【R18】姫さま、閨の練習をいたしましょう

雪月華

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第二部 妖精姫の政略結婚

姫はモフモフする

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 フランシスが王宮から帰ると、ユーリアがスズラン宮から戻った後寝室に閉じこもっている、と猫妖精ケット・シーの侍女から報告を受けた。

「姫さま、入りますよ」

 犬妖精クー・シーの従者が寝室の扉を開けると、窓はカーテンが引かれ薄暗かった。
 壁際に置かれた天蓋ベッドに吊るされた薄桃色の絹のカーテンごしに、うつむき膝を抱えて座っている姫の姿が見えた。

「どうされたのですか」

 四柱ベッドの薄絹のカーテンを開けて主の側ににじり寄ると、ユーリアは身体を四分の一だけ回転させてフランシスに背を向けた。

「姫……」

 フランシスの耳が垂れ、ふさふさのしっぽがパタンと落ちる。

「何かお気に召さない事がありましたか? 言って頂かないとこの不詳のしもべには分からないのです」

「……をさせて頂戴」

「え?」

「モフモフをさせて頂戴」

 ユーリアはフランシスをベッドの上でうずくまらせると、モフモフのしっぽの根元を片手で掴み、もう片方の手で撫でた。
 自分より大きな身体の従者の前に座り、モフモフのしっぽをぎゅっと扱くように撫でたり、しっぽの中にある芯を指で挟んでくにくにしたりもする。また彼の頭を下げさせて、ピンと尖ったケモ耳をフニフニと触った。
 姫の従者はくすぐったいのか、フルフルと震えながら耐えている。

 そうしてモフモフしながら、姫はスズラン宮で姉姫から聞いたことを考えていた。

(お姉さまはご結婚されてからもシーグルドと、閨を共にしていらした。夫君たちとのお子が生まれて、もう閨の練習する必要はないのに。……きっと二人は愛し合っているに違いないの)

「フランシス。今日、犬妖精クー・シーの子供をスズラン宮で見かけたの」

 スズラン宮を後にする際に、ユーリアは中庭で薄緑色の長毛の犬妖精クー・シーの子犬が姉姫の女児と遊んでいる姿を見ていた。

「少し前から、兄の仔がアンナリーナ姫の宮に出仕していると聞いています」

「それはお姉さまの従者、シーグルトの子供?」

「はい、そうです」

 ユーリアはフランシスの尖ったケモ耳を、ぎゅっと握る。フランシスは、思わずぶるっと身体を揺らした。

(わたくしたち王女にとって、政略婚で妖精の王族ハイエルフの子を成すことは王族の義務。では、犬妖精クー・シー族の王子も同じように義務で……?)

「シーグルトの仔が、なにか致しましたか?」

 気づかわしげな従者の問いに、姫は首を振った。
 大きな緑柱石エメラルドの瞳から、ポトリと大粒の涙が一滴、フランシスのふわふわな巻き毛の頭に落ちた。

「姫、さま?」

 フランシスは起き上がって、ポロポロと泣く姫を抱きしめ、零れ落ちる涙を舐め取った。

「っ! ゃ……っ」

 従者の胸に手をついて身体を引き離そうとしたが、フランシスは姫を抱きしめたまま離さず、閉じた瞼の上からもぺろぺろと舐めた。

「僕は姫さまの忠実な犬。貴女のお心の憂いを晴らすためなら、何でも致しましょう」

 ユーリアの上にのしかかり、フランシスは姫の顔中を舐め、首筋、鎖骨と徐々に移動しながら舐め続けた。

「ん、んんっ。……でもっ、フランシスだって、シーグルトのように他の女の人に子供を産ませたりするんだわ」

 フランシスの顔を手で押しのけようとすると、その手を取られてしまった。

「まさか、そんな。僕は兄とは違う。では、神の御名によってに誓いましょう。生涯に渡って、愛するのは姫さまだけだと」

 犬の従者は 豊穣と光の神フレイ・イン・フロディの名に誓い、指で印を結んだ。

 誓いを破った時には神から死を賜ってもよいという意思表示で、この森の国の民が約束ごとをする際によく行われている。
 本当に約束を破ったら死ぬかと言えば、そんなことはほとんどないが、古の神々の末裔、妖精王の統べるこの国の人々は信仰深く、神の御名による誓いは重んじられていた。

「わたくしに、フランシスのお兄さんたちとの閨を勧めたりもしない?」

「当たり前です! 誰にも、姫さまを触らせたくない」

 フランシスは姫の手を口元に運び、その白く細い指を口に含んで吸った。

「ぁっ……」

 桜貝のような愛らしい爪を持つ指を甘噛みし、一本一本丁寧に口に含み、舐めしゃぶる。そうして指の間、手のひらと舐めて行き、部屋着の袖を捲って手首から二の腕、ついに脇の下まで到達する。

「そこは、だめっ。汗かいているから……っ」

 すると、今度は反対側の手を取り、また指の一本一本から舐め始めた。

「まだ、湯浴みをしてないの……」

「湯浴みの代わりに、僕が舐めて綺麗にして差し上げます。こうして姫さまの身体を全部、舐めたかったんです。ずっと」

 しっぽが、ぱたんぱたんと揺れていた。
 
 
  
 
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