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14'哀香処女喪失
67.目が覚めて変わっていたこと
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(哀香視点)
目を覚ますと、そこには知らない天井があった。
眩しい光が差し込んできて思わず目を細める。
朝だ。
「あ……れ?」
ぼんやりとした思考の中、意識がはっきりするのを待つ。
私はなぜここにいるのだろう?
ずんっと頭が重く、記憶がはっきりとしない。あったかくて快適なベッド。暑くも寒くもない。すべすべとした肌触りのシーツ。
そういばここはホテルのスイートルーム。
記憶を辿ろうと思い、頭を働かせる。
なんでこんなに頭が重いんだろう?
たしか私は昨日……悠莉と何かの準備をしてて、一緒にご飯を食べて、初めての液体を飲んで……。
「あっ!」
意識が一瞬ではっきりとして飛び起きた。
自分の身体を抱き止めて思わずぺたぺたと胸や腰回りを触る。
服は着ていた。
昨日、私が着ていたブラウス。特に乱れもなく違和感がない。
「え? なんで……?」
なんで私は……服を着ているのだろう?
てっきり私は全裸で放置されていると思っていた。どこにも痛みはない。状況が飲み込めずにポカンとした。まるでなんの変哲もない一夜が明けたよう。
普通の人間だったら、「朝起きて全裸で放置されていた」としたらパニックになってもおかしくない。それが常識だ。でも私は変態だ。「襲われなくてよかった」って言葉は「襲われなかったの?」っていう言葉に反転されていた。
私は昨日、誰かに『処女を奪われた』はず。なのに……。
何かトラブルでもあったのだろうか? 全裸じゃないなんておかしい。
眠っているうちに男の人とセックスするっていう、とんでもないシチュエーション。しかも処女喪失。
それは多分、すごく特別なことのはず。初めては、一生に一回しかない特別な経験なのだから……。
たとえ寝ていたとしても起きた瞬間わかるような特別な『刻み』があると思っていた。
シーツに染みがないか探してみたけど真っ白で純白のまま。
──意外と、こんなものなんだ……。
正直に言うと、ガッカリした。
実感が伴わない体験に、心躍らされるわけでもなく、ただ普通に目が覚めたという感覚だった。
自分の身体をあちこち触ってみたけど、特に変わったことはない。
『処女喪失』に特別感を求めていた私は、思っていたよりも普通な朝に拍子抜けした。
処女じゃなくなったからといって、残念でも誇ることでもないのかも……。だって、人類は何百億人ってセックスをして子孫を残してきたんだから、私の処女なんてただの大海への一滴でしかないのかもしれない。
頭が重い。
多分これが人生で初めての二日酔い。
けだるい頭。ガッカリ感。
着替える必要もない。
だから、私は特に期待もせず、ふと服の裾をめくってみた。
「!」
あることに気づいて驚いた。
えっ、って思って今度は谷間を覗き込む。
「あ、れ? こっちも変わってる?」
私の下着が変わっていた。
昨日は上下白のフリルのブラとショーツだったはず。なのに、今は見たこともないものになっている。
同じ白系の下着だけど、レースがついてて、黒のリボンがついていた。
それだけならまだ思い違いだって言えたけど、その下着は私でも知っているブランドのロゴマークが刺繍されていた。
こんな下着を私は持っていなかった。
「????」
混乱した。
朝起きたら下着が変わっていたっていう経験は、はじめてだったから。というか、こんな経験をしたことがある人っているのかな?
ドキッとした。
ざわざわとした胸騒ぎがする。
いつもと変わらない朝に隠れていた確かな変化は、日常を侵食するように確かに存在していた。
これは世界が変わったという証……。
──私はもう処女じゃない。
この見知らぬ下着がその証拠だった。
確信を得た私の胸は高鳴り始めた。
胸に手を当てると、心臓は壊れそうなほどバクバクと早鐘を打っていた。
これが私の望んだこと。高揚感で口元が歪む。
思わず股間に手が伸びた。
はっとして、ショーツを脱ぎ捨てた。
あぶないところだった。たぶんこのショーツは私への贈り物なのだろう。汚したくなかった。
私はブラも剥ぎ取って綺麗に畳んだ。これから帰宅するまでノーパンノーブラでいるくらいなんでもない。
「うふふ……」
おそらくは、私の処女を奪ってくれた男性からの誕生日プレゼント。大切にしたかった。
物証は手に入れた。
あとは記録を見よう。
さらなる実感を得た時、私は新しい階段を登れる。大人の階段を、女としての階段を登ったのだ。
ガチャリとドアが開いた。
例え話じゃなくて現実の世界での出来事だった。誰かが部屋に入ってきた音。
「あ、哀香。起きてたんだ……」
悠莉だった。私の大切な人。
私は彼女の元へ駆け寄った。
「おはよう! ねえ、早く見たい!」
彼女に抱きついてプレゼントをねだる。
「う、うん。えっと……私もまだ見てないから……私の家で見よう? プロジェクターがあるから大画面で……」
「うん!!」
私は彼女の手を握ってブンブン振って、この言いようのない感情を伝えようとしたけれど、悠莉は口元を引き攣らせていた。私とテンション感が合っていない。
たぶん、彼女もまだ実感を得ていない。
「哀香……。男に犯されちゃったんだよね……。私以外のヤツとセックスしちゃったんだ……もう完全に処女じゃないんだよね?」
この計画を立てた張本人の彼女はなぜか複雑そうな顔をしていた。少し悲しそう。でも、口元はにやけている。
その姿にきゅん♡とした。
ぎゅっと手を握って彼女と抱き合う。目が合って、唇を重ねた。
「ありがとう! あなたのおかげ!」
「キズとかつけられてない? ついてたら殺す」
「大丈夫。どこも痛くないよ。あ……でも、処女膜は破れてるかも♡ ヒリヒリもしないし、個人差があるのかな? 私……結構オナニーとかしてたから……。 ほら!」
私は裾をたくし上げて悠莉に下半身を見せてあげた。
「なんで、ノーパンなの……? もしかして、盗まれた? きも」
「違うよ。さっき脱いだの。あ、でもある意味盗まれたかも。正確には交換? ほら見て!」
私は目覚めた時に履いていたブラとショーツを彼女の前に出した。
「朝起きたらね。変わってたの! ブランドものだよねこれ。わざわざ履かせてくれたみたい! だから、もらっちゃっていいよね? うれしい!」
「……いや、めっちゃキモいけど。私なら捨てる」
悠莉は顔を引き攣らせドン引きしていた。
***
そして、私たちは急いで撤収準備を始めた。
三脚からカメラを外して、スマホを回収する。忘れ物がないか確認してホテルの部屋から足早に立ち去った。
バイクに乗り込んで悠莉の家へ向かう。到着して家中の鍵をかけた。
彼女の両親は今日は帰ってこない。
パソコンにスマホとカメラのデータを移動させる。
一晩中、回しっぱなしだった録画データは数時間にも及んでいた。
読み込みに時間がかかったけれど、準備は整った。
エンターキーを押すと処理が開始される。
これは『AI処理』。
最近は動画編集もAIがやってくれるし、そこそこ出来がいい。無音の部分とか動きがないところを一括で編集してくれるのだ。しかも別々で録画した映像データを一つの動画に編集してくれる。
最近までこういう技術というか、スマホにさえ疎かった私だけどエッチなことのためなら、新しいことを学ぶのは苦じゃなかった。
まだかな♡ まだかな♡ ってワクワクしながらPCの画面を見る。
AI(アイ)ちゃんが頑張って動画編集してくれる様子をソワソワしながら待った。
やがて、2時間30分ほどのダイジェスト動画が完成した。ちょっとした長編映画くらい。
部屋を暗くしてプロジェクターを起動する。
「早く、早く!」
私たちはぎゅっと手を握り合って、リモコンのボタンを押した。
目の前に初めての映像が広がる。もちろん初見。いろんな意味で。
ついに『私の処女喪失ダイジェスト』が再生されるのだ。
私はこの映像を見た時点で『非処女』になる。
それまでは事象は確定していない。未来はまだ観測されていないから。
いわば『シュレディンガーの処女』(?)粒子は振る舞いを変える。
まだわからない。まだ……♡
「ああ……」
横にいる友人の横顔をチラッと見ると恍惚の表情でスクリーンを見上げていた。まるで祈りを捧げるように。
私も思わずぐにゃりと口が歪んだ。
──あ、ポップコーンを買うの忘れちゃた……。
今から始まるのは、きっとコメディだから♡
目を覚ますと、そこには知らない天井があった。
眩しい光が差し込んできて思わず目を細める。
朝だ。
「あ……れ?」
ぼんやりとした思考の中、意識がはっきりするのを待つ。
私はなぜここにいるのだろう?
ずんっと頭が重く、記憶がはっきりとしない。あったかくて快適なベッド。暑くも寒くもない。すべすべとした肌触りのシーツ。
そういばここはホテルのスイートルーム。
記憶を辿ろうと思い、頭を働かせる。
なんでこんなに頭が重いんだろう?
たしか私は昨日……悠莉と何かの準備をしてて、一緒にご飯を食べて、初めての液体を飲んで……。
「あっ!」
意識が一瞬ではっきりとして飛び起きた。
自分の身体を抱き止めて思わずぺたぺたと胸や腰回りを触る。
服は着ていた。
昨日、私が着ていたブラウス。特に乱れもなく違和感がない。
「え? なんで……?」
なんで私は……服を着ているのだろう?
てっきり私は全裸で放置されていると思っていた。どこにも痛みはない。状況が飲み込めずにポカンとした。まるでなんの変哲もない一夜が明けたよう。
普通の人間だったら、「朝起きて全裸で放置されていた」としたらパニックになってもおかしくない。それが常識だ。でも私は変態だ。「襲われなくてよかった」って言葉は「襲われなかったの?」っていう言葉に反転されていた。
私は昨日、誰かに『処女を奪われた』はず。なのに……。
何かトラブルでもあったのだろうか? 全裸じゃないなんておかしい。
眠っているうちに男の人とセックスするっていう、とんでもないシチュエーション。しかも処女喪失。
それは多分、すごく特別なことのはず。初めては、一生に一回しかない特別な経験なのだから……。
たとえ寝ていたとしても起きた瞬間わかるような特別な『刻み』があると思っていた。
シーツに染みがないか探してみたけど真っ白で純白のまま。
──意外と、こんなものなんだ……。
正直に言うと、ガッカリした。
実感が伴わない体験に、心躍らされるわけでもなく、ただ普通に目が覚めたという感覚だった。
自分の身体をあちこち触ってみたけど、特に変わったことはない。
『処女喪失』に特別感を求めていた私は、思っていたよりも普通な朝に拍子抜けした。
処女じゃなくなったからといって、残念でも誇ることでもないのかも……。だって、人類は何百億人ってセックスをして子孫を残してきたんだから、私の処女なんてただの大海への一滴でしかないのかもしれない。
頭が重い。
多分これが人生で初めての二日酔い。
けだるい頭。ガッカリ感。
着替える必要もない。
だから、私は特に期待もせず、ふと服の裾をめくってみた。
「!」
あることに気づいて驚いた。
えっ、って思って今度は谷間を覗き込む。
「あ、れ? こっちも変わってる?」
私の下着が変わっていた。
昨日は上下白のフリルのブラとショーツだったはず。なのに、今は見たこともないものになっている。
同じ白系の下着だけど、レースがついてて、黒のリボンがついていた。
それだけならまだ思い違いだって言えたけど、その下着は私でも知っているブランドのロゴマークが刺繍されていた。
こんな下着を私は持っていなかった。
「????」
混乱した。
朝起きたら下着が変わっていたっていう経験は、はじめてだったから。というか、こんな経験をしたことがある人っているのかな?
ドキッとした。
ざわざわとした胸騒ぎがする。
いつもと変わらない朝に隠れていた確かな変化は、日常を侵食するように確かに存在していた。
これは世界が変わったという証……。
──私はもう処女じゃない。
この見知らぬ下着がその証拠だった。
確信を得た私の胸は高鳴り始めた。
胸に手を当てると、心臓は壊れそうなほどバクバクと早鐘を打っていた。
これが私の望んだこと。高揚感で口元が歪む。
思わず股間に手が伸びた。
はっとして、ショーツを脱ぎ捨てた。
あぶないところだった。たぶんこのショーツは私への贈り物なのだろう。汚したくなかった。
私はブラも剥ぎ取って綺麗に畳んだ。これから帰宅するまでノーパンノーブラでいるくらいなんでもない。
「うふふ……」
おそらくは、私の処女を奪ってくれた男性からの誕生日プレゼント。大切にしたかった。
物証は手に入れた。
あとは記録を見よう。
さらなる実感を得た時、私は新しい階段を登れる。大人の階段を、女としての階段を登ったのだ。
ガチャリとドアが開いた。
例え話じゃなくて現実の世界での出来事だった。誰かが部屋に入ってきた音。
「あ、哀香。起きてたんだ……」
悠莉だった。私の大切な人。
私は彼女の元へ駆け寄った。
「おはよう! ねえ、早く見たい!」
彼女に抱きついてプレゼントをねだる。
「う、うん。えっと……私もまだ見てないから……私の家で見よう? プロジェクターがあるから大画面で……」
「うん!!」
私は彼女の手を握ってブンブン振って、この言いようのない感情を伝えようとしたけれど、悠莉は口元を引き攣らせていた。私とテンション感が合っていない。
たぶん、彼女もまだ実感を得ていない。
「哀香……。男に犯されちゃったんだよね……。私以外のヤツとセックスしちゃったんだ……もう完全に処女じゃないんだよね?」
この計画を立てた張本人の彼女はなぜか複雑そうな顔をしていた。少し悲しそう。でも、口元はにやけている。
その姿にきゅん♡とした。
ぎゅっと手を握って彼女と抱き合う。目が合って、唇を重ねた。
「ありがとう! あなたのおかげ!」
「キズとかつけられてない? ついてたら殺す」
「大丈夫。どこも痛くないよ。あ……でも、処女膜は破れてるかも♡ ヒリヒリもしないし、個人差があるのかな? 私……結構オナニーとかしてたから……。 ほら!」
私は裾をたくし上げて悠莉に下半身を見せてあげた。
「なんで、ノーパンなの……? もしかして、盗まれた? きも」
「違うよ。さっき脱いだの。あ、でもある意味盗まれたかも。正確には交換? ほら見て!」
私は目覚めた時に履いていたブラとショーツを彼女の前に出した。
「朝起きたらね。変わってたの! ブランドものだよねこれ。わざわざ履かせてくれたみたい! だから、もらっちゃっていいよね? うれしい!」
「……いや、めっちゃキモいけど。私なら捨てる」
悠莉は顔を引き攣らせドン引きしていた。
***
そして、私たちは急いで撤収準備を始めた。
三脚からカメラを外して、スマホを回収する。忘れ物がないか確認してホテルの部屋から足早に立ち去った。
バイクに乗り込んで悠莉の家へ向かう。到着して家中の鍵をかけた。
彼女の両親は今日は帰ってこない。
パソコンにスマホとカメラのデータを移動させる。
一晩中、回しっぱなしだった録画データは数時間にも及んでいた。
読み込みに時間がかかったけれど、準備は整った。
エンターキーを押すと処理が開始される。
これは『AI処理』。
最近は動画編集もAIがやってくれるし、そこそこ出来がいい。無音の部分とか動きがないところを一括で編集してくれるのだ。しかも別々で録画した映像データを一つの動画に編集してくれる。
最近までこういう技術というか、スマホにさえ疎かった私だけどエッチなことのためなら、新しいことを学ぶのは苦じゃなかった。
まだかな♡ まだかな♡ ってワクワクしながらPCの画面を見る。
AI(アイ)ちゃんが頑張って動画編集してくれる様子をソワソワしながら待った。
やがて、2時間30分ほどのダイジェスト動画が完成した。ちょっとした長編映画くらい。
部屋を暗くしてプロジェクターを起動する。
「早く、早く!」
私たちはぎゅっと手を握り合って、リモコンのボタンを押した。
目の前に初めての映像が広がる。もちろん初見。いろんな意味で。
ついに『私の処女喪失ダイジェスト』が再生されるのだ。
私はこの映像を見た時点で『非処女』になる。
それまでは事象は確定していない。未来はまだ観測されていないから。
いわば『シュレディンガーの処女』(?)粒子は振る舞いを変える。
まだわからない。まだ……♡
「ああ……」
横にいる友人の横顔をチラッと見ると恍惚の表情でスクリーンを見上げていた。まるで祈りを捧げるように。
私も思わずぐにゃりと口が歪んだ。
──あ、ポップコーンを買うの忘れちゃた……。
今から始まるのは、きっとコメディだから♡
0
お読みいただき、ありがとうございます!少しでもエッチだと思っていただけましたら、お気に入り&感想などよろしくお願いいたします!
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