生徒がどんどん消えていくんですが

ポケっこ

文字の大きさ
上 下
17 / 20

十五話 遭遇

しおりを挟む
一階に上がって来た俺達は、アップルとの情報交換のために職員室に足を運んだ。
前の電話の様子だとあまり信用ならない。せめて金白での現状だけでも調べてくれてたら良いんだけど。
俺は何も知らない勉に教えてあげた。
「勉、ないよー君の兄に向こうで何か調べてほしいって頼んだんだ。兄とは電話でしか会話方法がないから、職員室に行くしかないんだ」
聞いていたのか聞いていなかったのか……勉は視線も顔の向きも変えず、真顔で俺の隣を歩いていた。
少し雑談やじゃんけんなどをしているうちに、突き当たりに職員室が見えて来た。
―が、その前の会議室の扉から、誰かの背中が顔を覗かせていた。その人は灰色の服を着ていて、こっちを見つめていた。
さっきの監視員だ!!
「嘘だったんだな、騙しやがって!!逃さねぇぞ!!」
監視員は持っていた黒い棒を前に突き出して、俺達向けて走ってきた。
「に、逃げろーー!!!」
俺達三人は歩いて来た方向に向きを変えて走り出した。
さらに階段を上ってニ階に行っても、逃げ切れている気配はない。俺達はただただ走った。
しかし逃げているうちに勉の体力は限界に近づいていた。勉は廊下の途中で床にへたり込んでしまった。
「ま……待って、もう無理……」
後ろには監視員。勉を置いていくわけにもいかない、どうすれば……
ないよー君は勉の手を掴むと、引き摺ったまま先に急いだ。
「痛い痛い痛い痛い!!!!」
「こうするしかないんだよ我慢して!!」
ひたすら走っていると、目の前には階段が。
段差があるので勉を引き摺ることはできない。ないよー君は勉を立たせて、三階に続く階段を駆け上った。
上り切って振り返ってみると、見失ったか疲れたかして、監視員の姿はなかった。
まだ安心はできない。脱獄したことによって、監視員や先生からの探索の目が厳しくなる。
「はぁ、はぁ、はぁ……急に引き摺らないでよ」
ないよー君はなんとも言えない表情をしながら言い返した。
「あの状況でそんなに頭回らないよ。じゃあ勉はもう一度捕まっても良かったわけ?」
質問に勉は答えなかった。俺達は周りを警戒しながら一階に戻り、職員室に立ち入った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

Varth統一戦史

SummerSky
ファンタジー
 惑星Varthは環境破壊によって温暖化、水位の上昇が起きていた。 殉教者島に住む12人の子どもたちは島の水没により移民を余儀なくされる。  子供たちは離れ離れになる前に約束を交わした、世界に対する復讐と革命を。 その約束は彼らにどんな運命をもたらすだろうか・・・

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

7人のメイド物語

モモん
ファンタジー
理不尽な人生と不自由さ…… そんな物語を描いてみたいなと思います。 そこに、スーパーメイドが絡んで……ドタバタ喜劇になるかもしれません。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

処理中です...