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8"ラブホテルで暴かれる秘密(伏線回収)
42.異変
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(哀香視点)
私は友達の悠莉が運転するバイクで帰路についている。
朝一番で出発して二時間以上、海岸線を横目に進んで、あの海水浴場まで行った。
私達がやろうとしていたことは、絶対にバレるわけにはいかなかったし、万が一にも顔見知りに会うわけにはいかないから、出来るだけ遠くの海水浴場を調べた。
でも、何事も計画通りにはいかないものだ。
日帰りで戻るつもりだったのに、日はもう落ちて真っ暗になっていた。
あの出来事が予定を狂わせた。
当初、描いていた計画のあらましは『極小のマイクロビキニで連休でごった返した海水浴場に行く』ってことだった。それだけでも十分なくらい恥ずかしい思いが出来ると思ってた。
その計画に付随して『水着が波で流されるハプニング(演技)作戦』』っていう追加プラン、またの名を『おっぱいポロリ作戦』があって、大勢の海水浴客に私たちの裸を見てもらうつもりだった。十分満足できる過激な経験のはずだった。
でも現実は予想と違っていた。
私達はナンパしてきた3人組の男性とバーベキューをして、私はスイカ割りで全裸になったあと、浜辺に人がいなくなったのをいいことに全裸の撮影会を行った。
色んなポーズを取らせてもらって、あんなところや恥ずかしいところまで撮られて、保存されてしまった。
前の穴も後ろの穴も開いて中身まで自分から晒した。
私と悠莉が横に並んでお尻を突き出す光景は彼らにどう映ったのだろうか?
流石に私達が変態だっていうのはバレちゃったかもしれないけど、多分2度と会うことはないだろうから大丈夫。きっと彼らも楽しんでくれたはずだし内緒にしてくれると思う。
でも、あの写真は彼らのスマホの中に残ったままだ。もう私達が手が出せないところに行ってしまって取り戻せない。
彼等がふと思ったとき、暇なとき、どうでもいいとき、彼らの気まぐれで、いつでもあの写真を確認できてしまう。
ネットとかには載せないって約束してくれたけど、友達同士で見せあうくらいなら私達は関知できないし止めようがない。
あの写真をネットで発見した時、私はどんな気持ちになるのだろう?
私達のひと夏の過ち。
見知らぬ土地の見知らぬ人、その開放感が私達の計画を狂わせた。
楽しくって楽しくって脳内麻薬で頭がおかしくなっていた。
こんな機会二度とないんじゃないかって思ったら止められなくなって暴走してしまった。照り返しの日光と興奮で身体は熱って汗だく。
まだ疼きは消えていない。
だから、悠莉も同じ気持ちで楽しんでいるだろうなって思っていた。なのに……。
コンビニでバイクが停まった。
休憩のために立ち寄ったのだと分かった。
「……悠莉、疲れたね。運転ありがとう……」
「……」
「悠莉? 何かたべる? グミ買ってあげようか」
返事はなかった。私を一瞥だけして、そそくさとコンビニの中に入っていった。後をついていったのに無言でトイレのドアが閉められた。
ガチャリと鍵がかかる。
今まで見たことがないような冷たい態度に私は動揺した。
コンビニの外に出てバイクを眺めながら、何をするわけでもなく彼女の帰りを待った。
──悠莉、どうしちゃったんだろう?
あの浜辺での出来事から彼女の様子がおかしい。
たしかに、あの出来事は計画にない異常な事態だった。とんでもなく異常な出来事。
でも私達は……露出狂の変態。裸を撮影されて恥ずかしくて恥ずかしくて、嬉しかったはずなのだ。
異常×異常で快感プラス。
無言になった彼女を見て、最初は、あの出来事を噛みしめているのかと思っていた。でもなんだか雰囲気がいつもと違うことをなんとなく察していた。
──何か嫌なことでもあったのかな……?
夜空を見上げて思いを巡らせる。青空の下でお尻の穴を見せつける彼女の姿がフラッシュバックした。
野外で自分からお尻を拡げて、ヒクつかせて、撮影してもらって、言いなりになって、私としても同じ経験を共有できて嬉しくて仕方なかった。
まあ……彼女のお尻の穴の近くにあったホクロの存在に私が気づかなかったのはちょっと残念ではあった。私が先に気づいてあげたかったなぁ……。もしかして、それで怒ってるのかな? 今度、舐めてあげたら喜ぶかな……。あの一番星……悠莉のお尻のほくろに似てる気がする……。
ぼうっと考えた。
五分ほど経って悠莉は戻ってきて、その手には缶コーヒーが二本握られていた。
「はい、これ……」
「……え、ありがとう」
「……」
私達2人でコーヒーを啜ったけれど会話は無かった。話しかけるような雰囲気を彼女は作ってくれなかった。
沈黙に耐えられなくなった私はぎゅっと缶を握って悠莉を見つめた。
「ねぇ、怒ってる? 私、何かしたかな?」
「別に……何もしてないよ」
素っ気ない返事に不安になった。彼女はいつも明るいし、こんなことは初めてだったから……。
「じゃあ何で無視するの?」
「……ごめん、少し考え事してただけ」
「何を考えてたの?」
「……」
彼女は答えなかったけれど、あのことだろうなって検討はある。
「昼間のこと後悔してる? ちょっとやり過ぎちゃったよね……」
「ううん、後悔はしてないよ」
「本当に?」
「本当だよ。楽しかったね。野外で裸になって、あんな軽薄そうなチャラ男達のいいなりになって写真撮られてさ。自分からアソコもお尻も拡げて、全部みせちゃった。私も知らなかった場所にあるホクロを発見されたの見てた? アイツ、ニヤニヤして得意顔でキモかった。あの画像がネットにばら撒かれたら人生終わっちゃうね」
彼女は優しく微笑んでいたけれど、その笑顔はどこか自嘲気味で寂しそうだった。説明口調で空々しい言葉を並べてただけで、虚ろに感じた。
「悠莉、大丈夫? 何か変だよ」
「変じゃないよ。私達は変態でしょ?」
彼女はそう言って缶コーヒーを飲み干した。その手が震えている気がした。
「……」
何を言えばいいのか分からなかった。
「早く帰ろう……」
悠莉はバイクに跨って、顔を隠すようにヘルメットを被った。
彼女が何を考えているのか分からないけれど、あの出来事が原因なのは明らかだった。
何か重大なことが変わってしまった気がした。
でも、何が変わったのか分からなくて怖かった。じわじわと蝕まれるような漠然とした不安が芽生えていた。
このままだと取り返しのつかないことが起こる予感がする。この予感を知らんぷりしてはいけないと思った。
「ねえ、悠莉……私、まだ帰りたくない」
「……え?」
「もう少し一緒に居たい……今夜は一緒に眠りたいの。ダメ、かな?」
「そんなこと言っても、ホテルとか予約してないし……」
「ネカフェでも何でもいいでしょ。……あっ、そうだ。あそこにしようよ」
私はある場所に気づいた。
郊外のロードサイドにあるコンビニの駐車場、辺りは閑散としていて田んぼや畑が広がっている。
その端っこに、大きな看板を掲げた建物が見えた。
「あそこなら泊まれるよね?」
私は指差した。そこにはわざとらしくネオンが光っていた。
「えっ、あそこって……」
「うん、ラブホテル……だよね」
世間知らずの私でも、あそこがどういう場所かは知っていた。
最近は普通の女の子同士でも利用する人がいるってネットで見たことがあるし、日帰り旅行で意外と便利っていう情報を下調べのときたまたま見て知っていた。
でも主に、そういうことをする場所。
「行こう。ちょっと疲れちゃった……それとも、私とじゃ嫌?」
あざとい言い方で私は悠莉を誘った。こういえば彼女は断らないだろうという打算があった。
「……わかった」
フルフェイスのヘルメットで彼女の表情は分からなかったけど、悠莉は同意してくれて、私達はラブホテルへ向かうことになった。
言いようのない不安感はあったけれど、そんなものはお互いの体温を感じ合えば上書きされて笑い合えるはず。
今までの関係が永遠に続いてくれるのだと信じて疑わなかった。
少なくともその時の私はそう思っていた……。
*
私は友達の悠莉が運転するバイクで帰路についている。
朝一番で出発して二時間以上、海岸線を横目に進んで、あの海水浴場まで行った。
私達がやろうとしていたことは、絶対にバレるわけにはいかなかったし、万が一にも顔見知りに会うわけにはいかないから、出来るだけ遠くの海水浴場を調べた。
でも、何事も計画通りにはいかないものだ。
日帰りで戻るつもりだったのに、日はもう落ちて真っ暗になっていた。
あの出来事が予定を狂わせた。
当初、描いていた計画のあらましは『極小のマイクロビキニで連休でごった返した海水浴場に行く』ってことだった。それだけでも十分なくらい恥ずかしい思いが出来ると思ってた。
その計画に付随して『水着が波で流されるハプニング(演技)作戦』』っていう追加プラン、またの名を『おっぱいポロリ作戦』があって、大勢の海水浴客に私たちの裸を見てもらうつもりだった。十分満足できる過激な経験のはずだった。
でも現実は予想と違っていた。
私達はナンパしてきた3人組の男性とバーベキューをして、私はスイカ割りで全裸になったあと、浜辺に人がいなくなったのをいいことに全裸の撮影会を行った。
色んなポーズを取らせてもらって、あんなところや恥ずかしいところまで撮られて、保存されてしまった。
前の穴も後ろの穴も開いて中身まで自分から晒した。
私と悠莉が横に並んでお尻を突き出す光景は彼らにどう映ったのだろうか?
流石に私達が変態だっていうのはバレちゃったかもしれないけど、多分2度と会うことはないだろうから大丈夫。きっと彼らも楽しんでくれたはずだし内緒にしてくれると思う。
でも、あの写真は彼らのスマホの中に残ったままだ。もう私達が手が出せないところに行ってしまって取り戻せない。
彼等がふと思ったとき、暇なとき、どうでもいいとき、彼らの気まぐれで、いつでもあの写真を確認できてしまう。
ネットとかには載せないって約束してくれたけど、友達同士で見せあうくらいなら私達は関知できないし止めようがない。
あの写真をネットで発見した時、私はどんな気持ちになるのだろう?
私達のひと夏の過ち。
見知らぬ土地の見知らぬ人、その開放感が私達の計画を狂わせた。
楽しくって楽しくって脳内麻薬で頭がおかしくなっていた。
こんな機会二度とないんじゃないかって思ったら止められなくなって暴走してしまった。照り返しの日光と興奮で身体は熱って汗だく。
まだ疼きは消えていない。
だから、悠莉も同じ気持ちで楽しんでいるだろうなって思っていた。なのに……。
コンビニでバイクが停まった。
休憩のために立ち寄ったのだと分かった。
「……悠莉、疲れたね。運転ありがとう……」
「……」
「悠莉? 何かたべる? グミ買ってあげようか」
返事はなかった。私を一瞥だけして、そそくさとコンビニの中に入っていった。後をついていったのに無言でトイレのドアが閉められた。
ガチャリと鍵がかかる。
今まで見たことがないような冷たい態度に私は動揺した。
コンビニの外に出てバイクを眺めながら、何をするわけでもなく彼女の帰りを待った。
──悠莉、どうしちゃったんだろう?
あの浜辺での出来事から彼女の様子がおかしい。
たしかに、あの出来事は計画にない異常な事態だった。とんでもなく異常な出来事。
でも私達は……露出狂の変態。裸を撮影されて恥ずかしくて恥ずかしくて、嬉しかったはずなのだ。
異常×異常で快感プラス。
無言になった彼女を見て、最初は、あの出来事を噛みしめているのかと思っていた。でもなんだか雰囲気がいつもと違うことをなんとなく察していた。
──何か嫌なことでもあったのかな……?
夜空を見上げて思いを巡らせる。青空の下でお尻の穴を見せつける彼女の姿がフラッシュバックした。
野外で自分からお尻を拡げて、ヒクつかせて、撮影してもらって、言いなりになって、私としても同じ経験を共有できて嬉しくて仕方なかった。
まあ……彼女のお尻の穴の近くにあったホクロの存在に私が気づかなかったのはちょっと残念ではあった。私が先に気づいてあげたかったなぁ……。もしかして、それで怒ってるのかな? 今度、舐めてあげたら喜ぶかな……。あの一番星……悠莉のお尻のほくろに似てる気がする……。
ぼうっと考えた。
五分ほど経って悠莉は戻ってきて、その手には缶コーヒーが二本握られていた。
「はい、これ……」
「……え、ありがとう」
「……」
私達2人でコーヒーを啜ったけれど会話は無かった。話しかけるような雰囲気を彼女は作ってくれなかった。
沈黙に耐えられなくなった私はぎゅっと缶を握って悠莉を見つめた。
「ねぇ、怒ってる? 私、何かしたかな?」
「別に……何もしてないよ」
素っ気ない返事に不安になった。彼女はいつも明るいし、こんなことは初めてだったから……。
「じゃあ何で無視するの?」
「……ごめん、少し考え事してただけ」
「何を考えてたの?」
「……」
彼女は答えなかったけれど、あのことだろうなって検討はある。
「昼間のこと後悔してる? ちょっとやり過ぎちゃったよね……」
「ううん、後悔はしてないよ」
「本当に?」
「本当だよ。楽しかったね。野外で裸になって、あんな軽薄そうなチャラ男達のいいなりになって写真撮られてさ。自分からアソコもお尻も拡げて、全部みせちゃった。私も知らなかった場所にあるホクロを発見されたの見てた? アイツ、ニヤニヤして得意顔でキモかった。あの画像がネットにばら撒かれたら人生終わっちゃうね」
彼女は優しく微笑んでいたけれど、その笑顔はどこか自嘲気味で寂しそうだった。説明口調で空々しい言葉を並べてただけで、虚ろに感じた。
「悠莉、大丈夫? 何か変だよ」
「変じゃないよ。私達は変態でしょ?」
彼女はそう言って缶コーヒーを飲み干した。その手が震えている気がした。
「……」
何を言えばいいのか分からなかった。
「早く帰ろう……」
悠莉はバイクに跨って、顔を隠すようにヘルメットを被った。
彼女が何を考えているのか分からないけれど、あの出来事が原因なのは明らかだった。
何か重大なことが変わってしまった気がした。
でも、何が変わったのか分からなくて怖かった。じわじわと蝕まれるような漠然とした不安が芽生えていた。
このままだと取り返しのつかないことが起こる予感がする。この予感を知らんぷりしてはいけないと思った。
「ねえ、悠莉……私、まだ帰りたくない」
「……え?」
「もう少し一緒に居たい……今夜は一緒に眠りたいの。ダメ、かな?」
「そんなこと言っても、ホテルとか予約してないし……」
「ネカフェでも何でもいいでしょ。……あっ、そうだ。あそこにしようよ」
私はある場所に気づいた。
郊外のロードサイドにあるコンビニの駐車場、辺りは閑散としていて田んぼや畑が広がっている。
その端っこに、大きな看板を掲げた建物が見えた。
「あそこなら泊まれるよね?」
私は指差した。そこにはわざとらしくネオンが光っていた。
「えっ、あそこって……」
「うん、ラブホテル……だよね」
世間知らずの私でも、あそこがどういう場所かは知っていた。
最近は普通の女の子同士でも利用する人がいるってネットで見たことがあるし、日帰り旅行で意外と便利っていう情報を下調べのときたまたま見て知っていた。
でも主に、そういうことをする場所。
「行こう。ちょっと疲れちゃった……それとも、私とじゃ嫌?」
あざとい言い方で私は悠莉を誘った。こういえば彼女は断らないだろうという打算があった。
「……わかった」
フルフェイスのヘルメットで彼女の表情は分からなかったけど、悠莉は同意してくれて、私達はラブホテルへ向かうことになった。
言いようのない不安感はあったけれど、そんなものはお互いの体温を感じ合えば上書きされて笑い合えるはず。
今までの関係が永遠に続いてくれるのだと信じて疑わなかった。
少なくともその時の私はそう思っていた……。
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お読みいただき、ありがとうございます!少しでもエッチだと思っていただけましたら、お気に入り&感想などよろしくお願いいたします!
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