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十五話 遭遇
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一階に上がって来た俺達は、アップルとの情報交換のために職員室に足を運んだ。
前の電話の様子だとあまり信用ならない。せめて金白での現状だけでも調べてくれてたら良いんだけど。
俺は何も知らない勉に教えてあげた。
「勉、ないよー君の兄に向こうで何か調べてほしいって頼んだんだ。兄とは電話でしか会話方法がないから、職員室に行くしかないんだ」
聞いていたのか聞いていなかったのか……勉は視線も顔の向きも変えず、真顔で俺の隣を歩いていた。
少し雑談やじゃんけんなどをしているうちに、突き当たりに職員室が見えて来た。
―が、その前の会議室の扉から、誰かの背中が顔を覗かせていた。その人は灰色の服を着ていて、こっちを見つめていた。
さっきの監視員だ!!
「嘘だったんだな、騙しやがって!!逃さねぇぞ!!」
監視員は持っていた黒い棒を前に突き出して、俺達向けて走ってきた。
「に、逃げろーー!!!」
俺達三人は歩いて来た方向に向きを変えて走り出した。
さらに階段を上ってニ階に行っても、逃げ切れている気配はない。俺達はただただ走った。
しかし逃げているうちに勉の体力は限界に近づいていた。勉は廊下の途中で床にへたり込んでしまった。
「ま……待って、もう無理……」
後ろには監視員。勉を置いていくわけにもいかない、どうすれば……
ないよー君は勉の手を掴むと、引き摺ったまま先に急いだ。
「痛い痛い痛い痛い!!!!」
「こうするしかないんだよ我慢して!!」
ひたすら走っていると、目の前には階段が。
段差があるので勉を引き摺ることはできない。ないよー君は勉を立たせて、三階に続く階段を駆け上った。
上り切って振り返ってみると、見失ったか疲れたかして、監視員の姿はなかった。
まだ安心はできない。脱獄したことによって、監視員や先生からの探索の目が厳しくなる。
「はぁ、はぁ、はぁ……急に引き摺らないでよ」
ないよー君はなんとも言えない表情をしながら言い返した。
「あの状況でそんなに頭回らないよ。じゃあ勉はもう一度捕まっても良かったわけ?」
質問に勉は答えなかった。俺達は周りを警戒しながら一階に戻り、職員室に立ち入った。
前の電話の様子だとあまり信用ならない。せめて金白での現状だけでも調べてくれてたら良いんだけど。
俺は何も知らない勉に教えてあげた。
「勉、ないよー君の兄に向こうで何か調べてほしいって頼んだんだ。兄とは電話でしか会話方法がないから、職員室に行くしかないんだ」
聞いていたのか聞いていなかったのか……勉は視線も顔の向きも変えず、真顔で俺の隣を歩いていた。
少し雑談やじゃんけんなどをしているうちに、突き当たりに職員室が見えて来た。
―が、その前の会議室の扉から、誰かの背中が顔を覗かせていた。その人は灰色の服を着ていて、こっちを見つめていた。
さっきの監視員だ!!
「嘘だったんだな、騙しやがって!!逃さねぇぞ!!」
監視員は持っていた黒い棒を前に突き出して、俺達向けて走ってきた。
「に、逃げろーー!!!」
俺達三人は歩いて来た方向に向きを変えて走り出した。
さらに階段を上ってニ階に行っても、逃げ切れている気配はない。俺達はただただ走った。
しかし逃げているうちに勉の体力は限界に近づいていた。勉は廊下の途中で床にへたり込んでしまった。
「ま……待って、もう無理……」
後ろには監視員。勉を置いていくわけにもいかない、どうすれば……
ないよー君は勉の手を掴むと、引き摺ったまま先に急いだ。
「痛い痛い痛い痛い!!!!」
「こうするしかないんだよ我慢して!!」
ひたすら走っていると、目の前には階段が。
段差があるので勉を引き摺ることはできない。ないよー君は勉を立たせて、三階に続く階段を駆け上った。
上り切って振り返ってみると、見失ったか疲れたかして、監視員の姿はなかった。
まだ安心はできない。脱獄したことによって、監視員や先生からの探索の目が厳しくなる。
「はぁ、はぁ、はぁ……急に引き摺らないでよ」
ないよー君はなんとも言えない表情をしながら言い返した。
「あの状況でそんなに頭回らないよ。じゃあ勉はもう一度捕まっても良かったわけ?」
質問に勉は答えなかった。俺達は周りを警戒しながら一階に戻り、職員室に立ち入った。
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