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第一部 エピローグ
61.私たちの計画はまだ始まったばかり。
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あれから一年がたった。
「ねぇ、悠莉……。私もう我慢できない……」
「うん私も。もう限界」
エスカレートした欲望に歯止めをかけるブレーキはすでに壊れていて、誰にも止められない暴走機関車になっていた。
あの忘れえぬヌードデッサンで気づかされた本性。最初は嫌だったはずなのに、もはや快感になってしまった。
あれから季節は一巡しようとしていた。
私達は何人もの男性に裸を見られて、見せて、触られてきた。真面目ちゃんだった私はもういない。
なのに私はまだ処女のまま。
処女の定義にもよるけれど、少なくとも男の人のアレを私のアソコに挿入したことはない。
もちろん悠莉とのセックスが快感なのは嘘じゃなくて、不満とかではない。彼女は親友で最愛の人だ。大学卒業後は一緒に暮らそうって話している。
彼女は生涯のパートナー。
でも、決して彼女には無いものがある。
彼女は女だから……。
もちろん人それぞれ愛の形は違っているから、他人を否定するつもりはないけれど、だからこそ私達を否定する権利も誰にもないはずだ。
私は彼女が女だから好きになったわけじゃなくて、好きになった悠莉がたまたま女だっただけ。
だから私達を型に嵌めないでほしい。枷はもう壊れてしまっているから……。
あの日聞いた彼女の性癖。
『好きなものをメチャメチャに穢したい』って言う悠莉のカミングアウト。
子どもの頃、私も思い描いていた夢がある。
どこかの国の王子様が、白馬に乗って私を迎えにきてくれる。出会った二人はひと目で恋に落ちて、大恋愛の末に結婚。そして、初めての夜……幸せなキスをして私は彼に処女を捧げる。やがて子どもを授かり、幸せな家庭を築いて末長く暮らしていく。めでたしめでたし。
っていう美しい空想にまみれた未来予想図。純白の絵空事。そんな夢みがちな少女の妄想は成長と共にぐちゃぐちゃに変化していった。
男性に処女を「捧げる」って言い方は傲慢だから好きじゃない。そんな価値はあるのだろうか?
一生に一度しかないものを大切な人の為に取っておくって考えは美しいかもしれないけれど、美しいことにしか価値がない。いつまでも大切に持っていても美術品みたいに、美しさと古さ両方に価値が生まれたりはしないのだ。
だって、人は強欲だから。美術品と違って人は必ず朽ち果てる。いつまでも同じ姿ではいられない。
だから私は……。
私のことなんて性の捌け口にしか思ってないような、そこら辺にいる男性に、ムードのへったくれもない道端で、無責任に処女を奪われてみたい。それから乱暴に道端に捨てられたい。
真面目に生きてきた自分を破壊するような経験をしてみたい。
親の期待とか、死に物狂いで積み重ねてきたものなんか、あっさりと何もかもめちゃめちゃに壊れちゃえばいいのにってずっと思っていた。
心のうちに抱えていた破滅願望は日に日に膨らんでいた。積もっていた感情があのヌードデッサンで爆発してしまったのかもしれない。
私はずっと待っていた。裸を見せつけることで、襲われることを期待していた。
誰にも知られちゃいけないドス黒い欲望を抱えたまま一人孤独に生きていく……そう思っていた。
「ねえ、悠莉。私ね……男の人に犯されてみたいの」
私は親友に自分の願望を打ち明けた。
「うん……知ってるよ。だってずっと見てたもん……」
悠莉は驚くこともなく、ただ優しい笑顔で私のカミングアウトを受け入れてくれた。
「軽蔑しないの? 気持ち悪いとか思わない?」
不安だった。でも、彼女はそんな心配なんて無用だと言わんばかりに邪悪な笑みを浮かべてくれる。
「私もね、実はずっと思ってたんだ……哀香が男に犯されてるところ見たいって……めちゃめちゃになっちゃえばいいのにって」
悠莉も告白して恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ふふ、変態だね」
「あなただって」
私達は笑い合った。
暗闇で一人もがいていたのは私だけじゃなかった。何も見えない闇の中でそっと触れた手の感触。これだけは絶対に逃さないと心に誓った。
ちゅ♡ っと唇が湿った。
どちらかともなくキスをした。これは誓いのキスだった。
「私に考えがあるの……」
悠莉が怪しく言った。
──ああ……やっと私の願いが叶う
処女なんて枷は取っ払ってしまおう。
欲望の赴くままに貪り尽くそう。戻れない深みまで堕ちてぐちゃぐちゃに破滅しよう。
でも、きっと大丈夫。どんなに穢れても私たちは必ず幸せになれる。
2人だけのハッピーエンドはもう約束されているのだから……何も怖くない。
限界を超えた次のステージへ……。
私たちの計画はまだ始まったばかり。
第一部完。
「ねぇ、悠莉……。私もう我慢できない……」
「うん私も。もう限界」
エスカレートした欲望に歯止めをかけるブレーキはすでに壊れていて、誰にも止められない暴走機関車になっていた。
あの忘れえぬヌードデッサンで気づかされた本性。最初は嫌だったはずなのに、もはや快感になってしまった。
あれから季節は一巡しようとしていた。
私達は何人もの男性に裸を見られて、見せて、触られてきた。真面目ちゃんだった私はもういない。
なのに私はまだ処女のまま。
処女の定義にもよるけれど、少なくとも男の人のアレを私のアソコに挿入したことはない。
もちろん悠莉とのセックスが快感なのは嘘じゃなくて、不満とかではない。彼女は親友で最愛の人だ。大学卒業後は一緒に暮らそうって話している。
彼女は生涯のパートナー。
でも、決して彼女には無いものがある。
彼女は女だから……。
もちろん人それぞれ愛の形は違っているから、他人を否定するつもりはないけれど、だからこそ私達を否定する権利も誰にもないはずだ。
私は彼女が女だから好きになったわけじゃなくて、好きになった悠莉がたまたま女だっただけ。
だから私達を型に嵌めないでほしい。枷はもう壊れてしまっているから……。
あの日聞いた彼女の性癖。
『好きなものをメチャメチャに穢したい』って言う悠莉のカミングアウト。
子どもの頃、私も思い描いていた夢がある。
どこかの国の王子様が、白馬に乗って私を迎えにきてくれる。出会った二人はひと目で恋に落ちて、大恋愛の末に結婚。そして、初めての夜……幸せなキスをして私は彼に処女を捧げる。やがて子どもを授かり、幸せな家庭を築いて末長く暮らしていく。めでたしめでたし。
っていう美しい空想にまみれた未来予想図。純白の絵空事。そんな夢みがちな少女の妄想は成長と共にぐちゃぐちゃに変化していった。
男性に処女を「捧げる」って言い方は傲慢だから好きじゃない。そんな価値はあるのだろうか?
一生に一度しかないものを大切な人の為に取っておくって考えは美しいかもしれないけれど、美しいことにしか価値がない。いつまでも大切に持っていても美術品みたいに、美しさと古さ両方に価値が生まれたりはしないのだ。
だって、人は強欲だから。美術品と違って人は必ず朽ち果てる。いつまでも同じ姿ではいられない。
だから私は……。
私のことなんて性の捌け口にしか思ってないような、そこら辺にいる男性に、ムードのへったくれもない道端で、無責任に処女を奪われてみたい。それから乱暴に道端に捨てられたい。
真面目に生きてきた自分を破壊するような経験をしてみたい。
親の期待とか、死に物狂いで積み重ねてきたものなんか、あっさりと何もかもめちゃめちゃに壊れちゃえばいいのにってずっと思っていた。
心のうちに抱えていた破滅願望は日に日に膨らんでいた。積もっていた感情があのヌードデッサンで爆発してしまったのかもしれない。
私はずっと待っていた。裸を見せつけることで、襲われることを期待していた。
誰にも知られちゃいけないドス黒い欲望を抱えたまま一人孤独に生きていく……そう思っていた。
「ねえ、悠莉。私ね……男の人に犯されてみたいの」
私は親友に自分の願望を打ち明けた。
「うん……知ってるよ。だってずっと見てたもん……」
悠莉は驚くこともなく、ただ優しい笑顔で私のカミングアウトを受け入れてくれた。
「軽蔑しないの? 気持ち悪いとか思わない?」
不安だった。でも、彼女はそんな心配なんて無用だと言わんばかりに邪悪な笑みを浮かべてくれる。
「私もね、実はずっと思ってたんだ……哀香が男に犯されてるところ見たいって……めちゃめちゃになっちゃえばいいのにって」
悠莉も告白して恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ふふ、変態だね」
「あなただって」
私達は笑い合った。
暗闇で一人もがいていたのは私だけじゃなかった。何も見えない闇の中でそっと触れた手の感触。これだけは絶対に逃さないと心に誓った。
ちゅ♡ っと唇が湿った。
どちらかともなくキスをした。これは誓いのキスだった。
「私に考えがあるの……」
悠莉が怪しく言った。
──ああ……やっと私の願いが叶う
処女なんて枷は取っ払ってしまおう。
欲望の赴くままに貪り尽くそう。戻れない深みまで堕ちてぐちゃぐちゃに破滅しよう。
でも、きっと大丈夫。どんなに穢れても私たちは必ず幸せになれる。
2人だけのハッピーエンドはもう約束されているのだから……何も怖くない。
限界を超えた次のステージへ……。
私たちの計画はまだ始まったばかり。
第一部完。
1
お読みいただき、ありがとうございます!少しでもエッチだと思っていただけましたら、お気に入り&感想などよろしくお願いいたします!
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