「えー」
適当に接するオレに、りんは不満を漏らした。
オレはそんなりんを無視し、揮にたずねた。
「オレの名前も考えてくれよ」
「ダラル。お前いつもダラダラしてるから」
余計な言葉も混じっていた気がするが、オレの名前は『ダラル』に決定した。
りんがハッとしたように叫ぶ。
「ねえ、公園は?」
それに続いてオレと揮も思い出した。
「そうじゃん!行こう!」
オレ達は、居場所探しに出かけた。

楠公園は子供で賑わっていた。
揮は草むらの方に歩いて行った。
「ここに住まない?あったかいよ」
「ええ…………」
草むらは、揮だけが賛成だった。
「草むらって……虫とかいるじゃん」
虫嫌いなりんは、草むらにどうも納得がいかないようだ。

その後オレらはたくさん探したが、中々いい所がなかった。
 
「はあ……街まで来たけど、良いところがなさそうだな」
息を切らして絶句するオレ。
何故か揮が細い通りを見つめている。
「どうした?」
「なんかあそこいいなって思って」
りんも続いて通りを見る。
ゴミが散乱し、人通りの少なそうな場所だ。
「ここでいいんじゃない?」
りんが言う。オレ達も賛成した。
こんなゴミだらけの所住みたくないけど、ここでいい。
「……分かった」

そして、今日からここがオレ達の家となった。
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