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15’悠莉処女喪失
74.キモい前戯
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(悠莉視点)
「はむ……んちゅ……」
男がふがふがと唇を押しつけてくる。哀香のぷにっとした柔らかい唇とは違う、ぶ厚くてカサついた感触。男は私の肩を強く抱いて強引に唇を押しつけてくる。
──なんで私こんなオッサンとキスしてるんだろう?
さっきから鼻がガシガシ当たって不快だし、よだれもドロっとしている気がして気持ち悪い。あと普通に臭い。これが加齢臭ってやつ?
突然、男の目がくわっと見開かれた。
──うわ、キモ。
至近距離で私たちは見つめ合う。
私は自分の見えないところで何かされるのが嫌だから目を開けているだけなのに、男の瞳にはニヤけが宿っている気がして吐き気がする。まじまじと私の顔を眺めるような視線。好き好んでお前とキスしているわけじゃない! ってキレそう。
「むぐぅ!?」
唇を割りいって侵入してきた男の舌。私の歯茎を不器用に舐めまわそうとする。それが不快だったから、私の口の中から出てけ!って思って舌で押し返してやる。
「んちゅ……れぇろ……」
そんなつもりなかったのに唾液まみれの舌同士がぴちゃぴちゃと触れ合う。やめろ! やめろ! って応戦するほどにより激しくネットリと合体する。最悪の軟体生物。
──こんなオヤジとディープキスしてる!?
客観的に自分の姿を想像して鳥肌が立った。それは、ミミズとミミズが絡まり合う最悪のイメージ。男は鼻息を荒くして私の口内を舐め回す。イメージというか現実だった。
「んれぇろ……はむちゅ……」
──キモい……キモいよぉ。
「んちゅ……れろぉ……」
──臭い……くさいよぉ。
「んぐぅ……んぐぅ」
──おえ、飲みたくないのに……。
男は無我夢中で私の唇と舌をむさぼる。唾液が次々に流れ込んできて飲み込まなければ窒息してしまいそうだった。
「ちゅぶ……ちゅぶ」
男が私の唇をあむあむしてくる。
──っていうかいつまでキスするつもりなの!?
離れようと思っても男に背中を押さえられて身動きができない。まるで二度と同じ機会が巡ってこないと思っているのかのように激しく求めてくる。
「んん!」
ついでのように背中に回っていた手が私のお尻を撫で回した。グニっと尻たぶが鷲掴みにされる。
すごく長い時間に思えた。実際に長い。哀香とだったらキスしながら1時間雑談だってできるし何も苦痛じゃない。でもこいつは哀香じゃない。おっさんだ。早く終われって頭の中で念じるほど体感時間はより長くなっていく。
「……ぶっはぁ!」
ようやく解放されて唇同士が離れた。何度も唾を飲み込まされたせいでむせてしまった。
「あ、ごめん。えっと、あの……」
男はチラチラと所在なさげに私の顔を見ている。その顔は真っ赤に染まっていて目が泳いでいた。
──なんでお前が照れてんだ!
年齢不相応のウブな反応にイラっとする。中年オヤジのくせに。お前如きが私とキス出来てよかったねっ!って殴りたい気分。
「なに?」
「えっと、その……僕、初めてで……これがキスなんだって」
私がにらむと、男はオドオドと言い訳じみた言葉をぽつぽつと漏らした。
「ちょっと引きこもってたら……いつの間にかおじさんになちゃってて……キスも出来ずに……このまま死んでいくのかなって不安になってたんだぁ」
「だから?」
なんだこいつ……キモい。私に関係ない自分語りを聞いてもいないのにぺちゃくちゃ話して……。
「それが君みたいな美少女とファーストキスできるなんて思わなかったから……うれしくって。ごめん……気持ち悪いよね……」
「……うっ」
──あ、本当にキモい。なんで私はこんな奴とキスしたんだろう?
べろべろと舐られた唇と鼻先にはまだこの男の唾液が残っていて、つんと何かの匂いがした。汗か加齢臭か体臭か、たぶんそれが全部混ざった匂い。
「いや……そんなことないけど……」
──いやいやいやいやいや、めちゃっキモいけど!?
「私もファーストキスだったし……男とは」
「本当!? いいの僕なんかで!?」
「……うん」
男は照れて笑った。私は屈辱で顔を背けたのだけど、もしかしたらその動作が照れ隠しに見えてしまったかもしれない。
そして、男は土下座した。
「ありがとぉぉぉぉぉ!!」
「え、ちょ……」
男の突然の行動に頭が????で支配される。頭をフローリングに打ち付ける勢いで土下座した男は、私の脚にしがみついた。そのまま蹴っ飛ばしてやろうと思ったけど、ぐっと我慢した。ドン引きして、引きつった顔を向けてやると男は泣いていた。
「な、なに? 大丈夫(頭)?」
「僕なんかが君みたいな可愛い子の初めてをもらっちゃって……本当に嬉しいよ!」
「……っ」
男は土下座した状態のまま私の脚に頬ずりしている。その行為がまるで犬や猫が飼い主にすがりつくようで、同じ人間とは思えなかった。
「な、なんでそんな卑屈なの……」
「え、だって僕みたいなおじさんだよ?」
「……それが何? 歳なんて関係ないでしょ……」
私が言うと男は目をぱちくりさせた。
本心だった。
──だって、キモいかキモくないかに歳なんて関係ないでしょう!? キモいものはキモいの!
私が言うと男はポロリと涙をこぼした。それから私の脚に抱きついて、ありがとう! と、ごめんなさい! を繰り返していた。私の内心はに気づいてもいない。
──こいつキモすぎる。やっぱりやめよう。もう限界。
ファーストキス……。こんなオッサンとキスしてやった……。これで充分、哀香を嫉妬させることができるんじゃない?
そう思って私はごくりと生唾を飲み込んだ。
「べ、別に。キスくらいでそんな嬉しそうにしないでよ……これからもっとすごいことするんだし……」
──!!!???
え? 今、私、何言った?? 本当にするの? こんなキモいオッサンと!?
「ほ、本当にいいの? こんなおじさんとセックスしてくれるの? 君みたいな美少女が?」
下から見上げる男の視線が私の恥部に吸い込まれた。
──するわけないだろ! お前みたいなハゲと!
「いいって言ったでしょ……何度も言わせないでよ。早くあなたも脱いで……私だけ裸なの恥ずかしいんだけど」
──あれ? あれ?? ん? 私って私だっけ??
自分の口から出る言葉を信じられなかった。自分自身のコントロールを完全に失って自分が自分じゃないみたい。
「う、うん」
男は立ち上がって服を脱ぎ出した。私はそれを直視することができなかった。でも見てないといけない。突然飛びかかってきたりしたら悲鳴を上げてしまうから……。
よれよれのTシャツを脱ぐと、でろ~んと脂肪が垂れ下がっているお腹が現れた。片足に私がすっぽり入りそうなほどデカいジーパンを脱ぎ捨てると、むわっと汗臭い匂いが立ち込める。
「えっと……」
トランクス1枚になった男がもじもじとしている姿にイラっとした。私は初めから全裸なのに……。
「早く脱いでよ」
痺れを切らした私は男の前にひざまづいて、男のトランクスに手を伸ばした。
「え? ちょ……」
そして、そのまま一気に引き下ろすと……ボロンと何かが飛び出した。
「ひっ!?」
私は悲鳴を上げた。ツンと鼻を刺す匂いとグロテスクな形。
──え、でか……。
男の股間にぶら下がっている肉棒はぶらんとその異形を見せつけていて、エイリアンみたいに別惑星の生物に思えた。
私に見られたことで興奮したのかその場所に血が集まり、血管が浮き出てムクムクと大きくなる。
「な、なんでこんなに大っきいの……」
「え、そうかな……? 普通だと思うけど……えへへ恥ずかしいな」
男はきょとんとして照れた。おっさんが照れるな! って思うと同時に、私は恐怖で震えていた。
──こんなものが私の中に入るの? 物理的に可能なの!?
それは私が今まで見てきたどれよりも大きかった。サンプルは少ないけど、哀香の持っているディルドより、あの温泉で見た男たちより、お父さんより。っていうかこいつお父さんより年上じゃん……。
「さ、触ってみる?」
私が驚愕で目を見開いていると、それを興味津々と受け取った男が自分のモノを差し出してきた。うげぇって思ったけど、でも、ここで引いたら負けだと思ってガッと強く握りしめた。
「はう……」
男が艶っぽい息を漏らしたからキモさが溢れ出る。負けるな負けるなって自分を鼓舞するけど、そもそも私は何と戦っているんだろう?
おそらくは自分と哀香の中に潜む怪物と戦わされている。抗えない本能という名の怪物。
男の肉棒から感じる生命体の熱量に手汗が出てくる。至近距離で見たことで、その肉棒にこびりついたカスのような汚れに気づいてしまう。
──どうしよう……。臭い……。汚い……。
「あ、ごめん。めんどくさくてあんまりお風呂入ってないんだ……シャワー浴びようか?」
最悪の言い訳だった。小学生でも許されないレベル。
どうする? どうする? 私はぐるぐると考えを巡らせていた。この男にシャワーを浴びさせるべきだろうか? と思った。でも、この男がシャワーを浴び終わるまで自分の精神が耐えられるかどうかが不安だった。だって、その間に少しでも冷静になったら……。頭がおかしくなる気がした。一緒にシャワーを浴びて私が綺麗にする? は? 嫌。
だめだ待てない。
「べ、別にいいよ……。でも、ちょっと拭かせて」
そういってウェットティシュに手を伸ばして、男の肉棒にこびりついた汚れを拭き取ることにした。
──なんで私はこんなことを……。
「あ……んふぅ……」
男は心地良さそうに吐息を漏らす。だまれって思った。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。ウェットティシュには99%除菌って書いてあるし危ない菌は死滅しているはずだから、大丈夫。仮に口に含んでも命に別状はないはず。
──口に含む!?
自分の頭をよぎった考えに恐れ慄いた。
でも、哀香はこんな汚いものを口に突っ込まれていた。哀香もやった。哀香もやった。哀香もやった。じゃあ私もしないと……。私はもう自分自身に洗脳されていたのだろう。
「ゆ、ゆうりちゃん?」
グロテスクなモノをまじまじと見つめながら考え込んだ私に、困惑と心配そうな声が聞こえた。
そして、パクッとくわえ込んだ。
「うわ!!」
──!!??!!
私の突然の行動に男と私は驚愕した。
自分の口の中が汚い肉の感触でいっぱいになる。私は男の性器を口に含んでしまったのだ。
これは消毒。これは消毒。これは消毒。これは消毒。これは消毒。除菌済み。除菌済み。除菌済み。除菌済み。
用意した言い訳を繰り返し頭に流し込む。
──おげぇぇ!!
私はちょっと潔癖症のきらいがある。他人がにぎったおにぎりをあまり食べたくないタイプ。でも自分で握ったりお母さんが握ったおにぎりなら食べられる。だからこれは自分の唾液を使ってコーティングしているだけ、1ミクロンでも自分と同じ性質になれっていう無意味な祈り。
「美少女が僕のチ◯コ咥えてる!!」
男が感嘆の声を漏らしている。
吐き気を抑えながらチラッとカメラを見上げた。
──ねえ、見てる? 哀香……。私……こんなやつの咥えてるよ?
屈辱で脳が焼き切れそうだった。酸素不足になって頭がぼーっとする。気づいた時には私は貪るように肉棒を吸っていた。
「あ、あ……ゆ、ゆうりちゃん……」
男が情けない声を出して私の頭に手をやる。
「んっぐぅ!?」
そしてそのまま押さえつけて腰を動かし始めた。男は私に腰を打ち付ける。何度も何度も喉奥にまで突っ込まれた。
「かっは! ごほごほ!!」
私がむせ返って男の腰を押し返すと、男ははっとした表情をしていた。
「ご、ごめん!」
私は口を拭いながら男をキッと睨んだ。年甲斐もなくオロオロとした男は、私の視線にシュンと肩を落として項垂れた。まだ終わってないから再びモノに口をつける。
「ん!」
「え!……あっあ」
まだ男のモノの先端を綺麗にしてなかったから舌先でチロチロと舐めてやる。ちゅっちゅと割れ目にキスをした。
「あ、ありがとう……」
「べ、別に……調子に乗らないで」
好き好んでこんな汚いものを舐めたわけじゃない。せめて自分の唾液で自分と同じ性質にして浄化しないといけない。せめて。そう思っただけ。
それに、この瞬間も全て録画されている。
始まってしまった演劇を止める手段はもう私にはなかった。
キスもした。
フェラもした。
あとは……。
立ち上がった私は、体を寄せて男と見つめ合う。
男はキョロキョロと挙動不審で、所在なさげにしていた。私は屈辱で顔が沸騰するくらい熱くなっていて、これじゃあまるで照れてるように思われてるかもって……最悪の気分。
男の耳元へ口を寄せる。
そして……一言つぶやいた。
「……ベッドに行きたい」
「……え?」
絶対聞こえたはずなのに男が聞き返した。
「抱いて」
男の瞳を見つめて言った。
──もう引き返せない……。
チラッと哀香を見た。
無機質なレンズの姿をした未来の哀香は何も言ってくれなかった。
──いいの? 哀香……? 私……こんなやつと……。助けて。
私がそう思って泣きそうになった時だった。
その時!!
……なにも起こらなかった。
少年漫画だったらヒーローがドアを蹴破って駆けつけてくれたタイミングだったのかもしれない。
でも全ては幻想という名の現実。
「ゆうりちゃん!!」
「あぅ」
興奮した男がベッドに私を押し倒した。
「はむ……んちゅ……」
男がふがふがと唇を押しつけてくる。哀香のぷにっとした柔らかい唇とは違う、ぶ厚くてカサついた感触。男は私の肩を強く抱いて強引に唇を押しつけてくる。
──なんで私こんなオッサンとキスしてるんだろう?
さっきから鼻がガシガシ当たって不快だし、よだれもドロっとしている気がして気持ち悪い。あと普通に臭い。これが加齢臭ってやつ?
突然、男の目がくわっと見開かれた。
──うわ、キモ。
至近距離で私たちは見つめ合う。
私は自分の見えないところで何かされるのが嫌だから目を開けているだけなのに、男の瞳にはニヤけが宿っている気がして吐き気がする。まじまじと私の顔を眺めるような視線。好き好んでお前とキスしているわけじゃない! ってキレそう。
「むぐぅ!?」
唇を割りいって侵入してきた男の舌。私の歯茎を不器用に舐めまわそうとする。それが不快だったから、私の口の中から出てけ!って思って舌で押し返してやる。
「んちゅ……れぇろ……」
そんなつもりなかったのに唾液まみれの舌同士がぴちゃぴちゃと触れ合う。やめろ! やめろ! って応戦するほどにより激しくネットリと合体する。最悪の軟体生物。
──こんなオヤジとディープキスしてる!?
客観的に自分の姿を想像して鳥肌が立った。それは、ミミズとミミズが絡まり合う最悪のイメージ。男は鼻息を荒くして私の口内を舐め回す。イメージというか現実だった。
「んれぇろ……はむちゅ……」
──キモい……キモいよぉ。
「んちゅ……れろぉ……」
──臭い……くさいよぉ。
「んぐぅ……んぐぅ」
──おえ、飲みたくないのに……。
男は無我夢中で私の唇と舌をむさぼる。唾液が次々に流れ込んできて飲み込まなければ窒息してしまいそうだった。
「ちゅぶ……ちゅぶ」
男が私の唇をあむあむしてくる。
──っていうかいつまでキスするつもりなの!?
離れようと思っても男に背中を押さえられて身動きができない。まるで二度と同じ機会が巡ってこないと思っているのかのように激しく求めてくる。
「んん!」
ついでのように背中に回っていた手が私のお尻を撫で回した。グニっと尻たぶが鷲掴みにされる。
すごく長い時間に思えた。実際に長い。哀香とだったらキスしながら1時間雑談だってできるし何も苦痛じゃない。でもこいつは哀香じゃない。おっさんだ。早く終われって頭の中で念じるほど体感時間はより長くなっていく。
「……ぶっはぁ!」
ようやく解放されて唇同士が離れた。何度も唾を飲み込まされたせいでむせてしまった。
「あ、ごめん。えっと、あの……」
男はチラチラと所在なさげに私の顔を見ている。その顔は真っ赤に染まっていて目が泳いでいた。
──なんでお前が照れてんだ!
年齢不相応のウブな反応にイラっとする。中年オヤジのくせに。お前如きが私とキス出来てよかったねっ!って殴りたい気分。
「なに?」
「えっと、その……僕、初めてで……これがキスなんだって」
私がにらむと、男はオドオドと言い訳じみた言葉をぽつぽつと漏らした。
「ちょっと引きこもってたら……いつの間にかおじさんになちゃってて……キスも出来ずに……このまま死んでいくのかなって不安になってたんだぁ」
「だから?」
なんだこいつ……キモい。私に関係ない自分語りを聞いてもいないのにぺちゃくちゃ話して……。
「それが君みたいな美少女とファーストキスできるなんて思わなかったから……うれしくって。ごめん……気持ち悪いよね……」
「……うっ」
──あ、本当にキモい。なんで私はこんな奴とキスしたんだろう?
べろべろと舐られた唇と鼻先にはまだこの男の唾液が残っていて、つんと何かの匂いがした。汗か加齢臭か体臭か、たぶんそれが全部混ざった匂い。
「いや……そんなことないけど……」
──いやいやいやいやいや、めちゃっキモいけど!?
「私もファーストキスだったし……男とは」
「本当!? いいの僕なんかで!?」
「……うん」
男は照れて笑った。私は屈辱で顔を背けたのだけど、もしかしたらその動作が照れ隠しに見えてしまったかもしれない。
そして、男は土下座した。
「ありがとぉぉぉぉぉ!!」
「え、ちょ……」
男の突然の行動に頭が????で支配される。頭をフローリングに打ち付ける勢いで土下座した男は、私の脚にしがみついた。そのまま蹴っ飛ばしてやろうと思ったけど、ぐっと我慢した。ドン引きして、引きつった顔を向けてやると男は泣いていた。
「な、なに? 大丈夫(頭)?」
「僕なんかが君みたいな可愛い子の初めてをもらっちゃって……本当に嬉しいよ!」
「……っ」
男は土下座した状態のまま私の脚に頬ずりしている。その行為がまるで犬や猫が飼い主にすがりつくようで、同じ人間とは思えなかった。
「な、なんでそんな卑屈なの……」
「え、だって僕みたいなおじさんだよ?」
「……それが何? 歳なんて関係ないでしょ……」
私が言うと男は目をぱちくりさせた。
本心だった。
──だって、キモいかキモくないかに歳なんて関係ないでしょう!? キモいものはキモいの!
私が言うと男はポロリと涙をこぼした。それから私の脚に抱きついて、ありがとう! と、ごめんなさい! を繰り返していた。私の内心はに気づいてもいない。
──こいつキモすぎる。やっぱりやめよう。もう限界。
ファーストキス……。こんなオッサンとキスしてやった……。これで充分、哀香を嫉妬させることができるんじゃない?
そう思って私はごくりと生唾を飲み込んだ。
「べ、別に。キスくらいでそんな嬉しそうにしないでよ……これからもっとすごいことするんだし……」
──!!!???
え? 今、私、何言った?? 本当にするの? こんなキモいオッサンと!?
「ほ、本当にいいの? こんなおじさんとセックスしてくれるの? 君みたいな美少女が?」
下から見上げる男の視線が私の恥部に吸い込まれた。
──するわけないだろ! お前みたいなハゲと!
「いいって言ったでしょ……何度も言わせないでよ。早くあなたも脱いで……私だけ裸なの恥ずかしいんだけど」
──あれ? あれ?? ん? 私って私だっけ??
自分の口から出る言葉を信じられなかった。自分自身のコントロールを完全に失って自分が自分じゃないみたい。
「う、うん」
男は立ち上がって服を脱ぎ出した。私はそれを直視することができなかった。でも見てないといけない。突然飛びかかってきたりしたら悲鳴を上げてしまうから……。
よれよれのTシャツを脱ぐと、でろ~んと脂肪が垂れ下がっているお腹が現れた。片足に私がすっぽり入りそうなほどデカいジーパンを脱ぎ捨てると、むわっと汗臭い匂いが立ち込める。
「えっと……」
トランクス1枚になった男がもじもじとしている姿にイラっとした。私は初めから全裸なのに……。
「早く脱いでよ」
痺れを切らした私は男の前にひざまづいて、男のトランクスに手を伸ばした。
「え? ちょ……」
そして、そのまま一気に引き下ろすと……ボロンと何かが飛び出した。
「ひっ!?」
私は悲鳴を上げた。ツンと鼻を刺す匂いとグロテスクな形。
──え、でか……。
男の股間にぶら下がっている肉棒はぶらんとその異形を見せつけていて、エイリアンみたいに別惑星の生物に思えた。
私に見られたことで興奮したのかその場所に血が集まり、血管が浮き出てムクムクと大きくなる。
「な、なんでこんなに大っきいの……」
「え、そうかな……? 普通だと思うけど……えへへ恥ずかしいな」
男はきょとんとして照れた。おっさんが照れるな! って思うと同時に、私は恐怖で震えていた。
──こんなものが私の中に入るの? 物理的に可能なの!?
それは私が今まで見てきたどれよりも大きかった。サンプルは少ないけど、哀香の持っているディルドより、あの温泉で見た男たちより、お父さんより。っていうかこいつお父さんより年上じゃん……。
「さ、触ってみる?」
私が驚愕で目を見開いていると、それを興味津々と受け取った男が自分のモノを差し出してきた。うげぇって思ったけど、でも、ここで引いたら負けだと思ってガッと強く握りしめた。
「はう……」
男が艶っぽい息を漏らしたからキモさが溢れ出る。負けるな負けるなって自分を鼓舞するけど、そもそも私は何と戦っているんだろう?
おそらくは自分と哀香の中に潜む怪物と戦わされている。抗えない本能という名の怪物。
男の肉棒から感じる生命体の熱量に手汗が出てくる。至近距離で見たことで、その肉棒にこびりついたカスのような汚れに気づいてしまう。
──どうしよう……。臭い……。汚い……。
「あ、ごめん。めんどくさくてあんまりお風呂入ってないんだ……シャワー浴びようか?」
最悪の言い訳だった。小学生でも許されないレベル。
どうする? どうする? 私はぐるぐると考えを巡らせていた。この男にシャワーを浴びさせるべきだろうか? と思った。でも、この男がシャワーを浴び終わるまで自分の精神が耐えられるかどうかが不安だった。だって、その間に少しでも冷静になったら……。頭がおかしくなる気がした。一緒にシャワーを浴びて私が綺麗にする? は? 嫌。
だめだ待てない。
「べ、別にいいよ……。でも、ちょっと拭かせて」
そういってウェットティシュに手を伸ばして、男の肉棒にこびりついた汚れを拭き取ることにした。
──なんで私はこんなことを……。
「あ……んふぅ……」
男は心地良さそうに吐息を漏らす。だまれって思った。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。ウェットティシュには99%除菌って書いてあるし危ない菌は死滅しているはずだから、大丈夫。仮に口に含んでも命に別状はないはず。
──口に含む!?
自分の頭をよぎった考えに恐れ慄いた。
でも、哀香はこんな汚いものを口に突っ込まれていた。哀香もやった。哀香もやった。哀香もやった。じゃあ私もしないと……。私はもう自分自身に洗脳されていたのだろう。
「ゆ、ゆうりちゃん?」
グロテスクなモノをまじまじと見つめながら考え込んだ私に、困惑と心配そうな声が聞こえた。
そして、パクッとくわえ込んだ。
「うわ!!」
──!!??!!
私の突然の行動に男と私は驚愕した。
自分の口の中が汚い肉の感触でいっぱいになる。私は男の性器を口に含んでしまったのだ。
これは消毒。これは消毒。これは消毒。これは消毒。これは消毒。除菌済み。除菌済み。除菌済み。除菌済み。
用意した言い訳を繰り返し頭に流し込む。
──おげぇぇ!!
私はちょっと潔癖症のきらいがある。他人がにぎったおにぎりをあまり食べたくないタイプ。でも自分で握ったりお母さんが握ったおにぎりなら食べられる。だからこれは自分の唾液を使ってコーティングしているだけ、1ミクロンでも自分と同じ性質になれっていう無意味な祈り。
「美少女が僕のチ◯コ咥えてる!!」
男が感嘆の声を漏らしている。
吐き気を抑えながらチラッとカメラを見上げた。
──ねえ、見てる? 哀香……。私……こんなやつの咥えてるよ?
屈辱で脳が焼き切れそうだった。酸素不足になって頭がぼーっとする。気づいた時には私は貪るように肉棒を吸っていた。
「あ、あ……ゆ、ゆうりちゃん……」
男が情けない声を出して私の頭に手をやる。
「んっぐぅ!?」
そしてそのまま押さえつけて腰を動かし始めた。男は私に腰を打ち付ける。何度も何度も喉奥にまで突っ込まれた。
「かっは! ごほごほ!!」
私がむせ返って男の腰を押し返すと、男ははっとした表情をしていた。
「ご、ごめん!」
私は口を拭いながら男をキッと睨んだ。年甲斐もなくオロオロとした男は、私の視線にシュンと肩を落として項垂れた。まだ終わってないから再びモノに口をつける。
「ん!」
「え!……あっあ」
まだ男のモノの先端を綺麗にしてなかったから舌先でチロチロと舐めてやる。ちゅっちゅと割れ目にキスをした。
「あ、ありがとう……」
「べ、別に……調子に乗らないで」
好き好んでこんな汚いものを舐めたわけじゃない。せめて自分の唾液で自分と同じ性質にして浄化しないといけない。せめて。そう思っただけ。
それに、この瞬間も全て録画されている。
始まってしまった演劇を止める手段はもう私にはなかった。
キスもした。
フェラもした。
あとは……。
立ち上がった私は、体を寄せて男と見つめ合う。
男はキョロキョロと挙動不審で、所在なさげにしていた。私は屈辱で顔が沸騰するくらい熱くなっていて、これじゃあまるで照れてるように思われてるかもって……最悪の気分。
男の耳元へ口を寄せる。
そして……一言つぶやいた。
「……ベッドに行きたい」
「……え?」
絶対聞こえたはずなのに男が聞き返した。
「抱いて」
男の瞳を見つめて言った。
──もう引き返せない……。
チラッと哀香を見た。
無機質なレンズの姿をした未来の哀香は何も言ってくれなかった。
──いいの? 哀香……? 私……こんなやつと……。助けて。
私がそう思って泣きそうになった時だった。
その時!!
……なにも起こらなかった。
少年漫画だったらヒーローがドアを蹴破って駆けつけてくれたタイミングだったのかもしれない。
でも全ては幻想という名の現実。
「ゆうりちゃん!!」
「あぅ」
興奮した男がベッドに私を押し倒した。
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