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16’雨降って地固まる

77.仲直りイチャラブセックス(真) ♡×2

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(哀香視点)

 ある日、私は悠莉を怒らせてしまった。

 とんでもなくテンションの上がる事件が起こって、それが原因で悠莉と喧嘩をしてしまった。知り合って仲良くなってから初めての喧嘩。軽口が彼女を怒らせちゃって、私は「しまった」と思った。

 私としては軽い冗談のつもりだったのだけど、悠莉にはそれが冗談に聞こえなかったらしい。

 ──そんな怒るようなことだったのかな?

 1週間後、「ごめんね」と謝ると、悠莉は許してくれたけど、内心あまり納得はできていなかった。だって私が変態なのはもはや言わなくても分かりきっていることなのに……。

 ……だから、悠莉があんなに思い詰めていたなんて思いもしなかった。


***


 仲直りしたその日の午後。

 私は悠莉の家にいた。でも、悠莉はいなくて、入れ替わりで私のアパートにいるらしい。

「ゆっくりしていってね」

「あ、すみません。ありがとうございます!」

 悠莉のお母さんがお茶とお菓子を出してくれた。招いた本人がいないのに、他人のお家にいるのはなんだか気まずい。悠莉のお母さんはすごく美人だし気を使ってくれる。お日様みたいな笑顔を浮かべてくれる人で、髪の長い悠莉って感じ。目元とかそっくり。

「悠莉と仲良くしてくれてありがとうね」

「そんな、私の方こそ……」

 すごく申し訳ない気持ちになってしまう。

 だって、この人は私と悠莉がやっている『活動』を知らないから、バレたらどうしようっていう、うしろめたさを隠しながら接しているから。それに悠莉との関係(肉体関係)を隠しているから。気まずさがある。

「あ、あのあの。おかまいなく!」

「いいのいいの、気にしないで」

 悠莉のお母さんは優しい笑顔で言ってくれて、その優しさに、罪悪感を抱いてしまう。

 私が気まずさを感じているとスマホの着信音が鳴った。出るのは失礼かと思ったけど、悠莉からだったから目配せして応答することにした。

「あ、悠莉? どうしたの?」

『あん♡ あ、もしもしぃ。哀香ごめん……っ!♡ ちょっと遅れちゃうかもぉ。あとぉ数時間ぐらいかかるかもぉ♡ ごめんねぇ♡』

「う、うん。わかったけど……何してるの? 運動してる? 苦しそうだけど……」

『ごめん♡ まだ言えない♡ ……あっ!!……くぅ♡  じゃあ切るねぇ♡ あ、ああんっ!♡』

 プツッと電話が切れる。なんだったんだろう。漏れ聞こえた声。悠莉のお母さんと目があって私たちはパチクリと目配せしてた。私はぺこりと頭を下げる。

「あのあの、もうちょっとかかるみたいで……」

「うふふ。いいのよ気を遣わないでリラックスしてね」

「は、はい! ありがとうございます!」

 悠莉のお母さんはクスクス笑って部屋から出て行った。私は1人部屋に残されると、なんとも言えない居心地の悪さを感じながら、ちょこんと座って時間を潰した。


***


 数時間後。

 すっかり日が暮れて、外が真っ暗になったころ。再び悠莉から着信があった。

『ごめん……私……そっちに行けそうにない……くらくらする……』

「えっ、どうしたの?」

『哀香……ごめん……私、もうダメかもしれない……』

「な、なに言ってるの!? 大丈夫!?」

『大丈夫。たぶん……ね』

 力なくヘロヘロとした声色だったからすごく心配になった。どこにいるのか、何があったのかと問いただすと、どうやらまだ私のアパートの部屋にいるらしい。

『ごめんだけど。こっちまでまで来てくれないかな……? もう動けないの……』

「わかった!」

 悠莉の声は今にも消え入りそうだった。だから私は慌てて「お邪魔しました!」を言って、タクシーでアパートに戻った。

 私が部屋に戻ってくると、悠莉はぐったりとした様子で玄関近くに倒れていた。全裸で。

「悠莉!」

 私は慌てて駆け寄る。悠莉は顔を紅潮させて、はぁはぁと息を荒くしている。

「なにがあったの!?」

「あ!哀香来てくれた♡……好き好き大好き♡ 愛してる♡ キスしたい♡」

「悠莉……?」

 せがまれるまま唇を重ねるけど、???って感じだった。

「すごい♡ すごいよぉ♡ 私、あなたのこと大好きみたい♡」

 悠莉は私の首の後ろに手を回して、むさぼるようにキスをしてきた。

「ちょ、ちょっと……どうしたの? なんか変だよ?」

「私、あなたのことが大好き♡ だから……ね?♡ 好き好き♡ 愛してる♡」

 悠莉の潤んだ瞳に見つめられるとドキッとしてしまう。意外だと思った。気分が高まった時とかセックスの最中は、とろけた顔になることもある彼女だけれど、こんなに素直に甘えてくるなんてなかなかない。

「大好きな哀香に見せたいモノがあるの」

「え……なに?」

 恍惚の表情で彼女は言った。何が何だか分からなかったけど、ヘロヘロの状態で生まれたての子鹿みたいに立とうとしていたから、肩をかして部屋まで連れて行った。

「ねぇこれ見て?♡ ほらぁ♡」

「なにこれ……??」

 そこは見慣れた私の部屋だったけど、何かがおかしかった。

 ベッドはぐちゃぐちゃに乱れていて、シーツはびしょ濡れであちこちにシミがある。そして、そのベッドに向けられた三脚とスマホ。

「わー♡」

 無邪気に飛び跳ねた悠莉がスマホを取りに行って、三脚から外した。そしてスキップをして私に見せに来た。まるで親にかまってほしい子どもみたい。

「見て見て♡ すごいでしょ?♡ 見てよこれぇ♡」

「え、なに……?」

 テンション感の違いに戸惑いながらスマホを受け取ろうとしたけれど、「やっぱダメー!」ってイタズラっぽく悠莉が胸元に抱き寄せる。

「哀香も裸になってベッドで一緒に見よう! セックスしよ!!」

 彼女らしくない直接的なアプローチ。私は「ま、待ってよ」ってなだめるけど「早く早く!」って服を脱がそうとしてくる。

「や、やめて。落ち着いて! どうしちゃったの?」

「裸になってよ! うぇぇぇ(泣)」

 ぽろぽろと泣き始めた悠莉にぎょっとした。「わかった、わかった」って戸惑いながら服を脱ぎ始める。急かされながら上着を脱いでブラジャーを外そうとしていると、うずうずとした悠莉に「えいっ!」っとショーツを下ろされた。

「ちょ、ちょっと!?」

「やった! 哀香のお◯んこ!」

「!?」

 まったくもって彼女らしくない下品な言葉にびっくりした。

「……あっ!」

 悠莉が私の股間に吸い付いてきた。私のアソコをペロペロと舐め始める。

「れろぉ♡ ちゅぷ♡ ぺろっ♡」

「あっん」

 私は思わず彼女を引き剥がそうとした、けれど力が強くて離れない。彼女は私の股間から口を離そうとしなくて、愛しそうにアソコを舐めるのに夢中になっていた。

 そのうちになんだか私まで変な気持ちになってきた。ブラを脱ぎたいのに腰が砕けそう。そういえば悠莉とは喧嘩していたから、こういうことはご無沙汰だった。だんだんと私の気持ちも沸々と湧き上がってきて、その気になってくる。

「もう悠莉ったら♡」

 ──もう仕方ないなぁ♡

 私はブラを脱ぎ捨てて全裸になった。すると、悠莉が嬉しそうに飛びついてきて、私の胸に吸い付いてくる。

「ちゅぱっ♡ 哀香のおっぱいも好き♡ あむあむ♡」

「あんっ!」

 私はベッドに押し倒された。彼女は私の上に乗っかって身体をすりすりしてくる。

 初めての喧嘩と、仲直りしてからの初めてのセックス。興奮してきた。

「哀香ぁ♡」

 悠莉は甘えるように私の唇を塞いでくる。舌をにゅるっと滑り込ませてきて、舌と舌を絡ませてきた。

「あん♡ あむぅ……♡」

 私たち2人は抱き合ってキスをして、身体同士をすりあわせて、気分を高め合った。そして、彼女の太ももに股間をすりすりして、この後することをアイコンタクトしようと彼女の顔を見る。

「悠莉……っ!♡」

 私は思わず彼女の名前を叫んだ。

 でも、そのとき彼女は口元を怪しく歪ませていた。

 えっ……?って思った時には、ひざで両腕を押さえ込まれ、身動きを封じられた。

「え、ちょっと……悠莉?」

「……ふふふ♡」

 彼女が笑った。そこにはさっき三脚から外したばかりのスマホ画面が向けられている。

「見て♡」

「え……?」

 再生ボタンが押された。

 なんだろうって思って画面を見ると、そこに映っていたのは、とんでもない動画だった。なにが始まったのかしばらく理解できなかった。

『ゆうりちゃん! ゆうりちゃんのお◯んこ気持ちいいよぉ! また出すよ! 中に出すからね!? いいの!?」

『うくぅ……! く。……う、うん♡ あなたのおち◯ちん太くて硬くて気持ちいいのぉ♡ ジュポジュポしてくれてありがとぉ♡ 奥まで突いてくれてうれしぃ♡ 出して♡ 出して♡ 中にいっぱい出してぇ♡』

『ゆ、ゆうりちゃんの中……すごすぎて……。そんなに締められたら……また……! もう出ちゃうよぉ……! あ、あああ……!!』

『あ♡ あ♡ でてる♡ お◯んぽミルクいっぱい出てる♡ すごぉい……♡』

 2人の男女が全裸で絡み合っていた。中年の太めの男性がめちゃめちゃに腰を振っていて、可愛い女の子が股を開いてゆさゆさと身体を揺さぶられている。お互いを逃がさないと誓ったかのように、両手をガッチリとつないで、激しく腰を合体させていた。

 唖然とした。

 男女がそういうコトをしている。いわゆるハメ撮りと呼ばれる男女の卑猥な行為を録画した映像。

 それを私は見せられている。

 太った中年男性と悠莉が生ハメセックスをしている動画を。

『あん♡ おち◯ちんが私の奥まで届いてるの♡ 子宮にゴツって♡ これ好きぃ♡』

『ゆうりちゃん……。また出る……! 中に出すからね! 孕んで! ゆうりちゃんのお◯んこで僕の子どもを妊娠して!』

『は? 誰があんたなんかの……くっ。……う、うん! うん♡ いいよっ!♡ おま◯この奥にいっぱい出してぇ! 孕ませてぇ♡ 孕みたいのぉ♡ あなたの赤ちゃん♡あ、あ、あ、ああんっ!♡』



 キリッとした切れ長の目の美少女。すらっとしたスレンダーなボディ。ボーイッシュなショートカットの金髪女子はベッドの上であられもない姿になって、小太りの中年男性に抱きついていた。男性に抱きしめられ口を塞がれ、顔を歪めるその子は、泣いていた。屈辱で口を噛み締めながら、必死に衝撃に耐えている。『レイプ』って単語が頭に浮かんだけれど、その子の口から飛び出す卑猥な言葉と、気持ちよさそうな喘ぎ声。それが合意の元の行為なのだと表していた。

『うっ!! また出すよ!5発目の中出しイくよ!! ああああ!!』

『ああ!! ♡』

『う、ううう……!!』

『ああ! 出てるぅ♡ またいっぱい出てるのぉ♡ 中出し気持ちいいよぉ!!♡ こんなに出されたら妊娠しちゃうよぉ♡』

 2人はガッチリと抱き合った。



 そして2人は同時に果てた。女の子はぐったりとしてベッドに横たわり、男性は彼女の身体を抱き寄せキスをする。舌をからませて、ねっとりとしたディープキス。誰がどう見てもラブラブなキスだった。なにより女の子は積極的で、ひとしきりキスをして唇が離れると、女の子の唇が男性の顎を舐め、首筋を舐め、乳首を舐め、お腹まで舐め、股間まで到達した。そして「ぱくぅ」と男性器を咥えると「おおふ」と中年男性が恍惚の喘ぎをもらす。美少女の頭を満足そうな笑みを浮かべ、なでなでと撫でる。その子が男性の股間をじゅぽじゅぽ舐めていると、男性のモノがムクムクと大きさを取り戻していくのがわかった。男性がまた悠莉を押し倒した。そして再びセックスが始まった……。

 動画はまだまだ続いていた。動画のシークバーはまだ真ん中あたり……。

「……ねぇ哀香」

「……!?」

 動画の悠莉とは違う現実の囁きでハッとした。

 私をジッと見つめてくる彼女。向けられた笑顔に愛嬌がなくて、目の奥が笑っていない。

「ど、どういうこと? これ……え?」

「どうって……見れば分かるでしょ? 私が中年オヤジと5時間セックスした動画だよ」

 彼女ははっきりと口にした。誤解の余地なんてどこにもない。

 目の前に突きつけられた映像証拠と、彼女の口から告げられた証言。それが確かな事実だと否応なく証明していた。

 なのに私は現実を信じることができなかった……。

「こ、こんなっ……」

「気持ちよかったよ」

「!?」

 思わず目を見開いた。私の反応に満足したように、悠莉はクスクス笑った。それが不気味でしかたない。

「……ねぇ哀香? 私ね、このオッサンのおち◯ぽが大好きなんだぁ♡ もうこの人のおち◯ぽ無しじゃ生きられないの♡」

「え……?」

 私は耳を疑った。だって……そんなはずない!って思うから。

「信じないだろうけど本当なの。私のお股がこの人に犯されて喜んでるの。ふふ♡ 哀香と喧嘩して、1人で慰めていたらね? この人が私をやさしく抱いてくれたの♡ だからね……ファーストキスも処女もこの人にあげちゃった♡ あとアナルも! あはっ♡」

「うそ……」

「最初は歳の差がありすぎるし、デブだし、ブサイクだし、臭いし、キモし、ありえないと思ってたんだけど、でも無理やり犯されるうちに……だんだん気持ちよくなっちゃて……何度もイかされちゃって悔しかった。なのにね? 何度も何度も中出しされるうちに……女としての喜びが湧き上がってきたんだぁ♡」

 私は呆然としていた。悠莉が何を言っているのか分からない。プライドの高い彼女から信じられない言葉が放たれていた。

「私ねー……この人のおち◯ちんに負けちゃったの♡ 私のカラダの何もかも、お◯んこもおっぱいもお尻も……ぜんぶこの人のチ◯コで擦られちゃった♡この人の奴隷にして貰ったの♡ …… 負けちゃった♡ 負けちゃった♡」

「……っ!」

 そんなはずないって否定したかったけど、できなかった。動画の中の悠莉が気持ちよさそうに喘いでいたのは事実だから……。

 頭をトンカチで殴られたような衝撃でぐわんぐわん揺さぶられた。さっき見た映像が頭の中をループしている。あまりのことに、ぽーっとする私。しかし冷水をぶっかけるように悠莉は「あ、そっか」ってわざとらしい声を出した。

 そして、彼女は『絶対に言ってはダメな言葉』を口にした。


「あ、このおち◯ぽに負けたのは哀香もか! あはっ。ごめんねぇ♡ 哀香じゃ絶対に届かないところおち◯ちんでガンガン突かれて気持ちよくなっちゃたぁ♡ あなたは女の子だもんね?♡ どんなに頑張ってもチ◯コついてないもん! あなたとのセックスってお遊戯みたい……。だって中出しできないんだもん!」


「……は?」

 ──は?

 気づいた時にはギリギリと歯を噛み締めていた。彼女の顔面を穴が開くほど睨みつけていた。

「……!」

 悠莉がなぜか驚いた顔をした。嬉しそうなキラキラとした瞳でスマホを構えたと思ったら、私の顔をパシャパシャと連写した。そしてケラケラと笑い始めた。

「あ、嬉しい……嬉しい!」

「は?」

 もう私は堪え切れなかった。怒りが頂点に達して、組み敷かれていた身体を振り解いて、彼女をベッドに押し倒した。

「なによそれ……!」

 我を忘れて、彼女の首筋に両手を回していた。目の前が真っ暗になっていた。ブチギレた。

「うっ、ぐ……」

 悠莉が苦しそうに顔をゆがめた。我に帰ると、両手に力を込めて首を絞めている自分に気づいて怖くなった。悠莉は咳き込んでいて苦しそうにしている。

「う……げほ! ごほ……!」

 私は彼女の首から手を離した。自分が大粒の涙をこぼしていることに気づく。

 ──どうしよう。どうしよう。

 どうしていいかわからなくなった。だって私は……悠莉のことが本当に好きだから。大好きな人が目の前で苦しそうにしている姿を見ていたら、耐えられなかった。胸が張り裂けそうで心が痛かった。でもやってしまった事実は消せなくて……。

「うぇぇぇん」

 私は嗚咽をもらして泣き出してしまった。

 そして、首を絞められた悠莉は……きょとんとした顔で私を見ていた。そして、ニカっと満面の笑みを浮かべる。

「嘘だよ」

 あっけらかんとして彼女は言った。

「え……?」

 雰囲気がガラリと変わった。真っ暗だった部屋に照明がつけられた。何が起こったのか分からない私に、悠莉はけらけらと笑いながら言う。

「じょーだん!そんなわけないでしょ? 私があんなデブオヤジのチ◯コに負けると思ったの!? あはは!」

「……は?」

「あいつとのセックス……マジで屈辱だった……人生の汚点。……私の処女があんなやつに」

 悠莉は思い出したくもないと言った顔で「うげー」と舌を出して見せた。

「え……どういうこと……」

「全部ウソだよ! 私があんなキモいデブオヤジに犯されて喜ぶわけないでしょ!」

 私は言葉を失った。そして怒りで身体が震えた。でも、すぐに脱力した。怒りをどこにぶつけていいのか分からなくなったのだ。

「……」

 絶句してパクパク口を動かしている私に、悠莉は満面の笑みを浮かべて言う。

「よかった……哀香もあんな顔するんだ……ふふ」

「え?」

「哀香が私のためにあんなに怒ってくれたの初めてだったから……。嬉しかった♡」

 そう言った彼女は、握りしめていたスマートフォンを私にかざしてきた。

「……え?」

 彼女が目の前に差し出してきた画面には……【般若の形相で睨む私の顔】が写っていた。

 そこで気づいた。彼女の挑発するような言葉の数々は、私を怒らせるための演技だったのだと……。

「あ……あああ!」

 思わず顔を覆った私を尻目にかけ彼女はくすくすと笑う。

「嬉しい! 嬉しい! 哀香が私に嫉妬してくれた!」

「や、やめて! いやああ」

 私は絶叫した。顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。

「あはは♡ あは♡ あはっ♡♡」

 悶える私をよそに、彼女は身体をくの字に曲げて笑い転げていた。

「ねぇ哀香ってさぁ……私の事好き?」

 私はドキリとした。そして涙目で彼女を睨む。

「なんども好き好き言ってるよね!?」

「ごめん。信じられなかった…… だって哀香……あなたって……どうしようもない変態なんだもん!」

「……」

 私は絶句した。彼女に対して初めて思う感情に支配される。わなわなと手が震えていた。

「悠莉……。あなたに……。あなたにだけは言われたくない!!」

 私は叫んだ。慟哭だった。

 彼女も私と同じぐらいの変態なのだと再確認させられた。私の気持ちを確かめるために、嫌いな人に処女を捧げて、数時間に及ぶラブラブ風動画を撮るって何事!? セックスしたのは事実だよね!?

「……あ、頭大丈夫?」

 私は思わず口走ってしまった。

 すると彼女は「眠ったままチャラ男3人に輪姦されて処女喪失したあなたにだけは言われたくない」って表情でドン引きした。そして核心を口にする。

「あのとき……私がなんであんなに怒ったのか分かってくれた?」

「……ん」

 悔しかったけど理解させられた。彼女は不安になって、あの動画を撮ったのだ。私の気持ちを確かめるために、自分のカラダを生贄に。復讐されてしまった。……復讐させてしまった。

 代償がなければ分からなかったのだろうか?

 なんども気持ちを確認したと思っても。数え切れないくらい身体を擦り合わせても。愛してるって言っても。心までは物理的に触れ合えない。ならどうやって他人を信じればいいんだろう?

「私は哀香のことが大好き」
「私も悠莉のことが好き」

 私たちは互いを見つめあって、ふふと微笑んだ。

 なーんだ。同じじゃないか。答えはシンプルだった。

 男女だって、女女だって、男男だって、そもそも誰も分かり合っていないじゃないか。

 分かってほしい!って声高に主張したって事実はねじ曲がらない。

 でも、分かってほしいって思う人がいる。じゃあ、それで充分だし、それに性別なんて関係ない。他人の意見なんて関係ない。だって私がそう思ってるんだもん。私が思うから私がいる。それだけは確定事実。

 私たちは気持ちを確かめ合った。その事実がこんなにも私の心を満たしてくれる。きっと悠莉も同じ気持ちのはず……。同じでいてほしいな……。

「「……」」

 目が合って、私たちはガッチリと手を握り合う。

 そして、このあと……滅茶滅茶セックスした。


***


 事後。

 私たちはベッドの上で裸のまま抱き合ってキスをしていた。

「ねぇ、悠莉」

「なに? 哀香」

「私たち恋人同士ってことでいいよね? カップルってことでいいよね? 将来を約束した関係だよね?」

「いまさら何言ってんの……?」

「だって、ちゃんと口に出したことなかった気がして」

「そうだっけ?」

「そうだよ」

「……哀香は私の恋人だよ。私は哀香の恋人」

「私も悠莉の恋人ね」

 私たちはお互いの気持ちを口に出して確認した。そして、またキスをする。ぽかぽかとした気持ちに満たされる。

「……正直言うと、自分が百合カップルになるなんて思ってなかったんだけど」

「……実は私もね。 そんな気はなかったんだけど……。でもふざけてセックスしたあたりからおかしくなっていって……ずっと一緒に居たいって思うようになってた。いつのまにか」

「私も……」

 私は悠莉の身体を抱きしめた。そして彼女の耳元でささやく。

「……だって、あなたのことが好きだから」

「あ……う、うん」

 悠莉は恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。

「だから浮気は許さないから」

「……うん。浮気なんてしないよ。だって、私って哀香に愛されちゃってるから。首絞められるくらい♡」

「っ……」

 私の顔も熱くなる。

「露出は? これからもする?」

「……私が辞めると思う? もっと見られたいもん」

「だよね……変態」

「あなただって見たいんでしょ? 私が見られてるところ……」

「うん。最高に興奮する」

「……変態」

 私たちは顔を見合わせてくすくすと笑い合う。そして、ちゅっちゅっとキスをした。

 たぶんこれからも私たちは変態行為を繰り返していく。

 行き着く先が破滅だってことくらい分かっている。でも、より強固になった絆があるから、きっと大丈夫。

「「大好きだよ。これからもずっと」」

 私たち2人はインモラルだし変態。それは事実。他人に分かってもらおうとは思わない。そこまで傲慢じゃないから。

 なんでこんなに爽やかな気持ちなんだろう?

 ──何があっても私たちだけは大丈夫。

 答えはわかりきっている。

 そして私は、新しい計画を思いついた。次の全裸露出へ向けて……私たちの計画は……まだまだ終わらない。




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