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十三話 牢屋にて

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「んあぁー……」
意識を取り戻し、視界に刑務所のような場所が広がった。俺の隣にはまだ倒れているないよー君もいた。
あたりを見渡し、今の状況が分かった。
俺とないよー君は、学園を抜け出そうとしたことにより牢屋に連れて行かれたようだ。
ここ学校だぞ!?そんな所あるのか!?場所的には刑務所だが……地下の施設とかなのか?
ないよー君も起きて状況を把握した様子だった。
「刑務所みたいだけど……学校にこんな所あるとは思えないから、ルール違反した生徒を捕まえる施設なんじゃないかな?これが一生の罰?」
よく見ると、別の牢屋にも生徒が捕えられていた。牢屋は沢山あった。ないよー君の考察は合っていそうだった。
一生の罰―っていうことは、この牢屋で一生を過ごすのか!?
「そうみたいだ」
左からどこか聞き覚えのある声が聞こえた。
俺とないよー君はゆっくり声のした方向に視線をずらす。

―声の主は勉だった。


「「勉!!!」」
俺達の声が綺麗に重なった。勉の姿を目にするのは久しぶりのように感じた。
「神隠しは実在していたよ。オイラはブラックホールみたいなポータルに吸い込まれてこっちに来たんだ」
勉もブラックホールに吸い込まれて来たらしい。そうだ、勉は前に神隠しのことを調べていたから色々知っているかもしれない。
「この学園を探索していたら、途中で悠馬と藍田と佐々木に会ったんだ。三人も神隠しに遭っていたみたい」
あの佐々木もここに。やっぱり、俺達は神隠しに遭遇してしまったのだ。
佐々木のことは夏休み中誰も目にしたことがないという噂が流れていた。実家に帰っていたと思われていたが、こっちに来ていたか。
「……他に何かあれば教えてほしい。僕ら来たばかりなんだ」
ないよー君が勉に伝えた。勉は四つほど間を置いた後、「分かった」と返し、ここについての話を始めた。
「ここへの行き方は、あのブラックホールの中に入ること一つ。体育館にあるロゴが「白」から「黒」に変わっている為、この学園は『金黒学園』と呼ばれている。金白学園の裏の世界なんて説もある」
ないよー君の言った通り、ロゴは名前に関係があったようだ。改めて、ないよー君は本当に賢いなぁと思う。
「……調べたり考えたりして分かったことはここまで。まずは牢屋から脱出しないといけない」
勉から有力な情報を得た俺達は、勉と共に牢屋の脱出方法を考えることにした。
牢屋の細い鉄の柱の隙間は、とても俺達が通り抜けられそうな幅ではなかった。
鍵は掛けられていて、鍵の代わりになりそうなものもなかった。
しかも牢屋の前には監視員が座っていて、抜け出せたとしても見つかるに違いない。
「な、ないよー君。こっから出られそうにないけど……監視員もいるし」
ないよー君は監視員を見つめている。
すると、監視員のポケットに何か光るものがあった。
―鍵だ!!
「あの鍵、何かの拍子に落ちたりしないかなぁ……」
ないよー君がポツリと呟いた。
そうなってくれると良いんだが、監視員がそんなミスするか?
でも―なんとかしないと、俺達は死ぬまでこのままなんだ。金白学園でも心配の声が上がっているだろう。そして神隠しの被害も広がって……
その時、俺の目に藍田が映った。藍田は牢屋の鍵を開けてもらって、外の世界へ歩き出していた。
「ないよー君!!勉!!藍田が出してもらってるよ!!」
俺はそう叫んだ。が、二人とも驚いてはいなかった。
「……ダメなんだよ」
「え?」
ないよー君がボソッと何か喋ったけれど聞こえなかった。
「……藍田は洗脳されているんだ」
「ええっ!?」
思わず大声を出してしまい、慌てて口を手で覆った。
洗脳!?そんな!洗脳されないと出れないのか!?
「洗脳されると金黒学園の生徒となって、また新しい洗脳者が現れるのを待っている。何日も牢屋にいると自然と金黒側になっている、というのを見たことがある」
(嘘だろ……!?)
俺は絶望感に襲われた。ないよー君も黙っていた。
よく考えれば、俺達はただ学校に通っていただけだったのだ。それなのに神隠しなんて現象に遭遇して、こんな裏世界に―。
勉が不安そうにこっちを見ていた。何かマズいことを言ってしまったのだろうかと心配になっているに違いない。何か話さなければ。
「つ、勉。脱出方法を考えないと」
「!!そ、そうだね。何かないかな……」
俺、ないよー君、勉は、この牢屋から、施設からの脱出プランを練るのだった。
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