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第一部 妖精姫と忠犬従者

しっぽがパタパタ

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 フランシスは仰向けに寝かせた姫の上に覆いかぶさるように抱きつくと、首筋に顔を押し付けてくんかくんかと匂いを嗅いだ。

「ああ、姫さまの匂い!」

 子犬の頃のように遠慮なく、胸いっぱいに姫の甘い香りを吸い込むと、フランシスの鼓動は激しく打ち始めた。
 無我夢中になって姫のドレスを剥いでいき、靴を脱がせ、彼自身の従者の濃紺に白のラインが入ったお着せの上着をもどかし気に床に脱ぎ捨てる。
 さらにシュミーズに手を伸ばすと、姫は形の良い眉をひそめた。

「練習なのに、下着まで……?」

「こほん。閨では、裸になって身体を合わせるものです」

 ユーリアが恥ずかしがってもぞもぞと身体をくねらせ視線を泳がせると、その愛らしさにフランシスは息が止まりそうになった。

(僕の姫さまは、なんて可愛らしい!)

 堪らずユーリアの顔や首筋、鎖骨から胸元へ、キスの雨を降らせる。気がつけば姫の白い柔肌をぺろぺろと舐めていた。
 姫は子供の頃、モフモフの犬だったフランシスに押し倒され、顔中をべろべろに舐め回されてついに泣き出したことを思い出す。

「フランシス! 辺境伯はそんな風に、わたくしをぺろぺろ舐めたりしないと思うわ」

「いいえ、こんなに愛らしい姫さまを舐めずにいられるものですか。それに殿方の中には、足を舐めるのがことさら好きな(変態)紳士もいると聞いていますし」

「えっ、足を?」

 ユーリアがひるんだ隙にフランシスはシュミーズをずらし、双丘を露わにすると感嘆の声を上げた。柔らかなふくらみに至福の笑みを浮かべ頬ずりする。

「やわらかい……すべすべ……なんて手触りだ」

 パタン、パタン、パタパタパタ。

 ユーリアはさっきから、フランシスのズボンの後ろのスリットから出ている、ふさふさした長いモフモフのしっぽが左右に揺れているのが気になっていた。
 嬉しいとしっぽがパタパタと揺れてしまう犬妖精クー・シー。これは相当喜んでいるのではないだろうか。

 フランシスは自分のしっぽが激しく揺れている事にも気づかず、双丘の頂にある桃色の尖りを口に含むと、夢中になって吸った。

「いたっ、痛いわ」

 胸に強く吸い付いている、フランシスのふわふわな巻き毛の頭を押しやり睨みつける。

「ご、ごめんなさい。つい……」

「閨では、痛い時には痛いと言っていいのかしら」

「もちろんです! 姫さま」

 不安げな姫に、慌ててフランシスは頷いた。

「特に最初のうちは、言わなければ伝わらない事も多々ありますから。気持ちいい時も、教えて下さい」

 フランシスがずり下ろしたシュミーズを完全に取り去り床に落とすと、ユーリアは白絹のストッキングとガーターベルト、ショーツだけになった。

「これは……!」

 染み一つない白い肌、華奢な細い手足、形の良い双丘、くびれたウエスト……夢のように美しい姫の太ももに留められたガーターベルトとストッキング姿のあられもない姿に、フランシスはごくりと唾を飲み込んだ。

「……裸になるのが閨の作法なら、ストッキングも脱いだ方がいいわね」

 ユーリアがストッキングを脱ごうと手を伸ばすと、フランシスは素早くそれを止めた。

「いえ、いいえ。このままで! これはこのままで、行きましょう」

 真っ赤になったフランシスを、姫は怪訝な顔で見る。

「フランシス、貴方はまだ裸になってないけど?」

「ハイ! ただ今、すぐに」

 姫は自分の従者が急いでシャツとズボンを脱ぐのをじっと待った。
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