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7"ひと夏のあやまち

37.スイカ割りで目隠し

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(哀香視点)

 かんかん照りの太陽が真昼の砂浜に日差しを落としていた。

「スイカ割り頑張ります!」

「おっ、じゃあ決まりだね。目隠ししてあげる」

「はーい」

 私が素直に目を瞑ると、キュッと目を隠すタオルがつけられて視界を奪われた。

 手にスイカを割るための棒が渡されて握る。

「いくよ?」

 肩に手が置かれて、私はその場で回された。

 やがて方向感覚を失って自分がどの方向を向いているのか分からなくなる。

「ほら、こっちだよー」

「あっ、はーい」

 行方が分からなくなって放置された私に、どこからか男の人の声が聞こえた。

「ちがうよーこっちこっち!」

 後ろから聞こえた声にピクッと反応した。

 同時に心地よく顔が熱くなる。

 私は今、きわどいマイクロビキニの水着を着ている。Tバック、Tフロントの下半身に至ってはほとんど裸に近いくらい布面積が少ない。

 見られてるんだ私のお尻……。

 きゅっとお尻の割れ目が締まった。

 ほとんど紐の水着。それが食い込んで巻き込まれて、お尻の割れ目に飲み込まれた。

 私のお尻はもはやほぼすべてが丸見えになっている。

 きゅっと前の割れ目も締まった。

 前も食い込んだ。

 前後の食い込みを直すのはゲーム中だからできないから仕方ない。

「違うよ、こっちだよー」

 再び、男の人の声が聞こえた。今度は右から聞こえた気がする。

「こっちが本当だよ哀香」

 悠莉の声が違う方向から聞こえた。

 遊ばれている。と理解した。

 だから私は、いろんな方向から聞こえてくる声に混乱しているふりをしてふりふりとお尻を振りまく。

「え、どこ? どこですかぁ?」

「うわ、ケツ振ってる」

「エロいな……」

 彼らの呟くような声が私の耳に漏れ聞こえてきた。

 ──私のエッチな格好、見てもらえてる……♡

「もー、どこですかー? 意地悪しないでくださいよぉ!」

 おバカな女の子の演技をして、ぷりぷりと地団駄を踏んで乳房を揺らした。

 思いのほか胸が揺れしまって、水着が乳首から外れそうになる。

「うお、見え!?」

「おしい……」

 彼らの驚きながらも残念そうな声が聞こえた。

 私の乳首……見たいのかな? 見たら喜んでくれるかな? 見てほしい……。

 そんな考えが頭の中がよぎったらもうダメだった。

「えい!」

 私は棒を振り上げて勢いよく砂浜に叩きつけた。

「あはは、そんなとこにないよー」

 そこにスイカが無いことなんて分かっていた。

「あ、あれぇ?」

 私はわざとらしく声を出して腰を起こした。

 プルンと胸を弾ずませた。その拍子に乳首の上に乗っていた布がズレたのを感じた。

「「「「あっ……」」」

「見えた!」

 4人の声が重なったのが聞こえて、男性達が興奮した声で騒ぎはじめた。

「ちょっと! 哀香、見えてる!!」

 悠莉が慌てた声で、私に注意した。

「え? 見えてないよー?」

 私はとぼけた。目隠しをされて私何も見えない。

 なにが見えているのかは分かっていた。

「乳首……」

 彼らの一人が呟いた。

 その一言で現実が確定した。私の乳首を観測してくれた。

 水着がめくれあがって乳首に引っかかっている、もう自然には戻らない。

 ──私の乳首、見られてるんだ♡

 そう確信した瞬間、私の心臓は高鳴った。

 目隠しをしているから周りの視線は見えないけれど、間違いなく見られている。

 海風が身体を撫でた。

 ──乳首見てもらえてる……しかも、外で……。

 砂浜という野外で、乳首をさらしているという事実。

 目隠しによって五感の一つが奪われていることで、他の感覚が研ぎ澄まされる気がした。

 砂浜の潮風と匂い、漣の音、敏感に世界の形さえ感じ取れてしまうほどに。

 だから、より完璧にしなきゃいけないと思った。

 より全身で外の世界を感じたかった。

 そのためには……。

「えい!」

 私は棒をテキトーに砂浜に打ち付けた。

「あのースイカどこですかー? 教えてくださいよー」

「え? ああ……右だよ……」

 私は乳首が見えていることにまるで気づいていないみたいに、場を盛り上げようと明るく振る舞う。

 ゲームを中断させてはいけない。

「こっちですかー? えい!」

 棒を打ち付けるたびに乳房がぶるんと上下に動く。

「お、おっぱい揺れてる」

「哀香! 見られてるって! 一旦、やめなさい!」

「近づくとあぶないよ……」

 悠莉が私に声をかけるけど、男性の声が彼女を制止した。

「もー全然見えないよー」

 私はおバカな女の子の演技をして、乳首を晒していることに気づいてないふりを続ける。

 めちゃめちゃに棒を振り回しておっぱいを揺らし、彼らにアピールした。

 何度か棒を振り下ろしていると、何かが緩む気配を感じた。

 そしてようやく、ゆるゆるになった紐が下半身から外れた。

「……まじかよ」

 誰かが声を洩らした。

 紐がはらりと落ちて、下半身を覆うマイクロビキニが滑り落ちた。

「あれぇ? なんかスース―する?」

 とぼけた口調で、アホの子を演じた。

 私は乳首だけじゃなくて、恥部まで晒して砂浜で全裸になってしまった。



 身に着けているのは目隠しだけ。

「うわぁ……」

 誰かがドン引きしたようにゴクリと喉を鳴らした。

 ──見えないけど、見られてる……!

 世界の形をこの全身で受ける。解放感と背徳感が、私の身体を走った。

「哀香! 丸見えだって、全部見えてる!」

 悠莉が私の状態を実況してくれた。

「丸見え?  なにがー? 見えてないよ?」

 私がとぼけると彼らはクスクスと笑っていた。

「スイカはもう近くだよ。もうすぐ! 頑張って」

「あ、わかりましたー」

「右だよー」

「そのまま3歩!」

「そうそう、そこ!」

「そのまま振り下ろして」

 全てを晒したまま声に従った。彼らはどんな気持ちで全裸の私に指示をだしているのだろう。

 思い通りに操られて、私は言われた通りに棒を振り下ろした。

「えいっ! 」

 棒が何かに触れてぼふっと弾んだ。

 ぴゅっと、なにかの汁が飛び散って私の恥部に触れた。

 スイカを割ったみたい。彼らの言ったことは本当だった。

「やったぁ!」

 私は目隠しを外して、真っ二つに割れたスイカを確認した。

 ジャンプしてガッツポーズして無邪気に喜ぶ。ぴょんぴょん飛び跳ねた。

 それから彼らの方を向くと3人の男性がニヤニヤしながら私をまじまじと見ている。

 数人いた他のレジャー客もチラチラと視線を送っていた。

「哀香、丸見えだよ……」

「え?」

 悠莉の声に反応して、私は自分の歩いてきた砂浜に視線を向けた。そこには私の足跡がくっきりと残っている。

 その途中に白い水着が落ちていた。

 きらきらと地平線まで広がる海面。

 波の音。潮の香り。

 見上げると、快晴の青い空。

 目隠しを外したばかりの私には何もかもが眩しく感じた。

 そして、私は全裸。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 私は悲鳴を上げて慌てて手で胸とアソコを隠した。

 でも、もう遅い。もう全て見られてしまったのだ。

「うぅ……恥ずかしいですぅ。なんで言ってくれなかったんですか……」

 私は、涙目で彼らを睨んだ。

「いや、だって……ねえ?」

 彼らは互いに目配せをしてニヤニヤと笑っていた。

「見ました……?」

 私は分かりきったことを聞いた。

「うん、バッチリ! 乳首見ちゃった」

「君、パイパンなんだね」

「えっちだねー、丸見えだったよ」

 男達は口々に、私の痴態を囃し立てた。チャラそうな彼らはお為ごかしの言葉なんて使わずにズケズケと見たままを伝えてくれた。

「うぅ……そんなにはっきり言わないでくださいよぉ……」

 私は両手で胸とアソコを隠したまま、砂浜にしゃがみ込んだ。

「ごめんごめん、ほら、スイカ食べようよ」

「 あ……ありがとうございます……」

 軽い感じで声がかけられて、手が差し伸べられた。

 どうしようか迷ったけれど、胸から手を外してその手を取って立ち上がった。

 彼の目線が私の乳首に突き刺さる。

「哀香これ……」

 立たされた私に悠莉が声をかけてきた。その手には私が脱ぎ散らかした水着が握られている。

「あ、ありがと……」

 私は水着を受け取ると、周りの目もあったから名残惜しかったけど、そそくさと履いた。

 スイカは美味しかった。

 直射日光で火照った身体を、冷たくて甘いスイカが冷やしてくれた。

 振りかけた塩が、汗ばんだ身体に染み渡る。

「美味しいね」

「うん……」

 私たちはスイカを頬張りながら、海を眺めた。

 波の音が心を落ち着かせる。潮風が髪を揺らすのも心地良い。

 さっきまでの出来事が遠い過去のように錯覚した。

 ひと夏の思い出のように……。

「ねえ、君たちこれからどうする?」

 リーダー格の男性が、私と悠莉に問いかけた。

 その口元は、ぐにゃりと歪んで見えた。
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